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小さな映画館 第129幕

「紙の月」

「スパルタカス」

「孫文の義士団」

「キング・コング」

「グリーン・ランタン」

 

「紙の月」

宮沢りえ 池松壮亮 小林聡美主演 吉田大八監督

 

【あらすじ】

バブル崩壊後の1994年、梨花は夫とふたりで暮らしており、普段は銀行の契約社員として働いていた。しかし夫との関係は希薄なものになっていき、ある日顧客の孫である光太と惹かれ合い、恋に落ちていく。充たされない日々を過ごしていた彼女にとって光太との関係を続けていきたかった。ある日光太に借金があることを知った梨花は、顧客の新規定期預金の200万円を横領してしまう。後で返せばいいと考える梨花だが、次第に彼女の人生の歯車が狂いだす。

 

【感想】

素晴らしい映画だった。というよりも邦画だって腐っちゃいないと証明してくれたような映画だ。

派手な演出はいらない、派手な演技もいらない。必要なものだけを最大限に活用された映画。

 

梨花の派手じゃなくとも仕事ぶりは上々だけども、夫との関係は淡泊なものになっている。

そんな彼女に満たされない隙ができたところに、年下の光太と出会う。

ここまでは満たされない空虚なものを埋めるだけの、ありきたりな不倫だった。

だけども、ここでうまく活かされたのはミッション系の学校に行っていたという設定。

「受けるより与えるほうが幸いである」というシスターの言葉。

この言葉に彼女は突き動かされ、光太にお金を与えてあげるということが最大の善意となってしまったんです。

しかし光太は感謝するどころか、どんどん自堕落になっていき、別の女を作ってしまう。

梨花は「与えるほうが幸い」だと思っていたのに、まったく別の感情が沸き起こってしまい、とうとう行き詰ってしまいます。

自分のすべてはニセモノの月、「紙の月」を見ていたわけです。

 

梨花は逃亡し、外国へ行きます。

リンゴが転がり、店主に返そうとすると、そこにいたのはかつて戦場で行方不明になっていた男の子と同じ傷を持った男だった。

そう、あの慈善の募金ですら、単に同情を集めるか、金を集めるかに過ぎないものだったんです。

かつての男の子のリンゴを梨花は食らいつきます。自分が善意で与えていたものを、最終的には自分の偽善だということがわかってしまう。

そして彼女は逃げとおす日々になるところで終わります。

 

宮沢りえの清楚な感じと狂気と艶美さのある演技、そして吉田監督の演出の素晴らしさ。

本当にいい映画でした。

 

「スパルタカス」

カーク・ダグラス ジーン・シモンズ主演 スタンリー・キューブリック監督

 

【あらすじ】

共和制ローマ時代、ポエニ戦争後安価な奴隷の数は増えていた。スパルタカスも奴隷のひとりで、ある日倒れた奴隷を助けようとし、衛兵に反抗したことで刑に処せられたが、剣闘士養成所主のバダイアタスに見いだされ、養成所に連れていかれることに。

スパルタカスは何度も屈辱を味わったが、そこで働くヴァリニアという女奴隷に恋をする。

ある日クラッススがやってきて、スパルタカスはレティアリィの黒人剣士と闘うことに。しかし黒人剣士はスパルタカスにとどめを刺さず、その槍でクラッススを討とうとし、逆に殺されてしまった。

その翌日想い人であるヴァリニアが売られていく姿を目撃したスパルタカスは怒りにまかせてマーセラスに襲い掛かり、他の剣闘士と協力して養成所を制圧する。

 

【感想】

ローマ史は長いだけあって、本当にハイライトシーンが多いんです。ポエニ戦争でのハンニバルとスキピオの対峙もそうでしょう。そしてユリウス・カエサルの存在などいろいろありますが、今回はその両者の間の話です。

ポエニ戦争後、領地を拡大したローマ帝国は多くの奴隷を手に入れることができました。もちろん数があると、奴隷の値段というのは下がっていきます。そうなってくると人間としての扱いでさえしてもらえなくなってくるんです。

元々正義感の強かったスパルタカスはそうした奴隷の女性と主人の間にできた子どもでした。

彼は仲間を庇ったことで刑に処せられますが、剣闘士養成所に送られることになります。しかしそこでも決して人として扱われませんでした。見世物として扱われたのです。

貴族たちはワインを片手にふんぞり返り、奴隷たちは命をかけて無意味な殺しをやり合う。

しかし黒人奴隷の男がローマ帝国に反旗を翻したのを見て、スパルタカスは変わっていきます。

 

奴隷たちは自由を求め、各地の奴隷たちを集めていくと、なんと7万もの人々が集まりました。

彼らは死を恐れませんでした。いや恐れたのかもしれません。しかし貴族たちのように失うものがなかったのです。

あるのは自由のための闘い。ただそれだけです。

最終的にはクラッスス指揮のもとに敗れてしまい、スパルタカスは囚われてしまいます。

しかしみなが一斉に「私がスパルタカスだ!」叫んで立ち上がるシーンは名場面ですね。のちにマルクスたちがプロレタリアートとして素晴らしい人物だ、と評したように、もしかしたら一部の人から嫌悪感をあらわされるかもしれませんけども(苦笑)それでも自由のために、もとい人間の尊厳のために立ち上がる彼らの姿には涙がでます。

磔にされて死にゆくスパルタカスですが、彼の妻と子は解放され、自由の意志は受け継がれていく、という終わり方です。

 

