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小さな映画館 第117幕

「ハート・ロッカー」

「エクソシスト」

「惑星ソラリス」

「6才のボクが、大人になるまで。」

「マディソン郡の橋」

「アイアムアヒーロー」

「ダイ・ハード2」

 

「ハート・ロッカー」

ジェレミー・レナー アンソニー・マッキー主演 キャスリン・ビグロー監督

 

【あらすじ】

イラク戦争中のバグダット郊外。アメリカ軍の危険物処理班は、路上に仕掛けられた「即席爆発装置(IED)」の解除作業をしていた。ウィリアム・ジェームズ軍曹は命知らずな男で、安全対策も行わず、死を恐れないかのように振る舞う。

 

【感想】

イラク戦争といえば今になって振り返れば愚かな戦争となってしまいました。そんな戦争はオバマ政権まで、終息することがなかったんです。

アメリカ軍はイラクに留まり、テロ組織と闘うんですけど、これがまた当然のことながら危険なもの。

ジェームズは確かに命知らずな男です。本人は「何も考えていない」と言っています。

しかし他の人物はどうでしょう。死を目前にすると、やはり命が惜しくなります。当然ですよね。何よりも家族に会いたいという気持ちが一番強かったのが印象的です。

ジェームズも戦争で始まり、最後は家庭で落ち着きましたよね。彼にも普通の家庭があるんです。

「戦争は麻薬」という冒頭の通り、死を恐れない男も家庭にいれば、「死」を感じることがないんです。まったく刺激のない生活。これが当然のはずなのに。いつの間にか大切だったものが、ただのものになってしまう瞬間が訪れます。

 

それにしてもベッカムの描写って必要だったんでしょうか?西洋人が他の国の顔を識別できない、みたいな感じの演出もありましたけど、それにしても、必要?

 

「エクソシスト」

リンダ・ブレア ジェイソン・ミラー マックス・フォン・シドー主演 ウィリアム・フリードキン監督

 

【あらすじ】

女優のクリスは映画撮影のためにワシントン近郊にの家を借りた。一人娘のリーガンと暮らしていたが、娘が邪悪な声をし、怪異な相貌に豹変したことに気づく。様々な医者に診せるがいずれも原因不明。とうとう最後に頼ったのは悪魔祓いの神父だった。

 

【感想】

70年代初頭の映画ですけど、とにかくおもしろいし、クオリティが高い。

神父が登場するのは後半になってからなんですけど、それまではひたすらリーガンの謎の変貌に戸惑う様子が描かれています。

そして後半はデミアン神父たちとの対決です。最終的にはデミアンがリーガンを挑発し、自分に載り移させ、共に死んでしまうという、少し悲しい結末です。

 

じゃあ悪魔が何がしたかったんでしょう?

これ結構難しいんですよね。自身で悪魔を名乗って、別に何かしらの目的があるわけでもなく、ただただ周囲の困惑を嘲笑うようにしているだけです。

一方の神父たちはなんとか悪魔を祓いますが、結局聖なる力なんかじゃなくて、デミアンの自己犠牲なんですよね。

宗教的な要素を持つ映画なんですけど、側面としては神の不在や沈黙があります。

 

悪魔祓いって映画で観ますけど、実際にあります。もちろんこうしたリーガンみたいな症状があるわけではありませんけど、やっぱり精神医学の分野のようなものです。

悪魔っていうのは、心に巣食うんです。悪魔にみせられないよう、ご用心。

 

「惑星ソラリス」

ドナタス・バニオニス ナタリア・ボンダルチュク主演 アンドレイ・タルコフスキー監督

 

【あらすじ】

海と雲に覆われた惑星ソラリスを探索中の宇宙ステーション「プロメテウス」との通信が途切れる。クルーが誰も帰還しないことから、心理学者のクリスは調査のために派遣される。

しかしそこで見たのはいるはずのない、自殺した妻の姿だった。

 

【感想】

おもしろい、というより、すごく飲まれるような映画だった。

話を要約すれば、ソラリスの海は自身の記憶の一部を物理的に具現化する能力を持っています。だからこそクリスは亡くなった妻と触れ合うことができました。

最初は偽物だと思っていたクリスですが、徐々に人間としての愛情が芽生えてしまいます。それは妻のハリーも同じでした。しかしハリーはクリスの夢がつくりだしたもの。彼女も自身がクリスの手によって葬られていたことを知って、自殺を図ってしまいます。

 

このハリー役のナタリアの魅力がすごくいいんですよ。クリスでなくても、コピーの彼女に恋をしてしまいそうです。

どんなに心理学を専攻している先生でも、自分の感情に対する欺きというのは難しいものです。それが愛なら尚更。大きな人類よりも、人間にとって小さくとも大きな愛に向かってしまいます。

 

海はまるで無意識の波のようです。行く末がわからず、底を知らず。漠然としたものがあるだけです。果たして偽物とわかっていても、ハリーとの愛は本物なのかどうか。観方はそれぞれですね。

 

「6才のボクが、大人になるまで。」

エラー・コルトレーン パトリシア・アークエット イーサン・ホーク主演 リチャード・リンクレイター監督

 

【あらすじ】

6歳のメイソンは姉のサマンサと、母のオリヴィアと暮らしていたが、オリヴィアは新しい生活を求めて結婚するがなかなかうまくいかない。成長していくメイソンは次第に自分を求めるようになる。

 

【感想】

なにが凄いって、メイソンが6歳から18歳になるまで、本人がやってるんです。他の登場人物も。どういうことかと言えば、12年間撮影をしてできた映画なんです。

だからあんなに可愛かった子役が、「ええ…」みたいな大人にならないんです(笑)

常に視聴者としてはメイソンがこんなに成長したんだって、感慨深くなりますよ。

 

この映画では特に大きなドラマがあるわけではありません。

成長期に親の離婚だったり、ちょっと危ない遊びだったり、彼女とキスをしてみたり、と特別変わった話があるわけではありません。しかし過剰なドラマがないからこそ、この映画のリアルさが真に迫ります。

