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小さな映画館 第123幕

「キングダム・オブ・ヘブン」

「小人の饗宴」

「シュリ」

「イーグル・アイ」

「ブラック&ホワイト」

 

「キングダム・オブ・ヘブン」

オーランド・ブルーム エヴァ・グリーン エドワード・ノートン主演 リドリー・スコット監督

 

【あらすじ】

フランスで鍛冶屋を営んでいたバリアンは妻と死別した直後、イベリンの領主ゴッドフリーから、バリアンの父親だと告げられる。十字軍として参加するよう要請されバリアンは妻の罪を償うために参加。エルサレムへの道中父は殺されてしまうが、バリアンは自力でたどり着く。王ボードゥアン4世とサラディンは和平を結んでいたが、ギーやルノーといったイスラムへの強硬派が台頭し、再び戦火を巻き起こすこととなった。そんな中バリアンはボードゥアン4世の姉であり、ギーの妻シビラに恋をする。

 

【感想】

この映画は本当に面白かったです。日本ではあまり興行成績が奮わなかったようですが、それも十分理解できるんです。なぜなら日本人からすれば十字軍、つまりキリスト教とイスラム教の対立っていうのは、歴史的にもあまり関心がないからです。

今回の映画は決して英雄ものではありません。もちろんバリアンはそういう風に描かれているといえば、そうですが、この映画では本来敵であるはずのサラディンの正当性やカッコよさも描かれているんです。

つまりこの映画の重要ポイントはキリスト教、イスラム教の正当性ではなく、双方の理解と和平にあるのです。

 

バリアンは実在する人物をモデルにしていますが、決してあのようなドラマチックな人生を送ってきた人ではありません。

その他の人物は大体史実通りです。

だからこそキリスト教以前にギーやルノーの強欲さや残虐さが目立ちましたよね?これで本当に正義と言えるのか、という。

一方でボードゥアン4世は病弱ながらも、サラディンと和平を結ぶほど、賢者な王様でした。

サラディンも同じです。基本的には争うよりも、和平の道を選ぼうとしていました。

しかしいつの日も過激派が輪を乱すんです。

 

バリアンは領主を護る時に言いました。

「エルサレムを護るためではなく、国民や家族を護るために戦おう」と訴えかけます。

そうなんです。

エルサレムが誰のものか。一体全体それを望んだのは誰か。神ではないですよね。そう人です。それも強欲な。

そんなもののために愛する人の血を流す意味があるでしょうか?

だからこそ家族を護るために、騎士ではない庶民に武器を持たせ、戦わせるのではなく、護ることに専念させました。

 

そして結局エルサレムは交渉の末サラディンにわたります。

この場面が秀逸なんです。

バリアンが「あなたにとってエルサレムとは?」

と訊くと、

サラディン「無だ。だがすべてだ!」

と答えます。

やはりサラディンは英雄です。

エルサレムというのは場所なんです。信仰の自由が保障された場所。それだけなんです。

もしそんな場所がギーやルノーにわたったらどうなるか?

信仰の自由どころか、イスラム教の同胞さえも虐殺されてしまいます。だからこそサラディンは戦闘を選択しました。

でも最後にはバリアンという理解者に巡り合え、再び和平が結ばれたのです。

 

世の中は賢者ばかりではありません。むしろ愚者のほうが多いかもしれません。

今の時代も同じです。

いつまでも十字軍の傷跡というのは、深くなっていくばかりです。

しかしどこかで必ず手をつなぐ賢者が現れるはずです。

この映画は本当に素晴らしい映画でした。

 

「小人の饗宴」

ヘルムート・ドーリンク主演 ヴェルナー・ヘルツォーク監督

 

【あらすじ】

舞台は小人の教育施設。その日は署長とその他の職員が外出を出ていた。それを機に日ごろの鬱憤を爆発させた13人の小人たち。体制側の校長はぺぺを人質にとっていたが、小人たちの狂乱はさらに過激化する。

 

【感想】

小人症、と聞いて首をひねる日本人は多いんじゃないでしょうか。それくらい海外に比べれば、日本の小人症のかたは少ないんです。もちろんいなわけではありませんよ。

これはそんな小人症の人たちだけで撮られた異質の映画です。

 

今だったら人権の尊重で差別的に捉えかねない映画ですが、これはそれすらも皮肉を込めた映画になっています。

小人たちはずっと支配されていたわけです。この時点では可哀想で、同情できますよね。

しかし署長たちがいなくなると、つまり強い圧力がなくなると、暴動に勢いが増していきます。

日ごろの憎しみ、怒りが一気に噴出されたんです。

動物や盲人への虐待、放火、器物破損。

しまいには秩序や宗教さえなくなる、それこそ野蛮な状態に陥ります。

そう、人間というのは小人であろうが、すべてに共通する暴力性が潜んでいるんです。

誰が特別というわけではありません。しかしそうした潜在的な怒りを暴発させるものは何か。それもまた人間なんです。

人間は小人たちを蔑み、小人たちはさらになにもできない盲人や動物を虐待していきました。

どんなに綺麗なことを言おうが、人間というのは大小問わずそういう生物なんだ、という皮肉を感じます。

 

ラストのラクダを見て笑うシーンは不気味ですが、人間の本質をあらわしたものです。

この映画の内容は殆どないと言っても過言ではありません。ただない中に感じる不快感や嫌悪感こそが、この映画の狙いでしょう。

 

「シュリ」

ハン・ソッキュ キム・ユンジン主演 カン・ジェギュ監督

 

【あらすじ】

秘密情報機関OPのユ・ジュンウォンは相次ぐ要人の暗殺事件を調査していた。武器密売商人の死をきっかけに北朝鮮の特殊第8団が絡んでいることがわかった。彼らは新素材液体爆弾のCTXが狙いだとわかる。

ジュンウォンは情報がどこからか漏れていると疑い捜査すると、意外な人物につきあたった。

 