いやー、このクラッススって、妙に人気がないんですよね(苦笑)

後に三頭政治を行うんですけど、カエサルほどカリスマ性もないし、ポンペイウスほど功績がない。

クラッススは金だけある、そんなイメージがずっとありました。

この映画でもどちらかといえばヒールですね。

 

余談ですけど、監督はあのキューブリックです。しかし何やら製作の時自分の意見は殆ど通らず、「雇われ監督」状態だったのが気に入らず、この映画は自分の映画ではない、とキューブリックは言ったそうな。でもこの映画は決してキューブリックの汚点になるような映画ではなく、それどころか傑作のひとつでもいい映画です。

 

「孫文の義士団」

ドニー・イェン  ワン・シュエチー主演 テディ・チャン監督

 

【あらすじ】

清王朝末期、中国では革命派と清朝廷の対立が激化していた。1906年、革命派のリーダーである孫文が香港入りし、同志たちと会合することが決定した。この情報をつかんだ清朝は大規模な暗殺団を香港に派遣する。

香港を拠点としていた革命派のチェンは大商人のリーとともに孫文護衛作戦を立てる。リーのもとには志を同じくする同志たちが集まる。しかし孫文の影武者を決めるくじ引きで、リーの息子チョングワンが当たりくじを引いてしまう。

 

【感想】

20世紀というのは様々な国で革命が起きました。打倒帝国主義です。フランスに始まり、中国、ロシアと民衆の力がどんどん広がっていきました。

日本もある意味では革命によって幕府を打倒しますが、朝廷、つまり天皇を中心とした国造りをした点では他の国とは赴きが違いますが、革命に血を流した人々の志というのは同じなのかもしれません。

 

孫文は日本でも有名ですよね。孫文と交流を持つ日本人も多く、日本に滞在していたこともありますし、あの南方熊楠とも奇妙な縁があったりします。

清王朝末期はとにかく国力が衰退しており、民衆の不満が高まっていました。

そんな時封建制から脱し、民主主義を唱えたのが孫文です。

具体的には彼は「三民主義」を唱えました。民族の回復、民国の建立、土地の平等性です。

当然のことながら腐敗した帝国に対して、憤り募らせ、革命に力を入れる人々は増えていきます。

 

しかし腐っても朝廷というのは権力を離そうとしません。

この映画はそうした孫文の活動を背景とした、一種のアクション映画です。

正直なところ高尚な思想の文句もありませんし、民主主義とはー、というような説教的なものもありません。

あるのは孫文、そして民主主義のために戦う人たちの勇姿です。

登場人物は革命のために血を流し、革命のために死んでいきます。

革命というのは生易しいものではありません。

血が流れるんです。

 

最終的にはご承知の通り辛亥革命は成功します。

中華民国となりますが、中華人民共和国と対立してしまい、今の台湾と中国になっています。

 

異論はあるでしょうけど、僕は帝国主義後の民主主義、社会主義、共産主義の台頭は仕方ないと思っています。

日本は民主主義国家で、反共産主義国家ではありますが、必ずしも共産主義が悪というわけではありません。

要は共産主義を悪用する人間こそが悪なんです。

これからまた新しい帝国ができるかもしれませんが、民主主義を信じて進んでいきたいものです。

 

「キングコング」

フェイ・レイ ブルース・キャボット主演 メリアン・C・クーパー アーネスト・B・シェードザック監督

 

【あらすじ】

映画監督のカールは新しい映画を撮影するために、地図にのっていない「髑髏島」へ向かう。女優のアンは主演に抜擢されたことで喜び、船員のジャックとの関係も急接近する。

島にたどり着いたカールたちは、原住民の不思議な儀式に出くわす。なんでもそれはキング・コングに捧げる女性を選んでいるものだった。

 

【感想】

今観てしまえばチープなんですけど、やはり1933年ということを考えると感服してしまいます。

キング・コングというより、絶滅したはずの恐竜たちが存在する島からまず異様な感じです。

そして原住民たちの純粋さと凶暴性、対照的な現代人の欲にまみれた思惑。ここら辺の対比が良かったですね。

最終的にカールは儲かると思って危険なキング・コングをわざわざ持ち帰るんですから。

結局キング・コングが暴走し、人間の力で抑え込むことができましたが、これって結局戦争と同じなんです。

この映画は言ってしまえば第二次世界大戦前の映画です。アメリカは真珠湾攻撃があるまでは基本的に静観していましたけど、人間同士のエゴによって無益な血が流されるっていうことはきちんと提示でしていたんですよね。

 



「グリーン・ランタン」

ライアン・レイノルズ主演 マーティン・キャンベル監督

 

【あらすじ】

宇宙の平和を守るグリーン・ランタンに最大の危機が訪れる。伝説の戦士アビン・サーがかつて封じ込めたパララックスが封印を破り、復讐を開始した。パララックスに襲われたアビン・サーは致命傷を負ってしまう。彼は新しいメンバーを選ぶため地球に向かう。

一方地球ではテスト・パイロットのハル・ジョーダンは父親の事故のフラッシュバックが原因で、飛行機を墜落させてしまう。社長の娘であり恋人のキャロルに謹慎を言い渡されたハル。ある日彼は死にかけたアビン・サーと出会うことで運命が変わっていく。

 

【感想】

はっきり言おう、

 

みんなもうちょっと驚け!!

 

普通変な能力を持った人間が現れたら怖いでしょ!