夢を追う父親と、堅実に生きようとする母親。メイソンはそんな両親のもとで育ちますが、両親は馬が合わず離婚してしまいます。

幼少期の頃の離婚って、結構子供に深い傷を残すんです。

だからメイソンは自分を捜します。どんな自分になりたいのか。父親のように自由に生きるのか、それとも母親のように堅実に生きるのか。

その過程の映画なんです。それを丁寧に描いています。

時に親がうざくなったり、反抗してみたり、女の子とデートしてみたり、打ち込めるものをさがしてみたり。そんな日々でも、大切な一瞬なんですよ。

「一瞬っていうのは永遠」という言葉が最後に象徴するように、その瞬間というのは永遠です。永遠に残るんです。だからこそメイソンは一瞬を切り取る写真家を目指したんだと思います。

 

「マディソン郡の橋」

クリント・イーストウッド メリル・ストリープ主演 クリント・イーストウッド監督

 

【あらすじ】

平凡な人生を歩んでいたはずの母フランチェスカ。しかし彼女の日記から、4日間の激しい恋に落ちていたことがわかった。相手は写真家のロバート。フランチェスカがなぜ彼と恋に落ちたのか。

 

【感想】

大人な恋愛映画です。とても静かで、だけども感情は激しく燃え上がる、抒情詩です。

 

結婚し、子どもを持てば、人生というのはある意味で決まってしまうと思ってしまうのかもしれません。

母親として生きていかなければならず、女性としての自分を抑え込まないといけません。

フランチェスカは平凡であっても、そうした人生を生きようとしていました。

しかしそんな時に運命のいたずらが起こるのです。

ロバートの登場は彼女に対して、女性としての愛を取り戻します。

しかしもちろん彼女には家庭があって、さらには彼女が住む田舎では、不倫関係なんかになればたちまち噂になり、村八分にされてしまうというリスクがあります。

だけどロバートという自由に流れゆく男性に対する恋愛の情は薄れるどころか、激しくなっていく一方。

 

ロバートもまたフランチェスカに生涯で一度の愛を誓います。

フランチェスカは自分で決心することができず、ロバートに判断を委ねるのです。

しかしフランチェスカは彼よりも、家族を選び、涙に暮れました。

 

ロバートには捨てるものはあまりなかったのかもしれませんが、フランチェスカにとってはあまりにも大きな選択になるのです。

ロバートへの愛は本物だけども、家族もまた愛している。どちらか一方なんて選べません。

 

最近は不倫すると、ものすごい勢いでバッシングされますよね。

だけど人って、時に別の人を愛してしまうことはあるんです。

雨の中での別れのシーンは未だに脳裏にこびりついています。

 

「アイアムアヒーロー」

大泉洋 有村架純主演 佐藤信介監督

 

【アルバム】

鈴木英雄は漫画のアシスタントをしているが、自作は認められず、芽が出ないでいた。ある日恋人が原因不明のウィルスにより、ZQNに変化してしまう。

英雄は逃げ出した先で、比呂美という女子高生と出会う。

 

【感想】

日本映画の良作は数ありますが、どうしてもアクション映画に関してはあんまり傑作ってないんです。特にCGが発達した時代にも関わらず、なんだかチープなものが多かったりしました。

しかし、この映画はまるで洋画のようにアクションに見ごたえがあります!クオリティが高いんです!!

 

ただし!ただしですよ。これは続編がない限り、きちんとした評価ができない状態になっています。

原作がありますから、どうしても全巻の内容を2時間にまとめるのは無理なんですよね。今回は本当に序盤の部分を映画にした感じです。

だからなぜZQN化するのか、比呂美はどうなるのか、結局三人はどこへ行くのか。

ここら辺が明かされませんから、続編がないとモやっとします。

 

だけどもとにかくゾンビのクオリティ、そしてアクションシーンは見ものです。

日本では撮影許可がおりなくて、一部韓国でやったことが功を奏したのか、とにかく派手なアクションシーンが映えます。

そしてなんといっても大泉洋の怪演ですよ。

最初はなさけない英雄がどんどんかっこよくなていく感じが良かったんです。

 

日本映画はまだまだ終わってません!

このクオリティをぜひ保ち続けてほしいです。

 

「ダイ・ハード2」

ブルース・ウィリス主演 レニー・ハーリン監督

 

【あらすじ】

ジョン・マクレーンは妻ホリーを迎えに空港へやってきた。マクレーンはある男の不審な行動を目にして、後をつけると銃撃戦が繰り広げられる。マクレーンは空港で何かが起こると予感し、死体の指紋をとって友人に送ると、その男は2年前にすでに死んでいた。

 

【感想】

とにかくマクレーンの不死身さと、行動力には圧巻ですよ。

それに今作が一番好きなのは、クリスマスっていうシチュエーションもあるのかもしれません。

幸せな一日を送りたいだけなのに、なんやかんやテロに巻き込まれるマクレーン夫妻(笑)

ただちょっと物足りないのは、案外敵が強くないということ(笑)いやもちろん強いんですよ。軍人なんですから。だけど軍人をもしのぐマクレーン無双は観ていて気持ちがいいくらいです。

 

最後の署長もいいキャラですね。最初は憎たらしかったのに。

 

author:トモヤムクン, category:-, 17:14
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小さな映画館 第116幕

「怒りの葡萄」

「エイリアン」

「ボーイ・ミーツ・ガール」

「殺人の告白」

「獣は月夜に夢を見る」

「サプライズ」

 

 

「怒りの葡萄」

ヘンリー・フォンダ主演 ジョン・フォード監督

 

【あらすじ】

環境の変化によって農業は不作となり、農家たちは土地を追われ、仕事と家を失った。

人を殺してしまい、4年間刑務所に入っていたトム・ジョードは仮出所で家を戻るが、そこはもぬけの殻だった。説教師のケイシーとともに一家の足取りを追うと、ジョード家は働き口を求めてカリフォルニアを目指していることがわかった。

 

【感想】

アメリカの作家ジョン・スタインベックの有名な作品です。「二十日鼠と人間」でもそうですが、著者の特徴としては。大群の中の一匹の働きアリでしかないのかもしれないけど、そこには人間の尊厳があるという感じですね。