【感想】

北朝鮮という国は日本にとっても脅威なのは明白な事実でしょう。

彼らは体制を維持するために、ありとあらゆる手段を使ってきます。

しかし元をたどれば、どこにたどり着くか。

それは冷戦です。

ソ連とアメリカという大国の思惑によって、意図せず朝鮮は分裂してしまったのです。彼らの意思もあったかもしれません。しかし大きな原因をつくったのは彼らというわけではありません。

 

ミョンヒョンは祖国に忠誠を誓い、任務のために心を殺していました。

しかしジュンウォンとの暮らしで、初めて人間らしい感情を取り戻したのです。

それは持っていた愛という感情です。

悲しいですよね。

だってどちらも考えはいっしょなんですもん。

祖国の統一。

だけどそのやり方がまったく異なる。

朝鮮の分断がなければ、ふたりはまた別の生き方があって、もっと幸せだったのかもしれない。

お腹の中の子どもといっしょに、明るい未来があったかもしれない。

ミョンヒョンというのは架空の人物ではありません。ジュンウォンはイ・ミョンホンという女性を愛したのです。

 

この映画はアクションが見どころなんですけども、どちらかといえば、そうしたふたりの切ない関係に目がいってしまいました。

 

「イーグル・アイ」

シャイア・ラブーフ ミシェル・モナハン主演 D・J・カルーソー監督

 

【あらすじ】

政府の仕事をしていた双子の兄イーサンを亡くし、平凡な毎日を送っていたジェリー。ある日知らない女から電話がかかってきて、「今すぐ逃げろ」と指示される。部屋には大量の武器が送り付けられており、ジェリーはFBIに拘束されてしまった。

無実を訴えるジェリーに再び女からの指令が出る。ジェリーは逃走中に息子を人質にとられたレイチェルという女性に遭遇する。

 

【感想】

面白かった。

結構あるあるネタかもしれないけど、AIの暴走と国家の危機。

これって笑いごとじゃないんですよ。

善悪ってどうやって決まると思います?これってすごくさじ加減が難しいんです。

結局のところ人間の中の善悪って明確な境界線がないんです。

でも一方でAIは違います。きっちりとしたルールがあり、そして善悪があります。

 

AIのアリアはテロ組織の人間ではない、と判断したにも関わらず、大統領は結果的にGOサインを出してしまいました。

するとアリアにとって、誤った判断を下した大統領および国会議員こそ、国民の敵だと判断したんです。

人間だったらなかなかこうは思いませんよね?

確かに大統領に非があったかもしれませんが、抹殺しようとまでは考えません。

しかしアリアはそれが「善」だと決断したんです。

 

ジェリーは兄に対するコンプレックスを抱きながらも、兄のまっすぐな性格に憧れていました。

兄もまたジェリーを愛していた。

ジェリーは最終的に兄に託された使命を果たしたのです。

最後に大統領の隣に立つというのは、ある意味で皮肉な終わり方でしたね。

 

あとFBIのおじさん、めっちゃかっこよかった。

 

「ブラック&ホワイト」

トム・ハーディ クリス・パイン リース・ウィザースプーン主演 マックG監督

 

【あらすじ】

CIAのエージェント、FDRとタックは同じ女性に恋をし、作戦と偽ってチームを組み、互いに妨害しあう。

 

【感想】

トム・ハーディとクリス・パインというイケメンふたりが迫ってきたらそりゃ…。

コメディ系アクション映画でしたが、なかなか面白かったです。

なんというか王道なんですよね。

あ、やっぱりこういう展開なるよね、って。

でもわかってても楽しめる映画なんです。

 

そしてリース・ウィザースプーンも魅力的な女性ですよね。

男運が悪いとは思えないくらい、美人。

本当、美男美女のバカバカしい作戦の中で、なんやかんや犯罪者の大物捕まえちゃったっていうオチ。

そして最後のオチにも笑いました。

寝てねえのかよ!

と。

 

 

 

author:トモヤムクン, category:-, 15:44
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小さな映画館 第121幕

「道」

「オール・ユー・ニード・イズ・キル」

「世界にひとつのプレイブック」

「デンジャラス・ラン」

「渇き。」

 

「道」

アンソニー・クイン ジュリエッタ・マシーナ主演 フェデリコ・フェリーニ監督

 

【あらすじ】

旅芸人のザンパノは助手女性が死んでしまったので、代わりにジェルソミーナを連れていく。道化の恰好をする彼女は、最初こそ初めての旅を楽しんでいたが、ザンパノの態度に嫌気がさし、ひとりで街へ出る。その時陽気な旅芸人のマット率いるサーカス団に魅了され、誘われるが…。

 

【感想】

陽気な音楽とは対照的になんとも切ない話でした。

粗暴で感情的な性格のザンパノと、あまり賢くはないけど純粋で真っすぐなジェルソミーナという、言ってしまえば正反対の性格のふたりなんです。

いつも怒られてばかりいたジェルソミーナは自分の存在について考えます。そりゃそうです、母親にでさえ殆ど厄介払いされたようなもんですから。しかしマットはどんなもの、例えばそこら辺の石でも、存在する理由があり、何かの役に立つと語ったことで、彼女は初めて自分が存在していいと肯定されたんです。

ここまでは良かったんです。

ザンパノは素直な性格ではありません。例えジェルソミーナに惚れていたとしても、言葉は荒っぽくなってしまいます。

そしてマットと再会したことで話は急展開。彼に対して怒りを抱いていたザンパノが彼を殺してしまうのです。

ジェルソミーナは現実を受け入れられず、徐々に精神が崩壊していきました。

ザンパノはそんな彼女を見捨ててしまいますが、数年後彼女が孤独な最期を遂げたことを知り、後悔の涙に暮れます。

 

そうなんです、誰もが不幸になって終わるというアンハッピー・エンドなんです。

ジェルソミーナはザンパノにこそ、自分の存在を肯定してほしかったんです。ザンパノも同じかもしれません。ジェルソミーナの存在が必要だったんです。だけど素直になれず、粗野な態度にしか出ることができません。