普通に英雄として受け入れてるこの世界!!

寛容すぎる!

恋人も!!

 

あと主人公のハル!!

めっちゃ普通…。

ライアン・レイノルズ以外特徴のない主人公。

父親の事故のトラウマがあるけど、社長の娘と幼馴染で恋人、人生安泰な感じ。親友もいて、かなり恵まれてる。

一方のライバルは父親からも見放され、劣等感のかたまり。なのに敵役としては結局微妙な終わり方に。

 

そして、なぜハルを選んだのか。

人間の弱さを克服力があるから!!

以上!!

 

うーんベタな話は結構なんだけど、ベタでもあんまし面白みがなかったのが残念。

CGを屈指した敵との闘いも、なんだか緊張感に欠けるし。

 

author:トモヤムクン, category:-, 17:50
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小さな映画館 第128幕

「ダンス・ウィズ・ウルブズ」

「プリティ・ウーマン」

「28日後…」

「ブロークンシティ」

「ハンナ」

 

「ダンス・ウィズ・ウルブズ」

ケビン・コスナー主演・監督

 

【あらすじ】

南北戦争時代右足を負傷したジョンは自暴自棄になり、敵の銃弾の嵐の前を走り抜けた。しかしそれがかえって囮となり、味方の軍勢は形勢逆転した。そのことで栄誉を与えられたジョンは行きたい任務地を尋ねられ、かねてから見たいと思っていた、フロンティアを熱望する。誰もいな砦で暮らしていたジョン。しかしそこに現れたスー族というインディアンの部族だった。言葉も通じず、敵対していた者同士だが、彼らの間に不思議な友情が芽生えていく。

 

【感想】

アメリカという国の成り立ちはシンプルなようでいて、非常に複雑です。

南北戦争というのはCivil War、つまり内戦なんです。同じ国民同士が争っていたんですね。

南北戦争はじきに終息し、アメリカはひとつの国になっていきます。

元々イギリスをはじめとした、ヨーロッパ移民で形成された国ですから、白人が圧倒的に多いです。そして白人たちは奴隷のためにアフリカから黒人を連れてきて、非人道的な扱いをします。その後この黒人をめぐって南北で対立が起こるわけですが、それ以前に忘れられている部分があります。

それこそ元々アメリカにいた、ネイティヴ・アメリカンです。別名インディアンと言いますけど、今ではインディアンは当然のようにインド人のことになっています。

そんなネイティヴ・アメリカンである彼らは勝手にやってきた白人たちによって滅ぼされていきます。

この映画では白人が彼らのコミュニティに入り、改めて自分たちの横暴さ、ネイティヴ・アメリカンの純粋さを知っていく過程が描かれます。

 

ジョンが言うようにスー族はアメリカ人が憎くて殺すだけではありません。自分たちの土地を護るために戦うんです。当然ですよね?元々自分たちが住んでいた土地です。それを勝手に荒らされて出ていかないと殺されるなんて、理不尽この上ない。

だけど当時の白人にはそれは通用しません。

白人たちが土地の開拓を目的としているのなら、ネイティヴ・アメリカンの戦いはそんな彼らから身を護るためのものなんです。つまり白人たちが何か悪いことをしなければ、彼らも何もしないんです。

ジョンはスー族と触れ合い、仲間になることで理解していきました。

原始的な暮らしをする彼らは、アメリカ人から見れば野蛮で非文明的かもしれませんが、純粋さを残した人間的な民族なんです。

文明の発達したアメリカ人は対立し、欲深くなり、鬱になり、栄誉を求めたりします。

 

スー族は白人の娘でもわが子のように愛おしく育てました。ここら辺は人間の普遍的なものかもしれません。

子どもや家族を大切にするというのは、人間の無意識の中にあるものでしょう。

 

現代には利己的な思想が蔓延しています。

資本主義の発達は人間の心を蝕んでいき、鬱屈としたものを残していきます。そのはけ口のように人間はどんどん何かを壊そうとします。

人間は一度でも、欲や物から離れ、自然に触れ合い、かえってみるべきなんじゃないか。

この映画からそう考えます。

 

ケヴィン・コスナーは一時期スランプもありましたが、やっぱりいい俳優ですよね。

 

「プリティ・ウーマン」

リチャード・ギア ジュリア・ロバーツ主演 ゲイリー・マーシャル監督

 

【あらすじ】

実業家のエドワードは友人のホームパーティに招待されていたが、急用で抜け出さなければならなかった。しかし慣れない車に乗ったエドワードは操作に手こずり、挙句道に迷ってしまう。車を止めるとコールガールのビビアンに声を掛けられる。ホテルまで運転してもらうことになったエドワードは、彼女に一日話し相手にほしいと求める。

 

【感想】

この映画を思い起こすと、ロイ・オービソンの美しい声が聴こえますね。

 

実業家とコールガール、つまり売春婦ですね。当然のことながら、ホテルや店での待遇を見るように、人々の対応の違いからどういう風に考えられているかがわかります。

コールガールの彼女たちもそんな不当な扱いにも別に気にしていません。

ビビアンも同じでした。

しかしエドワードと出会い、体だけじゃなく本気で恋をしてから変わっていきました。

おもしろいですよね。あれだけ金目当てだった彼女が、最後は金での関係を拒むんですから。

エドワードも同じです。流動的な金と仕事に追われ、余裕のない毎日。

そんな時に出会ったビビアンは奔放で、自由な女性。

なにものにも囚われない彼女にどんどん惹かれていきます。

 