原作ではジョード家の道のりとスタインベックが丹念な取材をされた社会的背景が交互に語られていきますが、映画では当然のことながらジョード家にスポットが当たります。

 

とにかく生まれた故郷を追い出される、という状況を思い浮かべてみてください。安住の土地がないということがどんなに不安定か。家族の遺体すら、道端に捨てないといけないんですよ。行く先は必ずしも安住があるとは限りません。映画のように暴動があるかもしれない。働き口なんてまったくないかもしれない。

飢えで死んでしまう者や、憎しみを募らせた者たちで溢れかえるのが、飢餓です。

だけどその中でもジョード家には家族という絆がありました。その中心は絶対に母親ですね。子どもたちを愛し、子どもたちを一番に心配し、何よりも家族がバラバラになることを恐れる人です。

トムもそんな母親だからこそ、二度と犯罪を犯すまいと誓いました。

 

そしてもうひとりは説教師のケイシーですね。信仰すら奪われ、残っているのは彼の中の良心です。しかしそれが本当の意味での、人間の存在なんじゃないかと思います。もちろん彼の中にはイエス・キリストの影があるのかもしれませんけど、そういう限界状況の中で見せる善意こそ、人間のもつ愛と信仰のかたちではないでしょうか。だからこそこの物語でのケイシー説教師の立ち位置は、本来あるべき信仰の姿です。

 

昔のアメリカってこんな感じだったのか、なんて思う人もいるかもしれませんが、いつの時代にも成り上がる者と虐げられる者の歴史なんです。今でこそ裕福に見えますけど、アメリカという国は、いえ日本もそうですけど、貧困層が拡大しています。おかしいですよね。こんなに豊かになったはずなのに、働いても働いても人間的な暮らしができないなんて。

ジョード家の強さは家族でした。しかしそれすら壊れてしまう人々もいるのです。そうした人たちは扇動家やアカと呼ばれて、さらに虐げられていきます。

 

怒りの葡萄というのは、踏み潰される葡萄=人々のことです。

人々を踏み潰した液体を、一部の金持ちがワインにして飲むんです。

だけども葡萄たちは踏み潰されるだけではありません。きちんと人間としての感情を持ち合わしているのです。真っ先に突き付けるのが「怒り」です。

何に対する怒りでしょうか?金持ちでしょうか?保安官でしょうか?それとも…。

 

「エイリアン」

シガニー・ウィーヴァー主演 リドリー・スコット監督

 

【あらすじ】

西暦2112年、鉱石を採掘し終えた宇宙船の中で、コールドスリープから目覚めた乗組員たち。しかし地球への帰還ではなく、コンピューターの「マザー」が知的生命体からの信号をキャッチし、その天体へ向かっていた。そこで見たのは蟲のような生物だった。

 

【感想】

70年代(後半と言えども)のSFでこれだけのクオリティの作品は他にないでしょう。リドリー・スコットの名声を各段に上げた今作。エイリアン、つまり異星人という存在の恐怖を如実にしたものです。

 

シガニー・ウィーヴァーしか最期は残らないという、サバイバルな展開ですが、これがそこら辺のホラーよりも怖いんです。あの頃、まだまだCGとか今のように発達しているわけではないですから、映像も陳腐なものに観えてもご愛敬なんですけど、これがまたリアルなんです。エイリアンの質感とか、不気味さとか。

そしてエイリアンの不気味さは、その未知な強さです。今作ではアクションは殆どありません。もちろん銃撃戦も。あるとすればリプリーが知恵を絞って、宇宙船の外に放り出すことくらいです。つまり人間の無力さがまざまざと描かれてるからこそ、エイリアンが恐いんですよね。

そして作品の良さは緊張感です。どこから現れるかわからないエイリアンの演出は今見ても感嘆します。

ほとんど宇宙船と壮大な宇宙空間で繰り広げられる今作は、SF史上最高傑作のひとつです。

 

「ボーイ・ミーツ・ガール」

ドニ・ラヴァン主演 レオス・カラックス監督

 

【あらすじ】

恋人を親友に奪われたアレックスは、パリをさまよう孤独な男。ある日同じ境遇のミレーユと出会う。

 

【感想】

フランスの映画で、結構評価の高い映画なんです。

日本人が想像するパリって、すごく華やかで、人々も陽気な一面を持っている、なんてことありませんか?

この映画では日本の東京と変わらない、都だからこそ、孤独を感じる人々で溢れかえっています。

 

この映画はなんというか、映像や演出の質感で、アレックスの孤独が表現されていてよかったです。

他人から見ればなんてことのない退屈なあらすじなんですよ、正直。だって恋人を奪われて、ショックからいろいろ考える、なんてよくあることじゃないですか(まあ奪われる、っていうのはなかなかないかもだけど)。

だけどこの映画ではとにかくアレックスの痛々しいまでの感傷が描かれています。

万人にすすめられる映画ではありませんが、いろいろ解釈を求めるのもありだと思いますが、パリのアンニュイさを感じたい人にはおすすめです。

 

「殺人の告白」

チョン・ジェヨン パク・シフ主演 チョン・ビョンギル監督

 

【あらすじ】

時効を迎えたヨンドク連続殺人事件。ヒョング刑事は犯人をあと一歩のところで逃してしまう。ある日、イ・ドゥソクと名乗る男が、自分が真犯人だと言う。告白本を出版し、彼は一躍時の人になるが…。

 

【感想】

結構良質なエンターテインメントです。アクションシーンもさることながら、きちんとミステリーでも見せるいい映画ですね。

若干遺族たちのキャラがたち過ぎてる感じもありますけども(苦笑)

 

さて時効を迎えたとはいえ、殺人犯がイケメンだった、こんなに持て囃されるの?と思うかもしれませんけど、実際外国ではイケメンの死刑囚に恋をして、結婚してしまった例もあります。

結局のところイ・ドゥソクは親の仇を討つため、自らがエサになったわけですが、彼は復讐のためならあらゆる自己犠牲をしていて、なかなかに痛々しかった。

 