この映画は戦後間もない時代です。

みなが懸命に生きていた時代。それぞれの道でそれぞれの人と出会います。そんな時、一体だれが一緒に歩いてくれるのか。それは孤独な道なのか、それとも…。

 

「オール・ユー・ニード・イズ・キル」

トム・クルーズ エミリー・ブラント主演 ダグ・リーマン監督

 

【あらすじ】

地球外生命体「ギタイ」と呼ばれる生物が地球を襲ってきた。人類の統合防衛軍の報道官であったウィリアム・ケイジ少佐は、危険地域の現地取材を拒否し、軍隊へと招集されてしまう。彼はチームとともに作戦を実行したが、敵の襲撃によって死んでしまう。しかし目覚めると、再び見た光景が広がっていた。

 

【感想】

タイム・ループものの映画ってよくありますよね。これも結構そのセオリーに沿った内容で、意外性があるかといえば、正直あまりありません。ただ映像は凝っていて、見ごたえはあります。

元々日本の漫画が原作なんですけども、日本の原作が海外で実写化されることって結構ありますよね。

こんなこと言うと悪いのですが、もしもこの作品を日本で作ってたら、あんまりいいクオリティにはならなかったんじゃないかな、と(苦笑)

やはりそこは市場の大きいアメリカですから、映像はド派手です。

ただですね、原作未読で申し訳ないんですけど、「ギタイ」という生物が一体なんなのか(そりゃ地球外生命体っていうのはわかりますけど)、ループの説明とか、もう少し掘り下げてみてもいいんじゃないか、とは思いましたね。

正直な話、闘いよりもループして、どうやってヒロインといるか、みたいなものが主軸になってるのが気になりました。

まあ最後のハッピーエンドは良くも悪くもハリウッドって感じでした。

ただ映像としては楽しめます。

 

「世界にひとつのプレイブック」

ブラッドリー・クーパー ジェニファー・ローレンス主演 デヴィッド・O・ラッセル監督

 

【あらすじ】

躁うつ病のパットは精神病院から退院した。彼は妻の浮気現場を目撃し、浮気相手に暴行したことで入院を命じられ、妻ニッキーへの接近禁止命令が出ていた。そんな時友人夫婦の妹ティファニーと知り合う。彼女は夫を亡くして依頼、性依存症となっていた。

 

【感想】

コミカルであり、ちょっとおかしなラブロマンス映画でもあります。

精神病って日本でも多く患者のかたがいるんですけど、まだまだ偏見はあるんです。その点アメリカは寛容というより、認められてるんですよね。

一方はADDや躁うつ病の男、もう一方は失意から性依存症に陥った女の恋愛です。なかなか普通というわけにはいきません(笑)だからお互いにいろいろ言い合うことが、そこら辺の痴話げんかと質が違う。

そして周囲の環境もまたおかしい。パットの父なんかは息子とどう向き合っていいかわからず、苦悩しながらも、なんかかけ事に夢中(笑)デ・ニーロって結構こういうコメディに出演するんですよね。

そんな環境でありながら、主人公ふたりを含め、確かにみんなおかしいところはあるけども、みんな優しい部分を持ち合わせているんです。

人間の中には確かに狂ったような部分はあるかもしれません。でもそれ以上に優しい部分もあるはずなんです。

とてつもない失笑を買うようなダンスをみせたふたりですが、彼らにとってはこれ以上にないダンス。

ふたりで築き上げた未来なんです。

過去を吹っ切り、互いが前を向いていく、なんだか不思議な多幸感を得られる映画です。

 

「デンジャラス・ラン」

デンゼル・ワシントン ライアン・レイノルズ主演 ダニエル・エスピノーサ監督

 

【あらすじ】

元CIAのトビン・フロストは組織を裏切ったため、世界各国で指名手配されていた。10年後南アフリカで捕まったフロストは収容施設に収監される。しかし直後に収容施設が襲撃され、フロストは新人工作員マットとともに逃亡する。

 

【感想】

テーマ自体はありがちですが、逃走劇はなかなかのものでした。

ただ本当にありがちな内容なんです。

CIAから逃走し、彼らがフロストを追う理由なんて簡単にわかるじゃないですか。当然フロストのほうが正義であり、CIAのほうが悪であると。これでもし、実はフロストの誘導に惑わされ、彼は実は正義の側ではなく本当の悪だった、というならこの映画の評価は変わったと思います。

ただこの映画はストレート過ぎたんです。それが悪いわけではないんですけどね。

まあ冷静なデンゼル・ワシントンと成長していくライアン・レイノルズの演技は良かったです。

 

「渇き。」

役所広司 小松菜奈主演 中島哲也監督

 

【あらすじ】

元刑事の藤島は、別れた妻からの連絡で娘の加奈子が失踪したことが知らされる。藤島は娘の手がかりを捜していく過程で、加奈子のとんでもない秘密を知っていく。

 

【感想】

完全に狂ってる。登場人物みんな狂ってる。正常な人間なんてどこにもいない。

そんなバイオレンスでスリリングな映画でした。

 

藤島は妻の浮気現場を目撃し、車ごと突っ込んだ件以来、荒れた生活を過ごしていました。劇中でもセリフのほとんどが「クソが!」でしたからね。

ある日妻からの依頼で加奈子を捜索することになりますが、加奈子のとんでもない悪事が暴かれると、藤島は絶望するどころか、渇きを覚えるように加奈子を執拗に追いかけました。そして言動はどんどん暴力的になっていきます。

なぜ藤島は加奈子に執着したのか。それは加奈子に揺さぶられていた時のように、肉親としてではなく、異性として加奈子を求めていたからでしょう。それもまた渇きです。

 