それとこの映画の見どころは軽い服装だったビビアンの姿が変わっていく過程ですね。

どんどん美しく、飾らない彼女になっていく、まさにプリティ・ウーマン。

 

「28日後…」

キリアン・マーフィ クリストファー・エクルストン主演 ダニー・ボイル監督

 

【あらすじ】

メッセンジャーのジムは昏睡状態から目覚めると、ロンドンはゴーストタウン化していた。教会へ行ってみると、突然神父が襲い掛かってきた。窮地に陥ったジムはマークとセリーナに助けられる。ジムはここでようやく人間たちがある感染症によって凶暴化していると知る。そんな時マークは感染してしまい、セリーナは彼を殺す。ジムとセリーナは感染者たちから逃げている時、ある親子に助けられる。

 

【感想】

ハリウッドのようなド派手な感じではないものの、少しダークな色合いで、特に多くの銃撃戦がないからこそ、リアルな恐怖を感じました。

ここでは明確にゾンビとは言われてないんですよね。あくまで凶暴化して、理性を失った人間たちです。それって怖くないですか?

だって人間と動物の境ってどこにあるかっていうと、「理性」なんです。だけどこれを取り払ってしまえば、人間は動物的な存在になってしまいます。

ジムとセリーナ、ハンナは愛しい人を亡くしながらも、懸命にサバイバルをします。終盤では軍隊の人間たちに匿われたかと思いきや、彼らの目的は「性欲の対象」でした。そうなんです、この映画、最終的には人間が怖いんだっていうメッセージを送ってるんです。それも閉塞的な場所に閉じ込められた人間の欲望が。

それもね、これは人種差別というより、人間って同じ色の肌の人間を基本的には好むみたいなんだけども、軍人たちは黒人のセリーナだろうと、幼いハンナだろうと女であればなんでもいいというように乱暴を働こうとするわけです。

そして軍人以上に恐ろしい、ジムの覚醒。

相手は素人じゃないわけですよ。単なるメッセンジャーでずっと病院で昏睡していた人間なのに、急激に強くなる(笑)というより冷静になれたのが救いだったのかもしれない。

セリーナとハンナという護るべきものがあるから。

 

最後は飛行機に救出されただろう、というハッピーエンドに。

 

「ブロークンシティ」

マーク・ウォールバーグ ラッセル・クロウ主演 アレン・ヒューズ監督

 

【あらすじ】

市長選挙を目前に控えたニューヨーク。元ニューヨーク市警の刑事であり、探偵をしているビリーのもとに現職市長のホステラーから妻の浮気調査を依頼される。

ホステラーの妻キャサリンの浮気相手は夫の対立候補の選挙参謀だった。キャサリンはビリーに近づき、これは単なる浮気調査ではなく、夫には裏があると忠告するが、ビリーはホステラーにすべてを報告するが…。

 

【感想】

絵面は結構地味です。話にも真新しさはありませんが、淡々としていて見ごたえはありました。

なんというか一言でいえばビリーの正義感を描いた映画です。

ビリーは無実の黒人を銃殺してしまった事実を突きつけられ、悪党との交換条件を突き付けられましたが、結局彼は自身の正義を貫いたわけです。

ビリーは贖罪のために刑務所に入るところで終わるわけなんですけど、これって誰が救われないって、元カノのナタリー一家です。ナタリーの両親は心底ビリーに感謝していたからこそ、この終わり方があまりにも可哀想で。

ナタリーとの関係も結局はそうした事件で繋がっていただけだ、であっさり済まされ、結局最後は探偵事務所の女の子といい感じで終わるという。

凄い駄作というわけでもなく、かといって佳作とも言えない、なんとも微妙な映画でした。

っていうかラッセル・クロウの最初から悪役感が凄かった(笑)

 

「ハンナ」

シアーシャ・ローナン主演 ジョー・ライト監督

 

【あらすじ】

ハンナはフィンランドの人里離れた場所で父とふたりで暮らしていた。日々サバイバル生活をし、父親に教え込まれた勉学に励む。父から渡されたスイッチを押すと、CIAのマリッサはそれを探知する。ハンナは囚われ、拉致される。ハンナは目を覚ますと、マリッサと呼ばれる女と泣きじゃくりながら抱擁するが、すぐに彼女を殺し、施設から逃走する。

 

【感想】

おお、なんというか、おお。

すっごく面白いというわけじゃないんだけども、平均点でつくられた映画という感じ。

元諜報員の父親に仕込まれた、ある意味で父親の道具として育てられたハンナが逃亡のさなか、ひと時の友情や愛情を見出す。だけどもそうした普通の生活は彼女には送れない、といった内容です。

ハンナ自身はエリックの子どもでもなんでもなく、遺伝子実験でつくられた子ども。それも最強の兵士として育てるために。

ハンナは結局自身の意思で生きていくことを選ぶんですけど、意外とあっさりとした結末なんですよね。

だからこそ続編が欲しいんです。

そのような実験があったからこそ、どういう風に今後成長していくのか、とか。

author:トモヤムクン, category:-, 18:39
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小さな映画館 第127幕

「神様メール」

「ディア・ブラザー」

「シリアナ」

「バルバロッサ」

「コンスタンティン」

 

「神様メール」

ピリ・グロイン主演 ジャコ・ヴァン・ドルマル監督

 