そして犯人ですよ。

最初芸人の永野さんかと思ってしまい(失礼)。かなりサイコパス的な嫌らしい表情が脳裏にこびりつきますね。

 

事件のほうが時効が成立するのかもしれませんけど、遺族にとってはずっと続いている悲劇なんですよね。

犯人に対する復讐を終えた後、この後が一番肝心なんです。

 

いろいろ突っ込みどころのある映画ではありますが、楽しんでみられる良作です。

 

「獣は月夜に夢を見る」

ソニア・ズー主演 ヨナス・アレクサンダー・アーンビー監督

 

【あらすじ】

デンマークのある村に、父と病気の母と暮らす女性マリー。母の病の原因を知らされず、村人も母を避ける。

マリーは職場の男性と恋に落ちるが、彼女に対する嫌がらせが相次いだ。

そんな時マリーの身体に異変を感じた。

 

【感想】

まず内容に触れる前に、デンマーク、北欧の風景というのは絵になりますね。だからこそ、突拍子もないような内容なんですけど、すごく美しく、魅せられるんです。

 

普通に観てたら、一体なんでマリーと彼女の母が怪物なのか、というのはわかりません。というより、あまり語られません。だけど正直彼女が怪物かどうかなんて関係ありません。むしろ、主題は人間の孤独と愛です。

北欧に対するイメージって、すごく幸福なものがありますけど、今回出てくる村は、幻想的でありながら人間はどこか陰気なんです。陰気で陰湿で、排他的。こう書いてしまうと、偏見になってしまうかもしれませんけど、この映画の中の村はそうでした。

マリーはただ普通の恋をし、普通に暮らしたいはずなのに、それを怪物の娘というだけで恐れられ、執拗な暴力に遭います。

だからこそ視聴者としてはマリーに感情移入してしまうんですよね。彼女の孤独や痛みが怪物へ誘い、最後は男たちを殺してしまいますが、それでもダニエルに受け入れてもらったことで、最後は元のマリーに戻り、終わります。

 

この映画では確かにマリーは人狼のような姿になり、化け物と思えるかもしれませんが、実は彼女を執拗に迫害しようとする人間たちも同じくらい化け物なんです。誰しもが獣を持っている。おそらくそれを伝えたい映画なんじゃないかな、と。

 

「サプライズ」

シャーニ・ヴィンソン主演 アダム・ウィンガード監督

 

【あらすじ】

両親の結婚35周年を祝うために、人里離れた別荘に集まった家族10人。

その日の晩餐、些細なことで口論になったドレイクとクリスピアン。そんな時窓からクロスボウが飛んできて、タリクの命を奪う。そして次々と殺されていく家族。

 

【感想】

金、金、金。家族の愛なんてひとつもありません。あるのは金と血だけです。

次々と家族を殺されていく過程と、見えないトラップは観ていてひやひやするものがありました。

ただ今回の作品の見どころは、覚醒していくエリンの存在でしょう。恐怖と興奮からアドレナリンが放出されて、どんどん殺し方もエスカレートしていきます。

結局のところ彼女は最終的に生かされて、証人なるはずだった、みたいなことを夫が語っていましたけど、彼が逃げてる時点で計画はほとんどおじゃんですよね(苦笑)妻をひとり置いて逃げたんですから。

すべての真実を知ったエリンの怒りは当然のもののように思えます。

そして最後は思わぬ相手が殺されましたね。通報でかけつけた警察官です。本当に赤の他人なんですよね。だからこそ「Your next」となるわけです。

author:トモヤムクン, category:-, 17:19
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小さな映画館 第115幕

「マザー・テレサ」

「クンドゥン」

「レッド・ファミリー」

「ミシシッピー・バーニング」

「バイオハザード」

 

「マザー・テレサ」

オリヴィア・ハッセー主演 ファブリツォ・コスタ監督

 

【あらすじ】

無償の愛を与えたマザー・テレサ。やがて彼女の姿勢に共鳴する人々が増えていく。

 

【感想】

僕はあくまで無宗教、というよりはある意味での仏教徒ではあります。

多分多くの日本人と同じで、あまり宗教に対して教義を受けて育ってきたわけではありません。だからこそいろいろな視点で見られる、といういい部分もあれば、宗教を邪教のように見てしまうという悪い部分もあります。

日本から見る宗教といえば、やはり今なお続く戦争に関連したものでしょう。ユダヤ教、キリスト教、イスラム教、と元をたどれば同じ宗教であるはずなのに、長年戦争やテロがなくなりません。

しかしそうしたことも、あくまで宗教の側面でしかないんです。

 

僕個人の見解ですけど、キリスト教自体の好悪関係なく、マザー・テレサという女性は、イエス・キリストの姿勢そのものなんです。というよりも本来キリスト教徒があるべき姿だと、勝手に思っています。

なにかと神格化されているイエスですけど、聖書を読んでいけば、彼が行っているのは貧しい者への施しと、病人への看病、そして神から与えられる平等の愛なんです。

 

映画でも描かれていましたけど、マザー・テレサがいた場所は、ヒンドゥー教とイスラム教の対立が起きている地域でした。しかしそれでもマザー・テレサは宗教に関係なく、傷ついた人々を助けたのです。

それは相手が神を信じているかどうかではなく、自分がどれだけ神の愛を与えられるか、という姿勢です。

 

彼女の行動を偽善的にとらえようとする人もいれば、金銭目的や売名目的、それこそ偽善的なボランティア団体も出てきます。

ただマザー・テレサにあるのは、組織とかそういうものではなく、純粋な行動なんです。

純粋な愛こそ、どの宗教においても、神だったり、仏だったりするんだと思います。

 

映画自体はマザー・テレサの性格をクローズアップしたようなもので、映画として楽しめるか、といわれれば少々微妙ですけど、各々何かを考える機会になる映画だと思います。

 

「クンドゥン」

テンジン・トゥタブ・ツァロン主演 マーティン・スコセッシ監督

 