一方の加奈子はといえば、なんという凶悪というより、純粋悪な少女です。

結局加奈子は好きだった緒方の復讐のために、あらゆる手段を使い、人々を狂わせていきました。

彼女もまた愛というものに対して渇きをおぼえていたのかもしれません。

しかしそれは満たされることはなく、人々を狂わせていくことで、自身の精神も崩壊していきました。

しかし結局彼女は母親としての愛を持っていた女性に殺されてしまいます。

 

真相にたどり着いた藤島は大雪の中、死体を捜せと命令します。

もはや藤島の中にあるものはなんでしょうか?永遠に潤うことのない渇きなのです。

author:トモヤムクン, category:-, 19:15
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小さな映画館 第120幕

「レ・ミゼラブル」

「サニー 永遠の仲間たち」

「エデン」

「ローン・サバイバー」

「デス・レース」

 

「レ・ミゼラブル」

ヒュー・ジャックマン ラッセル・クロウ アン・ハサウェイ主演 トム・フーパー監督

 

【あらすじ】

妹のためにパンをひとつ盗んだ罪で19年も牢獄にいたジャン・ヴァルジャンは世の中を憎んでいた。ある日憲兵から逃れたジャンは司教に出会い改心する。市長となったジャンは自身の工場の働き手である女性が娼婦であることがわかり、彼女は職を失ってしまう。ジャンは彼女には病気がちの娘がいて、金が必要だと知る。ファンティーヌは不幸のうちに亡くなってしまうが、ジャンはなんとか彼女の娘を捜そうとする。しかし警官ジャヴェールに正体がばれて追われることに。なんとかファンティーヌの娘コゼットを、テナルディエから取り返すが、彼らは逃亡の生活を送る。

年月が経ち、若者マリユスは王政を打倒すべく、共和派の組織ABCに所属するが、ある日出会った少女に恋をする。

 

【感想】

原作が大好きなので、この映画は絶対に観たいと思っていたんです。結果からいえば良い映画なんです。ただ原作ファンからすれば、仕方ないとはいえ、少し駆け足で、ジャン・ヴァルジャンの贖罪、マリユスの革命と恋の心理描写がもっと掘り下げていられればな、と思ってしまいました。

だけども、概ねエンターテインメント作品としては素晴らしい出来のミュージカル映画です。

人を憎み、世の中を憎んでいたジャン・ヴァルジャンはひとりの司教と出会い改心しますが、「罪」というのは例え赦しを得たとしても、今の世の中ではかたちとし残ってしまいます。

だからこそ罪とは無縁のコゼットにジャン・ヴァrジャンは依存したんです。コゼットを愛し、育てることこそ、自分の罪の償いだと。

一方マリユスは良家に生まれながらも、独自の思想を持ち、家族に反発して生きてきました。それは革命です。原作ではユーゴーがかなり丹念に歴史的背景を書いていました。映画で強調されていたのは、若者たちが王政に立ち向かっていたことですね。ここに若者の生きる力と血、それこそ自由を勝ち取ろうと燃え滾る信念を感じました。

マリユスもまた仲間たちと立ち上がりますが、彼はコゼットに恋をします。

そこで初めてジャン・ヴァルジャンの複雑な心境が語られるんですよね。彼ら、というよりコゼットが幸せになることはいいことのなのだけども、自分にとって贖罪であり、愛するものとの別離というのは、ジャン・ヴァルジャンにとって生きる糧を奪ってしまうことになります。元々妹を助けるために盗みを働いた彼ですから、愛するものとの別離は耐え難いものでしょう。

 

そしてですよ、原作では目立って悪役として登場したテナルディエ夫婦。この夫婦の結末はちょっと違うんですけど、映画ではコミカルな悪役として登場します。ただ個人的に彼らの娘、エポニーヌは好きなんですよ。原作でもマリユスに恋をしているんですけど、彼の想いがコゼットにむかっているのを知っていて、それでも彼女をいじめるわけでもなく、死ぬまでマリユスに対する愛を貫くんです。

 

六月暴動は血の中に終わり、マリユスも死にかけましたが、ヴァルジャンの救助によって生き残ります。。

そしてコゼットと結婚し、ヴァルジャンは身を引くんです。

僕個人としてはここら辺は原作を読んでいただきたい。

ジャン・ヴァルジャンがコゼットのために、マリユスに対して自らの罪を告白するんです。その時のヴァルジャンの心境、そしてマリユスの複雑な心理は見ごたえがあります。

だからこそ真相を知ったマリユスがヴァルジャンの最期をみとった時の言葉「私はなんて愚かだったんだ!」に深みが増すんです。

ヴァルジャンにとって、最期にコゼットの幸せを見て亡くなっていき、映画ではファンティーヌと再会するシーンは良かったです。彼は約束を果たしたのですから。

 

「サニー 永遠の仲間たち」

ユ・ホジョン シム・ウンギョン主演 カン・ヒョンチョル監督

 

【あらすじ】

夫や娘に恵まれていた主婦のイム・ナミは母親の入院先で、高校時代の親友ハ・チュナと再会するも、彼女はがんを患い余命を宣告されていた。チュナはナミに頼み、かつての親友たちを集めてほしいと依頼する。それは高校時代の仲間たちサニーをさがすことに。

 

【感想】

コメディのおもしろさっていうのは、「やさしさ」があって初めて成立するんだと思っています。ただ下品に笑わせればいいというのではありません。

この映画はそうした「やさしさ」に支えられた素晴らしい映画です。

 

設定自体はすごくありがちなんです。だけどそれをうまく扱えるか、っていうのはやっぱり演出次第なんですよね。

田舎からやってきたナミはリーダーのチュナ、二重瞼に憧れるチャンミ、口の悪いジニ、凶暴な文学少女クムオク、ミス・コリアを夢見るポッキ、美少女で雑誌のモデルスジという、個性豊かな面々と仲良くなります。

というより彼女たちは不良少女なんですよね。といっても可愛いもので、相手と罵り合ったり、相手のリーダーがビビりだったりとコメディ要素満載ですが、80年代、日本もスケバンなんかあったわけですから(笑)