【あらすじ】

ベルギーのブリュッセル。とあるアパートで家族と暮らす神は、慈悲深いイメージとは程遠い人物だった。自室にあるパソコンを使って、いたずらに災害を引き起こしたり、神は人を使って楽しんでいた。そんな父親に怒りを覚えた娘のエラは全人類に自分たちの寿命を知らせるメールを送る。彼女は人間界におりたち、新・新約聖書を完成させようとしていた。

 

【感想】

時に「神は愛だ」「神は怒りだ」「神は嫉妬だ」「神は慈悲深い!」と信仰者たちは伝えてきました。

しかしどうでしょう?ほとんどの争いの発端となるのは宗教関係です。

どんなに讃えようとも、貶そうとも、神というのは常に沈黙しています。

 

今回の映画ではそんな神が滑稽なおじさんとして描かれています。

気まぐれに人間を殺し、気まぐれに災害をもたらす。

しかしエラは人類に余命を知らせることで、人間がどういう生き方をするかを見極めにいきました。

 

中には人を殺そうとする人間がいたり、余命が余りあるものだから無謀なことに挑戦したりする男がいたり。

エラはそんな中から新しい使徒を捜します。

文字を書くことができないけど、絵で聖書を書いていくホームレスのおじさん。性的妄想にはまってしまうおじさん。ゴリラに一目ぼれしてしまうおばさん。人を殺したいと願っているおじさん。そして女の子になりたい男の子。

最後はエラの母によって素敵な世界に彩られます。

 

男が妊娠したり、女の子になれたり、ゴリラとの間に子どもができたりと世界のルールが書き換えられたんです。

そうです、我々は「男ならこうしなければならない」「女はこうしなければならない」という勝手なルールを、自分たちで設けているだけなんです。

この映画ではそうした障害をすべて取っ払った世界を表現しています。

 

神様に支配されず、自分たちの思うように生きていく、窮屈ではない世界。

なんとも素晴らしいブラック・ユーモア満載の映画でした。

 

「ディア・ブラザー」

ヒラリー・スワンク サム・ロックウェル主演 トニー・ゴールドウィン監督

 

【あらすじ】

ベティと兄のケニーは幼い頃から仲が良かった。ある日ケニーは殺人の容疑で捕まってしまう。彼は冤罪を訴えるが、無情にも終身刑が言い渡される。ベティは兄を救おうと、自らが弁護士になる道を選ぶ。

 

【感想】

事件というのはいろいろな面を持っています。被害者遺族の面、加害者やその家族の面、そして司法や警察の面。

今回は加害者の家族が無実の兄のケニーを救おうと奮起する妹の物語です。

兄を救うために弁護士になるなんて、出来過ぎなようで実話なんですから面白いですよね。

しかしそれだけ兄を慕っていた証拠でしょう。

 

ただこの映画で残念なのは兄と妹の関係を重視し過ぎたあまり、その他が疎かになってしまっていることです。

もちろん現実にドラマ性を求めるのは酷ですが、あまりにも淡々と進んで終わってしまいました。

ただひとつ「死刑のある州だったら、とっくに死刑になっていた」というベティのセリフの重みは映画の醍醐味だと思います。

今でももしかしたら無実の人間が死刑台へ送られているかもしれません。

 

さて確かに兄の冤罪が晴れて終わりましたけど、実はもっと重要なのが他の面の話です。

そう、この映画を観て素直に喜べないのは、真犯人が見つかっていないということです。つまり被害者遺族の面からすれば、終わったはずの捜査が覆され、憎しみの対象だった人物が別にいるとわかったことです。

そうした兄の冤罪を晴らすことができたという美談の裏には、実に酷な現実を受け入れなければならない人たちがいるということです。

たしかにDNA技術の進歩で数々の冤罪は晴れましたが、真犯人に届いていないという現実に悲壮感がありましたね。

 

「シリアナ」

ジョージ・クルーニー マット・デイモン主演 スティーヴン・ギャガン監督

 

【あらすじ】

CIAのボブは仕事から離れる決意をし、最後の任務を終えたと思った矢先、アラブ某国の王位継承者の暗殺の仕事を任せられる。ところがその国では第一王位継承者が大手石油企業との契約を打ち切ったため、第二王子を継承者にしようという案を王に囁く者がいた。気鋭のエネルギー・アナリストのブライアンだった。そんな王継承争いの陰で、貧しい青年が職を失い、過激思想に取り込まれていく。

 

【感想】

はっきりいえば、面白いか面白くないかは人物相関図、そして石油利権や王位継承関係がどうなってるか把握して観ないといけません。

まあ簡単に言えば某国の王子はアメリカから脱して、ブライアンたちエネルギー専門家に助言をしてもらいつつ、自分たちでやっていこうとしたわけです。だけどそれを許さないのがアメリカの石油メジャーや利権者たち。そしてアメリカの国益のためにCIAが王子を暗殺しようとするわけです。

 

シリアナというのは架空の国ですが、これはイランとイラクがひとつの国になったようなものです。

 

少しイランとイラクの話をしますと、イラクという国はアメリカの援助を借りてイランに侵攻しました。もちろんアメリカの石油利権のためです。イランとアメリカは元々パートナーのような関係でしたが、時の政権がイラン革命によって倒れると、反米政権が誕生してしまったのです。だからイラクを使って、イランの政権を倒そうとしました。

両国の戦争は長引き、イラクの経済はガタガタになってしまいました。

そんな時にフセイン大統領がアメリカの力を借りて、イランは停戦に合意しました。

 

この経過を見ただけでも、アメリカがいかに中東に絡んでるかわかるでしょ?