【あらすじ】

1937年田舎の質素な農家で暮らしていた幼いラモ。彼は立ち寄った高僧になつき、高僧たちは感動し「クンドゥン」と呟く。ラモは化身ラマの転生者として認定された。

ラマは第14世ダライ・ラマと呼びかけられるように。

そんな時中国はチベットを中国の一部だと主張するようになっていた。

 

【感想】

チベットは本当に小さな国です。しかしダライ・ラマの姿勢からわかるように、本当に敬虔なチベット教徒たちの集まりなんです。

信仰によって救われ、信仰によって導かれる。宗教に節操のない日本人からしたら、異様な光景に映るかもしれませんが、これが本来あるべき宗教的な純粋性かもしれません。

しかしそんな敬虔な信者たちを脅かすのは、当時文化大革命と表し、あらゆる伝統文化や宗教を否定してきた毛沢東の存在がありました。

ダライ・ラマは非暴力を説きますが、中国軍は対照的に暴力の嵐で、チベット人を虐殺していきます。

だけどこの映画の特徴として、具体的な虐殺シーンはあまり描かれていません。描かれているのは、ダライ・ラマが想像する悲惨な民の姿です。ここら辺の演出がうまいな、と思うのは、ダライ・ラマという高貴な人間を通して、卑劣で残虐な虐殺を見せることですね。

 

ダライ・ラマは未だに世界各国をまわり、数多くの政府高官と対話したりと、チベットを想って行動でしています。

しかし残念ながら未だにチベットは中国によって支配された状態です。

 

仏教というのは最終的に無に到達するのです。

生にも死にも執着しない、涅槃という世界に。

本当は人類がみな、欲望に囚われず、中道を歩むことができたなら、平和になるのかもしれません。

 

「レッド・ファミリー」

キム・ユミ主演 イ・ジュヒョン監督

 

【あらすじ】

韓国で暮らすスンヘ一家は理想的な家族だった。しかし彼らには北朝鮮のスパイという裏の顔があった。

隣に暮らす一家は喧嘩が絶えず、騒々しかったが、彼らを見ているうちに、それぞれの家族を想う。

 

【感想】

北朝鮮問題で緊迫している昨今。なんとも言えない怒りとともに哀しさを覚えます。

なんで同じ人間同士が争わないといけないのか、と。

平凡な平和主義者の考え方ですけど、その陳腐な平和主義さえも許されないような世界はとても幸福のあるものではありません。

 

スンへ一家は脱北した者たちを次々に暗殺していく使命をおっていました。

彼らは祖国のため、というよりは家族のために何年も工作員として行動し続けているのです。

隣に暮らすのは韓国の、いわゆる資本主義社会の典型的な家族。儒教的な家族ではなく、それぞれがそれぞれの主張を持ち、お互いがケンカしあいます。

スンへたちは当初彼らを軽蔑しますが、徐々に家族の大切さを再確認していくんです。

ミンジは少女らしく恋をし、ミョンシクは大病を患いながらも孫と動物園に行く夢を見て、スンヘは愛を求めます。

当然の権利なんです。しかしそれすら許されない世界が、たしかにあるんです

スンへたちは最終的に隣の一家を殺すことができませんでした。

どんなにケンカしあったって、家族がいっしょにいるという幸福には変わりないんです。

そしてスンへたちも祖国の家族、そしてスンへ一家のために、殺されるのではなく、家族として死ぬことを決意しました。

 

最後にミンジが生きていたのは、この映画の救いですね。

きっと他の工作員もどこかで心動かされたのでしょう。

 

こうあったらいいのに、という世界です。

韓国とか北朝鮮とか、国を分断するんじゃなく、ひとりの人間として向き合うこと。ケンカしても、仲直りできること。こんなに簡単なはずなのに、国となると簡単にはいきません。

 

この映画では、なぜ北朝鮮が核を持つのか、という話題でスンへたちは、アメリカたちが持っているからだ、と答えていましたよね。

ここら辺ってすごく難しい問題なんです。北朝鮮の核が否定されて、なぜアメリカの核が正当化されるのか?という問題にぶち当たってしまいます。これは永遠の課題なんです。核は持つべきではありません。しかし誰かが核を持てば、疑心暗鬼に陥り、様々な国が核を保有し、瀬戸際どころか、あらゆるラインを超えた、虚しい結末しか迎えません。

 

だからこそ国家や人種という単位ではなく、家族という小さくも偉大で幸福な平和と絆を求めるべきなんです。

 

「ミシシッピー・バーニング」

ジーン・ハックマン ウィレム・デフォー主演 アラン・パーカー監督

 

【あらすじ】

ミシシッピ州フィラデルフィアで3人の公民運動家が失踪する。FBIは事件に起きた田舎町で調査をするが、そこはKKKや保安官たちによる、公然とした黒人に対する暴力が行われていた。

 

【感想】

KKKなんて時代の遅れの遺物であるはずなのに、現代でも我々が考えなければいけない問題に直面しています。

悲しいことです。非白人、というよりも非アングロ・サクソン系は差別しても良いという考え方があること自体、おかしなことです。

しかし今、アメリカだけでなく世界各地で人種差別的な事件が勃発しています。

 

この映画もまたKKKの保守というより、過激派原理主義の人々が暮らす町の話です。

国から与えられたはずの黒人に対する権利はなく、家は燃やされ、挙句には無残に殺されてしまいます。

黒人たちもそれ以上の暴力を受けないために歯向かうことはしません。

そして町の人々も自分たちの正当性を確信しているんです。

 

そこに現れたのがFBI。

彼らはマスコミに押されるかたちで捜査を開始しますが、徐々に町の異様な雰囲気に対して抵抗感を強めます。

ルパートは元々南部の生まれではあるものの、ものの考え方は町の人々とは違います。

ただ個人的にルパートの憤りって、結局女性なんですよね(苦笑)

そこがちょっと残念だったんです。

黒人のため、というよりは、憎きKKKのために強引な捜査で解決した感じがあって。

 

犯人たちも逮捕されましたけど、みんな罪としてはそこまで重くないんです。人を殺しているはずなのに。

そう、この問題っていうのは解決していないんです。だからこそ映画が終わってもすっきりしないんですよね。

 