そうした学生時代の青春と、現代のただ真っすぐにいけばいいわけではない時代とを交差させて物語は展開していきます。

夢っていうのはなかなか叶わないものですし、だからこそ夢見る時期というのは尊いんです。

 

最後はリーダーのチュナによって、それぞれに希望と夢を再び与えられました。ここら辺はもちろんご都合主義な部分もありますが、この映画の終わり方としては良かったと思います。

そしてスジの存在です。

スジはクールで、だけど家庭環境に複雑な面を持ち合わせた少女です。当初ナミと接触したがりませんでしたけど、酒を飲み合ったことで意気投合したシーンには思わず爆笑してしまいました(笑)。彼女の存在って物語のキーパーソンなんですよね。サニーの解散の要因でもありますし、何よりナミにとっては切ない失恋の要因でもありましたから。

スジはシンナーを吸った同級生に、モデルとしては致命的な傷を負わされ、自殺未遂を図ってしまいます。

最後は大人になったスジの、やわらかい微笑みで終わったのが本当に良かったです。

サニーは再び集まったのだな、と。

 

さてさて、この映画って現代と80年代を表現してるんですけど、その背景ってすごく大事なんです。

コミカルに描かれていましたけど、ナミのお兄さんは民主化運動をしていたり、機動隊とぶつかり合ったりしていましたよね。

これって韓国の軍事政権時代の話なんです。言ってしまえば独裁的でもあるんです。

男尊女卑、というよりも、軍隊ですから男社会なわけです。そんな中彼女たちは自分を大事にし、同時に仲間を大事にしました。

それは民主化しても変わりません。

どんな時代であっても仲間を大事にする、という精神は普遍的であり、それは男女関係ないということです。

 

この映画はもう少し年を取って観た時、また違う観かたができるのかもしれません。

 

「エデン」

ジェイミー・チャン マット・オリアリー主演 ミーガン・グリフィス監督

 

【あらすじ】

ニューメキシコに住むアジア系移民の少女ヒョンジュは、男に騙され連れ去られてしまう。そこでは多くの女性が監禁されていた。

 

【感想】

実話がベースというのが本当に胸が痛くなる。

この映画では売春を強要され傷つきながらも、憎しみながらも、やさしさを忘れなかったヒョンジュという少女が主人公です。

ヒョンジュはなんとか逃げる術を考え付いたりする点では、ある意味でスリリングなサスペンス映画に見えなくもありませんが、基本的には生々しい欲の坩堝を描いたような映画です。

20歳になると殺され、産んだ赤ん坊は人身売買される。これは人間の行いとは思いたくないですが、そういう外道がいるのもまた事実なんです。

最後はヒョンジュも友人と逃げ切り、母親に電話をかけたところで終わります。

映画はそこで終わり、まるでハッピーエンドのような様子ですが、大変なのはその後なんです。心の傷というのは案外深いもので、体のようには簡単に癒えてくれません。

このようなことが世界中で蔓延していることでしょう。それも見えないかたちで。

胸の痛くなるような映画ではありますが、リアリティのある演出は必見です。

 

「ローン・サバイバー」

マーク・ウォールバーグ主演 ピーター・バーグ監督

 

【あらすじ】

2005年、アフガニスタン山岳地帯。現地の武装集団を率いるターリバーンの幹部の殺害を目的とした、アメリカ軍のレッド・ウィング作戦。そのためにアメリカ海軍特殊部隊ネイビー・シールズのマイケル・マーフィー大尉ら4名の兵士はヘリコプターから、険しい山岳地帯に降り立つ。

 

【感想】

戦争映画には英雄を重視するか、悲惨さを重視するか、それとも人間の残酷さを重視するのかのどれかだと思っています。

この映画ではそれらの要素を含めながらも、生々しく、人間的な戦争映画になっています。

 

ネイビー・シールズという特殊部隊は日本でも有名ですが、とにかく試練が過酷でそのほとんどが辞めていくと言われるほどスパルタなんです。だからこそそこから這い上がったものたちというのは、不屈の肉体と精神を手に入れます。

そんな彼らですが、やはり4人という少数精鋭では、200人のタリバンには敵いません。それでもなんとか仲間を守り抜き、必死に戦おうとする姿には目頭が熱くなりました。

 

そしてこの映画での特徴は決してアメリカ側だけを善としているわけではありません。というより、あまり国的な要素は少なく、人間同士のやりとりが肝でしたね。

だからこそ現地の住民とのやり取りが良かったんですよね。

彼らの「どんな者であっても保護せよ」という掟は、タリバンのそれとは違い、誇るべき、人間的な部分です。

イスラム教がすべて悪ではない、これはとても重要なことです。

 

「デス・レース」

ジェイソン・ステイサム主演 ポール.W.S.アンダーソン監督

 

【あらすじ】

経済的危機に陥り、治安が悪化したアメリカ。民営化された刑務所では囚人による過激なカーレースが行われていた。ネットで中継されていたそのカーレースは人気を博し、「デス・レース」と呼ばれていた。

ある日妻殺しの冤罪で刑務所に入った元レーサーのジェンセン。彼は前回のレースで戦死した人気レーサー、フランケンシュタインとしてレースに出ることに。

 

【感想】

ブルース・ウィリス、ニコラス・ケイジ、ショーン・コネリー、そしてジェイソン・ステイサム!そう超かっこいいハゲ俳優!!(失礼)

ジェイソン・ステイサムは相変わらず渋くて、美しい肉体をしていますね。

しかし今回はそんな肉体を屈しするというよりも、過激なカーアクションに挑戦します。

とにかく理屈抜きでスリリングでおもしろいんですよ。

なんというかかなり物騒になったマリオカートです。

最後は悪役である署長を騙して刑務所から脱走するという展開になっていきます。

あとオチもスッキリする感じでよかったですね。

 

あとは自分の目で見るべし!