この映画でもアメリカは自国の利益、いや石油利権のために動いていることがわかります。

各々のエゴが渦巻くなか、ここで感心したのがある貧しい青年を描いていたことです。

彼はそうした大きな企みの中で働き口を失い、過激な信仰心に傾倒していきます。

そして大きな自爆テロを起こしてしまう。

自爆テロは非難されるべきことです。しかしそこに至ったのは前提にアメリカや大企業のエゴがあったことも一因にあります。

 

それにしてもCIAに扮したジョージ・クルーニーの演技はよかったですね。

端正な彼の顔立ちを隠すあのいでたちは素晴らしかったです。

 

「バルバロッサ」

ルトガー・ハウアー ラズ・デガン主演 レンツォ・マルチネリ監督

 

【あらすじ】

神聖ローマ帝国皇帝であり、バルバロッサの異名を持つフリードリヒ1世はイタリア全土の支配を目指していた。支配されたミラノをはじめ、北イタリアの都市には重税が課せられていく。そんな中でミラノの鍛冶屋の息子アルベルトはかつて、猪に殺されそうになっていた皇帝を助けていた過去があり、そのさいに短剣をもらっていた。そんなアルベルトはフリードリヒ1世に挑むために、同志を募る。

 

【感想】

バルバロッサことフリードリヒ1世は今なお有名な皇帝のひとりです。とにかく有能な皇帝として描かれることが多い反面、失敗した面もありました。それが今回の映画で描かれた「レニャーノの戦い」でした。

ただ神聖ローマ帝国にとっては有能な皇帝でも、やはり自由や故郷、そして誇りを奪われてしまう人たちもいるわけです。

 

今回は鍛冶屋のアルベルト率いる死の軍団、つまり「ロンバルディア同盟」の話です。

そうなんです。

「バルバロッサ」という邦題なんですけど、フリードリヒ1世が主人公じゃないんです!!

しかも物語にすごく関わってくるかと思えば、ぶっちゃけ存在感は薄いです。

幼少時にあって、助けてしまったのが運命の分かれ道、みたいなストーリーにしたかったんだと思うんですけど、あんまし出てこないんですよ。

一方の死の軍団も、とにかく奴隷になるくらいなら「自由を!」と叫びますが、なんか気合で頑張ってますって感じの展開ばかり。

もちろん戦の時は作戦がいろいろあってよかったんですけどね。

あとマジものの予言者の娘の存在はいるのだろうか、とちょいと疑問。

 

あと全体的に中途半端なんです。

たしかにレニャーノの戦いはフリードリヒ1世の略歴の中でも、大敗を喫した戦ですが、結局どっちの側で書きたかったのかがわかりにくい。

フリードリヒ1世の英雄的な面もあれば、そうした野望のなかで虐げられる人々もいるということが書きたかったんだと思うけど、肝心のバルバロッサに強い野望を感じない。とにかく演出の面では。それが残念でならない。

この映画はもっとフリードリヒ1世を掘り下げて、2面的に描いたほうがもっと面白い映画になったと思います。

 

 

「コンスタンティン」

キアヌ・リーヴス レイチェル・ワイズ主演 フランシス・ローレンス監督

 

【あらすじ】

人間にとりついた悪魔を地獄へ戻すジョン。彼は肺がんを患い余命を宣告されてしまう。

そんな時双子の姉妹を亡くした刑事アンジェラと出会う。

天国と地獄の間で何か異変が起きていると感じたジョンは…。

 

【感想】

なんだろう、面白いんだけど、始終シュール・ギャグに感じてしまった(笑)

強い霊感を持った男が一時自殺を図るも、地獄の恐ろしさを身をもって知り、天国へ行けるよう悪魔たちを地獄へ返していく。そんな時にアンジェラの体を使って、ルシファーの息子マモンを復活させようとするというお話です。

実は聖書だったり、黙示録だったり読んでいたら面白いんでしょうけど、もしそうした予備知識がないと滑稽に映るというなかなか難しい映画です。

 

さて結局は黒幕がガブリエルだったわけです。

ガブリエルといえば、天使のひとりとして有名ですよね。

「人間の気高さは、恐怖を目の当たりにしなければあらわれない」

という理由で、マモンをよみがえらせようとします。

つまり人間というのは平時に生きている時は醜く、信仰心も薄いんです。恐怖に直面した時、人間の本心が出てくるわけです。

ガブリエルはルシファーに焼かれて人間になってしまいますが、人間の痛みを知るきっかけにもなりました。

結局ジョンは自己犠牲の精神でイザベルを天国に召させようとし、ジョンもまた天国へ行こうとしますが、結局ジョンが欲しいルシファーによって生き返され、なおかつガンも完治した状態で戻ってきます。

 

おもしろいかどうかは、賛否のわかれる映画です。

author:トモヤムクン, category:-, 14:02
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小さな映画館 特別編スターウォーズ 最後のジェダイ

「スターウォーズ/最後のジェダイ」

 

主演 マーク・ハミル キャリー・フィッシャー アダム・ドライバー ディジー・リドリー ジョン・ボイエガ主演

監督 ライアン・ジョンソン

 

【あらすじ】

レイア・オーガナ将軍率いるレジスタンスの基地にファースト・オーダーの艦隊が奇襲してくる。ポーはレイアの戻れという指令に従わず降格してしまう。

 

孤島で隠居していたルークと出会ったレイ。レイはルークをレジスタンスのもとへ連れて行こうとするが、彼はそれを無視する。レイはそれでもしぶとく彼に食らいつき、しぶしぶジェダイとは何かを享受することに。

 

「なぜファーストオーダーが自分たちを追跡できるのか」という理由を突き止めたポーたち。フィンとローズは極秘にシールドを破ることのできる男を追ってある惑星へ赴く。

 

【感想】

本当に面白かった!