「憎しみ」で育てられた、と言っていた女性。

そう憎しみが当たり前のように根っこにあるんです。

そこには愛が介在していないんです。

憎しみが生むのは、新たな憎しみと未来に対する破滅だけです。

 

この映画は若干白人に都合のいい映画とも言えますが、人種問題というものを考えるのにはいい映画です。

 

「バイオハザード」

ミラ・ジョヴォヴィッチ主演 ポール・W・S・アンダーソン監督

 

【あらすじ】

巨大複合企業アンブレラは裏で細菌兵器を作り出していた。

記憶を失っていたアリスは男とともに特殊部隊に拘束される。彼らとともにアンブレラの内部に潜入するが、そこで見た光景は…。

 

【感想】

「バイオハザード」は僕の世代だと、友達とよくやってましたね。

とにかく当時、プレステでこのクオリティのゲームって画期的だったんですよ。

ええ、そんな僕は常にビビッてましたけども(笑)

 

今回はそんな人気ゲームの映画化です。

とにかく何もかも唐突に始まります。なんか唐突に研究員が閉じ込められて、唐突にセクシーなミラジョヴォヴィッチが現れて、おまけに記憶喪失。唐突に特殊部隊が現れて、アンブレラの内部へ。そして唐突に出てくる人工知能みたいなやつ。そして死者、というかゾンビ。結構目まぐるしく展開していくんですけど、テンポとしてはよかったです。

 

ただ、これって続編を意識して作られてるもんだから、なぜ人々がゾンビ化したかっていうだけの序章で、強敵とかはあまり出てきません。

だからこれ一本でおもしろい、とか評価はできないんですけど、地上の世界が混乱していた幕引きは良かったです。

author:トモヤムクン, category:-, 14:45
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小さな映画館 第114幕

「黒猫白猫」

「エル・トポ」

「ウォーリー」

「ボーイズ・ドント・クライ」

「ムトゥ 踊るマハラジャ」

 

「黒猫白猫」

パイラム・セヴェルジャン フロリアン・アイディーニ主演 エミール・クストリッツァ監督

 

【あらすじ】

ユーゴスラビアの田舎町、マトゥコは博打や儲け話で全財産を失ってしまう。起死回生に父の親友でもあるマフィアのダダンに、石油列車を襲う計画を持ちかけるが失敗。借金の代わりに息子を結婚させようとするが…。

 

【感想】

 

Happy End!!

 

最後にそう締めくくられるけど、まさにハッピーエンド。

とにかくテンポがよくて、登場人物がみんな魅力的。

なによりもジジイたちと子どもたち!!

親に振り回されながらもなんとか自分の意志を貫こうとする姿勢はすごくよかった。

ザーレの恋は見ていて清々しくて、楽しい。

 

そしてロクデナシの親父たち!(笑)

息子たちのことなんて全然頭にない。ただただ金のことだけ。

だけどそんな彼らに最後には天罰が下るわけです(笑)

でも新しい友情も生まれるあたりがハッピーエンドなんですよね。

 

さてタイトルの黒猫と白猫ですが、ところどころに登場します。

まるでハチャメチャな物語を見守るように。

黒と白は二体で一対なんです。

これは個人的な見解ですけど、クストリッツカ監督のことだからユーゴスラビアは内戦を暗喩したんじゃないかな、って思うんです。

ユーゴスラビアの情報ってあんまりに日本には入ってきませんけど、つい最近まで内戦があったんです。

凄く複雑な内戦なんですけど、簡単に言ってしまうと民族紛争です。

僕はこの映画に、例え黒でも白でもいっしょになって、この陽気な人たちを見てみよう、というメッセージが込められてると思っています。

そしてもう一つは黒猫(死)白猫(生)の対比です。

死と生は常にセットです。セットで人間たちをいつだって見守っています。

 

みんなが笑って歌えば、ハッピーエンドなんです。

 

「エル・トポ」

アレハンドロ・ホドロフスキー主演&監督

 

【あらすじ】

一人息子と旅をしていたエルトポは、虐殺された町へよる。ならず者を殺したエルトポは女のために、息子を捨てる。女は一番強い男でないといけない、として4人のガンマンを殺すよう要求する。

 

【感想】

 

ビックリした。ガンマンものかと思ったら、ものすごく詩的で抽象的な映画でした。

なんだけどすごく見せられる。それは演出の妙でしょうね。

砂漠という乾いた土地と潤う水、つまり死と生とかが混ざり合った場所で生きているエルトポが、再び太陽という真理のもとにむかうお話です。

 

エルトポは欲望のためなら、どんな手段でも勝ち抜いてきました。

エルトポが対決したのは、盲目のヨガ者、早撃ちのガンマン、完全主義者、そして人間を超越した者です。いずれもエルトポは秘境な勝ち方をします。

そこでエルトポは自分が一体なぜ人を殺してきたか、という虚無感に襲われるのです。

エルトポは太陽のあたらない洞くつで、奇形の人々に助けられます。そこでまるで神のように崇められるエルトポ。彼はその気になり、彼らを導くために、再び日のもとに自身を晒し、醜態を見せながらも曲芸で賃金を稼ぎます。

しかしまるで自業自得のように現れる息子という存在。

エルトポは洞くつのトンネルができるまで生かしてくれと頼みます。

そして洞くつは開き、人々は地上に出てきますが、町の人々によって銃殺されてしまいます。

エルトポは怒り狂い、彼らに対して真正面から攻撃しました。

そうです、物語は最初のほうに返っているんです。エルトポが最初に見た、あの惨劇の町を。

 

神を探し、ようやく真理にたどり着いたと思ったら、すべては再び因果応報のように繰り返される。

最後の焼身自殺はまるで仏教徒のようでしたが、自身の手によって、カルマを断ち切ったようにも見えます。

だから正直キリスト教的というより、個人的には仏教的に見えたんですよ。

 

「ウォーリー」

アンドリュー・スタントン監督

 