author:トモヤムクン, category:-, 16:08
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小さな映画館 第119幕

「切腹」

「恋におちたシェイクスピア」

「博士と彼女のセオリー」

「パヒューム ある人殺しの物語」

「IT」

 

「切腹」

仲代達矢 岩下志麻 丹波哲郎 三国連太郎主演 小林正樹監督

 

【あらすじ】

老浪人の津雲半四郎は井伊家の江戸屋敷を訪れ、切腹を申し出た。しかし世間では食い詰め浪人によるゆすりが横行していた。ある日求女という男が切腹を申し出るが、いざ切腹となると、求女は一日だけの猶予を申し出るが、受け入れられず、彼は舌を噛んで死んでしまう。半四郎はその求女の義父であった。

 

【感想】

かっこいい。とにかくかっこいい。

仲代達矢の最高傑作は黒澤作品ではなく、この「切腹」だろう。

 

「侍」というものが形骸化してしまった江戸時代、名誉の死もない時代。

人々は金をせびるために切腹の真似事をし、そして大名家は名誉を重んじるだけ。

そこにあるのは現代と変わらない、人間の精神よりも物理的なエゴのかたまりの世界です。武士といえど保身が第一で、本気をもって死を望む者がまったくいませんでした。

そんな中、貧窮と上っ面な「武士道」によって家族を失った半四郎は覚悟の死をもって屋敷へ向かいます。

 

現代でもいますよね。

「日本人たるもの!」と言いながらも、私腹を肥やし、死ぬ覚悟もなく、他人の命を犠牲にしてまで生きながらえる愛国を語る人たちが。

そういう意味では尊敬する三島由紀夫は、例えナルシシズムゆえでも死をもって生きた愛国者であり、侍でしょう。

 

武士道の精神にあるのは情です。

山本常朝の「葉隠」には「武士道というは死ぬことと見つけたり」とあります。しかしこれは別に武士は死ぬべし、という意味ではありません。生きるか死ぬか、二者択一の選択に迫られた時こそ、死を選べということなんです。つまりは一生懸命生きることこそ武士道です。

半四郎は死を覚悟して最後は切腹を行いますが、井伊家の家臣によって銃撃され阻止されてしまいます。

そして最後は井伊家の名誉を守った、という空虚な終わり方をします。

 

この映画は日本映画の中でも傑作のひとつです。

是非いろんな人に見ていただきたい。

仲代達矢、そして脚本家の橋本忍は日本が誇る人物です。

 

「恋におちたシェイクスピア」

グウィネス・パルトロー ジョセフ・ファインズ主演 ジョン・マッデン監督

 

【あらすじ】

ペストが蔓延し、劇場の閉鎖が続くロンドン。ウィリアム・シェイクスピアはローズ座で公演すべく、新作「ロミオとジュリエット」の構想を練っていた。一方貴族の娘であり、芝居好きのヴィオラは望まない結婚に悩んでいた。そんなふたりが出会ったとき…。

 

【感想】

ラブロマンスとしてもですが、シェイクスピアという人物にフォーカスをあてた作品としても素晴らしいものです。

もちろんシェイクスピアがどういった人物であったかは、未だに謎のままなんです。別人説もあるくらい、彼に関する資料は残っていません。

しかしそうした謎の多い稀代の作家だからこそ、素晴らしい想像力を交えれば、見事な作品に仕上がります。

 

ヴィオラは演劇が大好きで、自身も詩人気質であり、役者希望でもあります。

そのためかシェイクスピアと共感し、愛を感じたあとのポエミーなやりとりには映画だからこそできるものだな、と(笑)

そんなふたりですが、シェイクスピアはマーロウに比べればまだまだの知名度。しかしヴィオラは融通のきかない上流階級の立場にありました。そうした身分の差という障害があるからこそ、彼らの愛情は燃えていきます。

これは「ロミオとジュリエット」とは似て非なるものですよね。

だけど共通しているのはふたりは死ぬほど愛し合ったという事実です。

 

ロミオとジュリエットは天国で結ばれますが、シェイクスピアとヴィオラは互いの人生を歩むことを決めました。

 

それにしてもエリザベス女王の貫禄が凄かったですね(笑)

 

「博士と彼女のセオリー」

エディ・レッドメイン フェリシティ・ジョーンズ主演 ジェームズ・マーシュ監督

 

【あらすじ】

ケンブリッジ大学で物理学を学んでいたスティーヴン・ホーキング。彼は同じ大学のジェーンと恋に落ちるが、ALSを患い

、余命2年を宣告されてしまう。それでも彼との結婚を選んだジェーン。スティーヴンは「時間」、そして「ブラックホール」について研究を始めると、いたるところから賞賛を浴びるようになっていく。

 

【感想】

スティーヴン・ホーキングと言えば、言わずと知れた有名な物理学者です。

そんな彼の映画となれば小難しい理論の話が出てくるのかと思えば、実際のところはそうではありません。学生の頃に恋に落ち、パートナーとなったジェーンとの関係がメインです。彼の宇宙論は脇に添えながらも、それでいて映画の本質ともなっているのが興味深いところです。

序盤は本当にありがちなメロドラマなんですけど、中盤から毛色が変わってきます。

スティーヴンはジェーンには助けが必要とし、ジョナサンとの仲を暗黙のうちに認めるようになります。ジェーンもジョナサンとスティーヴンの間で揺れ動きますが、彼女は自分の意思で選択をします。

宇宙のように時間をさかのぼっていけば、いろいろと解明できることがあるでしょう。

人生だって、さかのぼり、戻ることができたのなら、もしかしたらもっと幸福な未来があったのかもしれない。だけどこの映画では確かに苦難はあったけど、今の輝きがあるという素晴らしい終わり方です。

 

最後に聴衆から「人生哲学を教えてください」という質問に対してです。

スティーヴンはもしも目の前の彼女のペンを拾うことができたなら、という想像をしますが、それでも彼は

「人間の努力に境界はありません。我々はみな違いがあります。いかなに不運な人生でも何かやれることはあるので、命ある限り希望はあります」

という言葉を残しました。

 