1,2,3なんかなかったことにしたいk(ry

 

正直な話、スターウォーズというのは、

スカイウォーカー家のゴタゴタに巻き込まれる人々の物語です。

 

というのは半分冗談で、今回はレイとルーク、そしてレイとカイロ・レン、フィンとローズの物語が平行して流れていたんですけど、それぞれが最後に集結するのは見事でした。

とにかく人間関係が濃厚なんです。

 

まずルークはカイロ・レンの中にある恐ろしい闇の力に対して本能的に殺そうとしてしまったわけです。もちろん留まったわけですが、カイロ・レンは当然自分は殺されるものだと思い反撃します。するとさらにカイロ・レンの闇の力が倍増していくわけです。

レイもまた同じようにカイロ・レンと同じくらいのフォースを持っていました。

カイロ・レンの育成に失敗したルークはジェダイの強大な光と闇の力を恐れ、レイを同じ道に導きたくなく、教えることを最初は拒みます。

レイとカイロ・レンはまるで精神的双子のようで、ふたりはフォースによって意思の疎通をとることができました。

レイはカイロ・レンがこちら側だと思って、なんとか彼を助けようとします。

一方のルークはマスター・ヨーダの言葉により、ジェダイの書などを焼かれてしまい、最後のジェダイであるレイに希望を託します。

 

さてもう一方はレジスタンスとファーストオーダーの攻防。

姉を失ったばかりの整備士ローズとフィンは互いに協力し合って、ある惑星へ赴きます。

このローズという新しいキャラクターですが、どう見てもアジア系なんですよね。

もちろん悪いわけじゃないんです。

ただこういうところで、最近の映画界では人種差別をなくそうと、あらゆる人種を役につかせています。

人種だけでなく、性差もなくそうとしていて、レジスタンスの上層部も女性が多く、今回も新しい女性キャラクターが出てきました。

こういうところはまんべんなく平等を出そうとしています。

いいか悪いかではないんです。問題はなんでもバランスですよね。

 

さてそんなフィンたちが行きついたのは金持ちばかりが集まる惑星です。

ここで最大のテーマのひとつが垣間見えました。

彼らがどうして金持ちか。

それはファーストオーダーにもレジスタンスにも武器を売っているからです。

つまり戦争を商売にした人たちなんです。

こういう人たちは実際にいるんです。

死の商人。自分たちさえ儲かればいいと考えているエゴイズムの人々です。

結局見つけ出したのは金さえ払えば敵だろうと味方だろうと関係のない男でした。

最後には裏切ったわけですが、彼が後々どういう風に出てくるか期待しています。

 

一方カイロ・レンはスノークを倒し、新しい秩序をレイとともに創り出そうとしますが、レイはあくまで正義の側でいようとします。

ここでふたりは決別してしまうわけです。

ちょっと肩透かしを食らったのは、レイの両親ってジェダイに繋がるような家系の人たちかと思ったら、どうやらそうでもない、割かしクズな親だったようで。

レイはわかっていながらも、どこかハン・ソロやルークが父親だったら、と願望を抱いていたわけです。

 

最終場面は怒り狂ったカイロ・レンが自らが新しい提督となり、レジスタンスを残らず全滅させようとします。

絶体絶命!そんな時に表れたのが、

ルーク!!

このシーンめっちゃかっこよかったです!!

ちょっとダメダメなジェダイからようやくかつての主人公らしさを取り戻してきました。

一斉攻撃を浴びせられた時、あっけないと思ったんですけど、結局あれはルークの最後の力を振り絞った姿であり、カイロ・レンの前に最後の忠告をしに来たんです。

「最後のジェダイは私ではない」

と。

そう、もちろんは希望の光はレイです。

 

そしてルークは力尽き、苦しむことなく、あの世へ行きます。

 

観終わって思いました。

 

これってまだ物語の序盤じゃねーか!!

 

そうなんです。

全然序盤なんです。

ようやく物語が動いた、って感じです。

レジスタンスは壊滅状態になりましたけど、それでもまだ未来の光が残っているというメッセージとともに終わってますしね。

カイロ・レンも新しく組織を立て直して、強大になっていくでしょう。

だから次のエピソードは数年後とかでしょうか?