【あらすじ】

西暦2805年。人間は汚染した地球を捨てて巨大な宇宙船で暮らすようになった。

地球でただひとつ動くロボット、WALL-E。ごみ処理ロボットのウォーリーはシステムエラーにより、感情を持ってしまう。そんな時巨大な宇宙船が現れ、中からイヴというロボットと出会う。イヴについていこうとウォーリーは人間の住む巨大な宇宙船へ乗り込むが…。

 

【感想】

大人も子どもも楽しめる作品っていうのは、本当の名作だと思います。

この作品はウォーリーのピュアな言動がとにかく愛らしいんです。ただただ地球に残ってひたすら楽しもうとするウォーリー。いるのは虫くらい。

そんな時にイヴがやってきて、ウォーリーは久しぶりに誰かといるという感情を共有します。

イヴもまたウォーリーに感化されて、ロボットながら感情を出すようになりました。

 

そして人間です。

宇宙船の中にいる人間はロボットだよりでみんな肥満体。知識もなく、とにかくロボットによって生活。ある意味で現在の地上の人間よりは、豊かな生活なのかもしれません。

これってドラえもんの映画でもありましたよね。ブリキにたよりすぎて、ブリキに支配されるっていう。

この映画でも人間は自分の意思がすでになくなっていました。

そんな時にウォーリーという、ある意味で一番人間らしいロボットが登場することによって、人間たちは奮起していきます。

 

ここら辺は環境問題や人間のエゴを描いていて、ディズニーらしい問題提起ですね。

最後もべたではありますが、思わず感動してしまいました。

 

人間はどんな廃墟からだってもう一度立つことができるんです。

そういう力強いメッセージをたしかに受け取りました。

 

「ボーイズ・ドント・クライ」

ヒラリー・スワンク主演 キンバリー・ピアース監督

 

【あらすじ】

性同一性障害のブランドンは身体的には女性ながら、男性を愛する。ある日ジョンとトムというならず者と出会い、ブランドンはジョンの愛人ラナに恋をするが…。

 

【感想】

せつない。

今でこそLGBTについていろいろと議論するようになって気ましたけど、まだまだ一般人に対するハードルは高いままです。

やっぱり男、女っていう区別は昔から続く固定観念なんですね。集合無意識のような。

だけど当たり前だと思うことが、マイノリティの人たちを苦しめることがあります。

 

ブランドンは男として生きようとしますが、素性を明かさねければ、それはものすごく限定的な世界でしか生きることができません。

そんな時にラナという女性に出会います。ラナはたしかにブランドンの異変に気付きながらも、男とか女とかではなく、ブランドン自身を愛そうと努力しました。

しかし都会ならまだしも閉塞的な町では、ブランドンは化け物扱いされてしまうのです。

 

そしてジョンという人間です。

破滅的な不良で、切れると手が付けられません。生きるという実感を痛みをもってでないとわからない危険人物。

ブランドンが女だとわかれば、ブランドンはただの女性の肉体にしか思わないような男です。

とにかくこの男は観ていて憎くなります。

 

実話とはいえ、本当につらい結末です。

なんとか生きていく希望が得られたというのに、その矢先に殺されてしまうわけですから。

 

「ムトゥ 踊るマハラジャ」

ラジニカーント主演 K.S ラヴィクマール監督

 

【あらすじ】

大地主のラージャに仕えるムトゥは主人からも周囲からも信頼されていた。ある時、主人と観に行った芝居で看板女優のランガに恋をする。しかしラージャも同じく恋をしてしまい、三角関係となってしまう。そんな時ラージャの屋敷を乗っ取ろうとする叔父がある計画をしていた。

 

【感想】

 

人間、欲に飲まれれば終わりです。主人にあるべきは、仕えるものにあるべきは、やはり徳です。

やっぱりインド映画は明るくていいですね。

テンポもいいし、何よりも音楽を聴いていて楽しくなります。

この映画もムトゥという好漢が主人公であり、叔父という悪党と対立するという、すごくわかりやすいストーリーになっています。

その過程でムトゥが恋をしたり、ハチャメチャがあったり、3時間近い尺にも関わらずだれることなく観ることができました。

本当にムトゥに嫌なところがないんです。もちろんラージャにもです。だからこそアクションシーンは清々しい。ほら、仮面ライダーがショッカーを倒していく感覚です。

最後の最後は不思議な終わり方ですよね。まるで生き仏、神様のように現れたムトゥの父が風のように消えていくあのシーン。

インドだからこそ、ああいう神秘的な終わり方が似合うのかもしれません。

author:トモヤムクン, category:-, 15:57
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小さな映画館 第113幕

「ミュンヘン」

「ロミオとジュリエット」

「裸足の1500マイル」

「アンダー・ザ・スキン」

「ムカデ人間」

 

「ミュンヘン」

エリック・バナ主演 スティーヴン・スピルバーグ監督

 

【あらすじ】

1972年ミュンヘン五輪開催中、パレスチナの過激派組織「黒い九月」はイスラエル選手団の宿舎に侵入し、結果的に選手11人全員が死亡してしまう。

イスラエル政府は報復として首謀者11人を暗殺することに。アヴナーをリーダーとして作戦を実行するが、彼の仲間が次々と死んでいき…。

 

【感想】

これはスピルバーグ監督作品の中でも傑作のひとつです。

イスラエルの視点から物語は始まりますが、スピルバーグは特別どちらが悪とは描いていません。双方に信念があって、家族がある。その中で互いの憎しみだけが横行し、無残な戦闘になってしまう、という悲劇を描いています。

 

中東の問題は日本だとすごくわかりにくいですよね。

中東問題を実感するのって、例えばオイルショックのような状態の時ではないでしょうか?

しかしイスラエルとパレスチナとの抗争は、何も国家樹立してからの短い間の話ではありません。彼らにとっては何千年の闘いなのです。

 

アヴナーは最初祖国のために任務を果たします。当然のその背後には愛する家族がいるわけです。

しかし憎むべき相手もまた家族がいて、子どもたちの前ではやはり同じように、愛する両親でいるのです。

だんだんとアヴナーの精神が崩壊していくのがこの映画の見どころでもあります。

最初と最後のセックスのやり方で違いがわかりますよね。スピルバーグ監督にしては珍しく、生々しい、というより生のセックスが描かれています。序盤は愛する者の行為でしたが、最後のセックスはまるで虚無に対する迷いのようでした。

 

首謀者を倒せば終わる、なんてことはありません。

劇中で描かれていたように、切っても新しい爪が生えてくるのです。

祖国ってなんでしょうか?