「パヒューム ある人殺しの物語」

ベン・ウィショー ダスティン・ホフマン アラン・リックマン主演 トム・ティクヴァ監督

 

【あらすじ】

18世紀フランス・パリの悪臭漂う魚市場で産み落とされた子ども。彼は人並み以上の嗅覚を持ち合わせていた。青年となったグルヌイユは街で素晴らしい香りをみつけ、そのあとを追うと、そこには赤毛の女性がいた。グルヌイユは誤って彼女を殺してしまうが、彼女の香りを忘れられないでいた。女性の香りを再現しようと調香師のバルディーニに弟子入りする。

 

【感想】

「香」っていうのは人間古来からある普遍的なものです。それは音楽も同じですね。

人は「香」によって快、不快をかぎ分けます。

それはパリの街でも同じでした。労働者たちは常に悪臭にまみれ、上流階級の人たちは悪臭を誤魔化すために香水をつけるわけです。

そんな中悪臭にまみれた魚市場で生まれたグルヌイユは異常なまでの嗅覚の持ち主でした。

 

グルヌイユは赤毛の女性の香を執拗に追いました。もしかしたら女性の匂いを追った理由は母の愛だったのかもしれませんね。

グルヌイユは処刑場で、完璧な香を作り出し、人々を狂わせてしまうあのシーンは卑猥さがあまり感じられなかったのが監督の手腕です。(あれがいいか悪いかは別にして)

香によって人々を狂わせたグルヌイユは人間の曝け出した欲望を目の当たりにし、自身もまた欲望のままに女性を殺してきたことに気づき、涙を流します。

最後は無臭だった自身が香を身にまとい、人々の幸福のために消えていきました。もう人を惑わさないために。

 

「IT」

ティム・カリー リチャード・トーマス主演 トミー・リー・ウォーレス監督

 

【あらすじ】

1990年メイン州デリーで子どもだけを狙った連続殺人事件が起きる。少年ビルは弟を殺されてしまった。同じ学校のいじめられっ子の集団を組み、彼らは同様にあるピエロの姿を見ていることがわかった。

それから30年、各々の分野で活躍していた6人。ある日地元にいたマイクから一本の電話がかかってくる。

 

【感想】

僕はピエロが苦手なんです。海外でもピエロ恐怖症のかたはいますけど、反面人を笑わせる役割を持っています。

このピエロは人間の弱さに漬け込む、通称ペニー・ワイズ。

7人のいじめられっ子(Loosers)は執拗に彼に迫られますが、彼らは団結し、少年時代に打ち負かします。

しかしペニー・ワイズの法則性は30年に一度現れるということ。

再び現れたペニー・ワイズと対峙する7人。

 

この映画少年時代の冒険劇と奇怪なホラー要素を巧みに織り交ぜられていて楽しめました。

いじめられっ子であろうと、勇気を持てば恐怖に立ち向かえるというメッセージ性もありましたしね。

ただ、3時間見せられた挙句、ペニー・ワイズの正体があの蜘蛛って…という失望感はあります。

しかも強さの欠片も見せてくれず終わってしまいます。

そこがこの映画の残念なところです。

できればペニー・ワイズの不気味さだけは残しておいてほしかった。

 

author:トモヤムクン, category:-, 17:24
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小さな映画館 第118幕

「フィツカラルド」

「新しき世界」

「ぼくのエリ 200歳の少女」

「エクスペンダブルズ」

「暗殺の森」

 


「フィツカラルド」

クラウス・キンスキー主演 ヴェルナー・ヘルツォーク監督

 

【あらすじ】

オペラを愛するカルーソは、アマゾンの上流にオペラハウスを建設しようと計画する。カルーソは数名の乗組員とともにアマゾンを渡るが、そこには呪いを解いてくれると信じて疑わない原住民たちがいた。

 

【感想】

とにかく圧倒的なスケールで描かれるこの映画。

山を越える船のシーンは監督の突飛な発想としても有名ですね。

 

カルーソはとにかくオペラを愛するがゆえに、自身のオペラハウスを建設しようとします。しかしそこには近代化とは対照的な原住民たちが迎えるわけです。彼らにとってカルーソたちの白い船は何かのお告げのような乗り物でした。

カルーソは思わぬかたちで原住民の力を借りて山を開拓していきますが、カルーソと彼らの間にある思惑はまったく別のものでした。

これは白人が原住民たちの神聖な民族性を破壊していく過程を皮肉にしている部分もあります。

白人は自分の都合で動き、原住民たちはあくまで彼らという共同体のために動く。

最終的には自然には勝てず、壮大なオペラハウスではなく、船上という場所でオペラを聴くという滑稽なオチとなりました。いや、これが等身大の夢というものなのかもしれません。

人間は夢が壮大すぎるほど、やり過ぎるものです。しかしカルーソはオペラを愛する心は真実でしょう。

 

「新しき世界」

イ・ジョンジェ チェ・ミンシク主演 パク・フンジョン監督

 

【あらすじ】

韓国最大の組織ゴールドムーンの理事イ・ジャソン。彼の正体は潜入捜査官であった。ある日会長のソクが亡くなり、後継者争いが勃発する。ジャソンの兄貴分チョン・チョンとイ・ジュングのふたりだったが…。

 

【感想】

これは良かった。何よりもジャソンがかっこいい!

韓国のヤクザっていうんでしょうか、とにかくスマートで冷静な感じが恐いんですけど、少しかっこよくみえてしまいます。

そしてジャソンは潜入捜査官としてヤクザの一員になるんですけど、彼は彼で苦悩するんです。だってヤクザの自分は本意ではないのだから。しかし正義の側であるはずの警察もジャソンを助けようとはせず、むしろ利用するばかり。

そんな中でジャソンは一体自分はどっちの立場にいるのか迷ってしまいます。

 

任務のためなら非情になる課長に従いながらも、時に冷酷でありながらジャソンに対する情をかけるチョン・チョン。

チョン・チョンはね、かっこいいんですよ。確かにドン引きするくらいの殺し方をするんですけど、自分も命を張るとなったらどんなに刺されても倒れない姿は素直にかっこよかった。

それにジャソンに対する置き土産も粋過ぎる!!