帰る場所です。

しかしその帰る場所に愛が見出せなければ?

人間としてさまようのでしょうか?

この映画は個人の果てしない苦悩を描いた傑作です。

 

「ロミオとジュリエット」

レオナルド・ディカプリオ クレア・デーンズ主演 バズ・ラーマン監督

 

【あらすじ】

ヴェローナ・ビーチで権力のある二大マフィア、モンタギュー家とキュピレット家。抗争が絶えなかったが、モンタギュー家の一人息子ロミオは、キュピレット家のジュリエットに恋をする。激しく愛し合うふたりだが、両家の争いは過酷を極め…。

 

【感想】

ちょっとしたトリビアなんですけど、

原作のジュリエットは14歳にも満たない年齢です。

そして物語は五日間なんです。

 

さて綺麗なディカプリオと美しいクレアが観られる今作。

舞台を現代に移していますが、割と原作に忠実な作りになっていて、楽しめます。

ただ正直なことを言えば、これ現代の設定じゃなくてもよかったんじゃないかな、ということ。

アロハシャツとかいろいろ現代要素はあるんですけど、正直それ以外は特に現代にこだわる意味のあるものではありません。

 

ただただディカプリオの美しさを堪能する映画です。

ディカプリオの涙を流した死に顔こそ、この映画の醍醐味かも。

 

「裸足の1500マイル」

エヴァーリン・サンピ主演 フィリップ・ノイス監督

 

【あらすじ】

1931年オーストラリアでは白人男性と、原住民アポリジニ女性との間に生まれた混血児を家族から離し、白人社会に適応させようとして、強制的に施設に入れていた。ある日モリーと妹デイジー、いとこのグレイシーも施設に入れられるが、彼女たちは脱走し、故郷を目指す。

 

【感想】

オーストラリアの歴史って、あんまり馴染みがないと思うんです。

だけどここで取り上げられるテーマは、必ずしもオーストラリアだけで起きたことではありません。

アメリカの原住民インディアンが征服されたように、オーストラリアの原住民アポリジニの人々もまた、征服者によって支配されていました。

 

モリーたちは愛する母親から離されてしまいますが、彼女たちはなんとか自力で故郷へ帰ろうとします。

それを追う人々は、なによりもメンツのために動いているのです。

ここら辺の身勝手さがあらわれてますよね。

原住民の人々は、ただ故郷に帰るだけでいいのにも関わらず、この映画でいうところの白人たちは、自分たちは”彼らのため”にやっていると思い込んでいるんです。これこそ欺瞞で本当の偽善です。

都合のいいように扱っているだけに過ぎません。

故郷というのはアイデンティティなんです。それを取り上げるというのは、ある意味でその個人を殺すことに等しいです。

 

ただ映画としてはもうちょっと踏み込んでもよかった。

少しあっさりし過ぎて、ことの重大さがイマイチ伝わらないこともあります。

 

「アンダー・ザ・スキン」

スカーレット・ヨハンソン主演 ジョナサン・グレイザー監督

 

【あらすじ】

人間の男を誘いこんでは、黒い液体の中に浸し、皮膚だけ残す女。ある日顔に腫瘍のできた男を誘うが、彼女は彼を逃がす。

ある田舎で男と寝るが、自分の性器の異常を感じる。

 

【感想】

正直雰囲気はすごくいい映画なんですよ。

「人間って浮かれてるし、欲にまみれてるなー」って女(エイリアン?)が淡々と感じてるようでよかった。

女はちょっと人間ごっこをしたくなるんです。だけどセックスっていう概念というか、人間としての感情がないから、いろんなものに違和感をおぼえたりして彼女は戸惑っていきます。

最後は欲にまみれた男に殺されてしまって、あら残念。ただその焼死体も雪と相まって美しい!ここら辺は芸術性があってよいです。液体の映像とかもね。

それに彼女が無の存在だからこそ人間の下劣さっていうのも浮彫になる描写もいいです。

 

ただ、ぶっちゃけ人を選ぶというか、SFだと思って借りたらすごく後悔しそうな感じはあります。

説明もほとんどないし、わかりにくい。

 

まあ、おすすめできる点があるとしたら、

 

スカーレット・ヨハンソンのヌードでしょう(真顔)

 

「ムカデ人間」

ディーター・ラーザー主演 トム・シックス監督

 

【あらすじ】

かつてシャム双生児の分離の名医だったヨーゼフ・ハイター博士。彼は人間の肛門と口をつなげて、「ムカデ人間」を創りたいと密かに考えていた。

ある日アメリカ人旅行者のリンジーとジェニーは森中で車がパンクしてしまう。辿りついた先にはヨーゼフがいた。

 

【感想】

 

今のところ絶対に人にすすめたくない映画No.1!

 

ああー、もうグロイなんてもんじゃない!そのグロさの域を超えてる。狂気のグロさ!

見たことを後悔する感じです。

だけど観なければもっと後悔してたかも。

ものすごい映画なんです。これを絶賛とかこき下ろすとか、そういう対象ではありません。

とにかく不快が様々なものに勝ちます。

 

ハイター博士は天才であるがゆえに、ある境地に達してしまった人です。

ある意味で創造主になろうとした人。

ただしそこに意義はありません。自分の欲求を満たすだけです。

 

ムカデ人間にされた日本人は最終的に「人間として」死ぬ決断をしました。

それに同意したかどうかはわかりませんけど、呼吸器官が繋がっているリンジーたちも連鎖して死んでいく様子はつらくとも、人間の尊厳を感じました。

 

それにしても日本人のカツローは関西弁ながら良い味を出してました。

なんでも北村昭博さんという俳優さんだそうです。

 

ああ、これって正直、先頭のほうがまだいいよね、なんて感想が出てしまう自分も怖い!

author:トモヤムクン, category:-, 15:17
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