ジュングも非道なやつなんだけど、これまたかっこいいんです。最後の死にざまなんて潔過ぎ!

 

ジャソンは正義よりも、チョン・チョンとの友情をとり組織のトップに座ることを決意したんです。

かっこいい映画です!

 

「ぼくのエリ 200歳の少女」

カーレ・ヘーデブラント リーナ・レアンデション主演 トーマス・アルフレッドソン監督

 

【あらすじ】

ストックホルム郊外に住む12歳の少年オスカー。彼は母子家庭で育ち、学校ではいじめられていた。ある日オスカーはミステリアスな少女エリと出会う。しかし彼女にはある秘密があった。

 

【感想】

北欧の映画って、少し日本と通ずるところがある気がします。ヴァンパイアとか人獣が人間社会に迷い込むのって、日本でもよくありますよね。

ただ北欧っていうのはそうした怪物たちの姿でさえ、幻想的で美しく、しかし儚くみせます。

 

オスカーという少年は、誤解のないように言えば儚げな、美少年です。12歳のオスカーはまだか弱さと、自立心が確立する前の年頃。母子家庭で育ち、学校ではいじめられている。こんな環境だと、とてもうまく自己肯定ができなくなりますよね。そんな時に不思議な少女エリと出会います。

エリの正体は人の血を飲んで生きるヴァンパイアでしたが、彼らを惹きつけたのは、互いの「孤独」でした。

ヴァンパイアは人の中では生きられず、オスカーもまた人間社会の中で苦しんでいました。

ふたりの接近は何者にも代えがたい「ピュア」なもので、それがまた美しいんです。

 

そして最後のシーン。殺されかけたオスカーを助けるためにエリは他人のために殺しをしました。ここが重要です。自分のためじゃなく、他人のためにやったということが。

オスカーたちは旅立つわけですが、それは孤独な旅です。決して人間社会に戻ることが許されるような状況じゃない。だけどふたりいれば孤独でなくなるのかもしれません。

 

あと、驚いたんですけど…。

エリって、

男の娘って、マジっすか?

 

「エクスペンダブルズ」

シルヴェスター・スタローン ジェイソン・ステイサム ジェット・リー主演 シルヴェスター・スタローン監督

 

【あらすじ】

エリート傭兵団「エクスペンダブルズ」はソマリアの海賊から人質を救う任務を遂行する。

ある日チームの仲介屋であるツールからの仕事の依頼を受ける。それは中南米の小さな島国の独裁者を倒すことだった。

 

【感想】

脇を見てもアーノルド・シュワルツェネッガー、ブルース・ウィリス、ミッキー・ロークがいるという、なんというマッチョイムズな世界。

結構シンプルなストーリーで、まさに愛と友情とアクションに重きを置いたような映画です。それが素晴らしい!

ただミッキー・ロークは意外とあっさり(というかかなりの荒治療)戻ってくるのはなー(苦笑)

でも本当にかっこいいんです。まさにアメリカ式のかっこよさを体現した映画なんです。

ただぶっちゃけ無双し過ぎな気がします(笑)

まあこれだけのメンツをそろえたんだから、弱いってことはなくても、ほぼ無敵で相手を倒してしまい、相手の能力がイマイチわからない状態なのは残念でした。

それでも後腐れのないラブロマンス要素もなかなかよかったですよ。

 

「暗殺の森」

ジャン=ルイ・トランティニャン ステファニア・サンドレッリ主演 ベルナルド・ベルトルッチ監督

 

【あらすじ】

1938年第二次世界大戦前のイタリア。哲学講師のマルチェロは、少年時代に同性愛者のリーノを正当防衛で殺してしまったことがトラウマとなっていた。その苦しみから逃れるようにファシズムに傾倒していく。組織の一員となったマルチェロは、任務としてかつての恩師にして反ファシズムの支柱クアドリ教授を暗殺することに。しかし彼は教授の妻と恋に落ちてしまい…。

 

【感想】

いろいろな見方があるでしょうけども、ファシズムというのは一種の幻想でもあります。

どんな人間でも、トラブルがあったりすると逃避傾向にありますよね。人によってはマルチェロのようにファシズムに傾倒していく人もいます。

しかしマルチェロは非情になりきれない一面がありました。それが人間としての情の部分です。

この映画にはバイセクシャル、レズ、ゲイ、障害者とう、当時迫害されていた人々が登場します。マルチェロもまた、本来はそっち側の人なんですけども、それを受け入れるのではなく、別の方向に逃げてしまったんです。

 

一方の教授はとにかく人情家。どんなに怪しかろうと、助けようとする一面を持ち合わせていました。

ある意味で正常というより、一般的な感覚を持った人です。

だからこそ彼の死は暗い意味を持ちました。

 

優秀な教え子マルチェロはまるで自分を肯定してもらうためのように、ファシズムへのめり込んでいきます。

それは自分が狂っていないという証拠がほしかったからです。

父親のように精神的におかしくなる遺伝子が自分にもあったから。

彼にとってファシズムは理性になっていました。

 

しかし最後のシーンではムッソリーニが破れ、事実上のファシズムの終結となりました。

そうなってしまえば彼は何者でもありません。

浮浪者となっていたリーノが「こいつはファシストだ!」というシーンはなんとも言えない気持ちになりました。

 

この映画では青が頻繁に使われていましたね。

冷酷な血の赤よりも、ひんやりとした青のほうが、彼の心のうちをあらわしているのかもしれません。

author:トモヤムクン, category:-, 17:24
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