 

【ちょっとした恋愛模様】

ちょこちょこ出てくるのが、恋愛関係ですね。

レイとフィンは友情関係と位置づけています。

カイロ・レンとレイはある意味で同じ痛みを知る理解者同士ですが、信念の違いから反発。

しかしフィンに恋する女性が現れました。それが命をかけても彼を守ったローズです。

アジア系の、本当に地味な女性なんですけど、ひたむきなところには好感を持てましたね。

最後にフィンがローズに優しくしている姿を、なんとも複雑そうに見ているレイがいましたから、今後もいろいろありそうです。

 

それにしてもエンドロールには泣かされました。

 

In loving memory of  our princess Carrie Fisher(愛すべき我々の姫、キャリー・フィッシャーへ捧げる)

 

レイアとしても本当に最高の作品でした。

author:トモヤムクン, category:-, 19:49
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小さな映画館 第126幕

「鳥」

「バード」

「シンプル・シモン」

「SPY/スパイ」

「渇き」

 

「鳥」

ティッピ・ヘドレン ロッド・テイラー主演 アルフレッド・ヒッチコック監督

 

【あらすじ】

メアリーはペットショップで弁護士のミッチと出会う。彼は妹の誕生日に「愛の鳥」を捜していた。ミッチに興味を持ったメアリーは彼を追って、彼の住むカリフォルニア州ボデガ・ベイへ向かう。そんな時船に乗っていたメアリーに一羽の鳥が襲ってきた。しかしそれは恐怖の序章に過ぎなかった。

 

【感想】

ヒッチコックの傑作といえば真っ先に出てくるのがこの映画でしょう。

人間に対するのは「鳥」という恐怖の対象とはまったくならないような生物を、恐怖としてもたらしたこの映画。

人間がいかに集団ヒステリー陥りやすいか。いかに人間は恐怖に対して無力か。

とにかくヒッチコックは鳥を通して心理的に人間の恐怖心を煽るような撮り方をしています。

 

象徴的なのは酒場(?)での話でしょう。そこにはメアリー「鳥は人類より前に存在する!」という鳥類が好きな平和主義者の老婆、「全滅させればいい」という男、聖書を唱えるだけの酔っぱらい。

しかし実際にその光景を目にすると、皆が恐怖に囚われてしまい、果てにはメラニーが来たせいだ、と言い始める始末。

人間というのは恐怖に対する「理由」を捜します。

つまり原因があるから、そうした結果になるのだという根拠がないと落ち着かないのです。

しかしこの映画では「なぜ鳥が人間を襲うのか」という問いに対する答えはありません。

そうなんです。理由なんてない、理不尽な恐怖こそが人間にとって非常に恐ろしいんです。

「鳥が人間を襲うはずがない!」という前提が、人間の勝手でどこかにあった証拠なのです。しかしそうした前提さえも覆してしまう、つまり「〜するはずがない」というのはないんです。

 

さて劇中にはいろいろな小道具がありました。

ひとつ「ラブ・バード」ですね。

キャシーが最後まで話さなかった「愛の鳥」です。

その理由は「この子に罪はない」というものでした。

これはキャシーの純粋さ、人間の純粋な愛がるという証拠でもあります。憎しみの裏返しです。キャシーはアニーを殺した鳥に恐怖を抱いても、「愛の鳥」まで恨むことはしませんでした。

 

母親は夫を失い不安の中、メアリーの勇敢さに最後は手を添えて讃えました。

家族に依存し、しかし不安に思っていた母親がメアリーを受け入れたのです。

 

ラストは人によっては釈然としないかもしれません。

もしかしたら何かの暗示では?と裏を読む人もいるでしょう。

しかしそれはヒッチコックにしかわからないことです。

映画の楽しみは様々な見方ができることです。

 

「バード」

フォレスト・ウィテカー主演 クリント・イーストウッド監督

 

【あらすじ】

40年代活躍した伝説的なサックス奏者チャーリー・パーカー。彼は一躍時の人となりながらも麻薬に溺れる日々だった。妻チャンとの間に娘ができるが、間もなく亡くなってしまう。どんどん薬にのまれていくチャーリー。

 

【感想】

ジャズが好きだからこの映画を観よう、イーストウッドの作品だから観よう、と思って観たのなら少しがっかりするかもしれません。

だけどチャーリー・パーカーという人が好きで、ビバップの時代が好きな人には好みに合うんじゃないでしょうか。

とにかくこの映画はチャーリーとチャンの夫婦、そして同年代のディジー・ガレスピーとのやりとり、バードに憧れながらも白人ゆえに苦労していくレッド・ロドニーなど、彼の周辺の話です。

とにかくイーストウッドがジャズが好きなんだ、とヒシヒシ伝わってきますよ。この映画では愛情をもってチャーリー・パーカーが描かれています。

 

ジャズ・マンはオシャレなイメージが人によってはあるかもしれませんが、元祖ロックンローラーというべきか、とにかく薬とは切ってはなせないような関係の人も多く、夭折するミュージシャンは多かったです。

チャーリーもそのひとりで、薬物から逃れることができず、大暴れをしたりしますが、反面非常に優しく、例えばチャンを労わったり、薬物依存になったロドニーを説得したりと好人物なんです。

しかし彼は演奏の素晴らしさと引き換えに、まるで命をけずるように体がボロボロになっていきます。

 

そして残酷な描写だったのは時代がロックンロールに移り変わり、サックスはすでに御用済みになってしまったシーンです。

あの時代の変貌がジャズの衰退とともにチャーリーの衰退をも意味しました。

 

天才的なトランぺッターでもあるディジー・ガレスピーのセリフも印象的ですね。

「俺は改革者だが、おまえは殉教者だ。白人は殉教者を好む。死んでも忘れられないだろう」

と。

確かにチャーリーはジャズに身を捧げた人間です。彼の伝説は未だに語り継がれています。もちろんディジーもですよ。

 

「シンプル・シモン」

ビル・スカルスガルド主演 アンドレアス・エーマン監督

 

【あらすじ】

アスペルガー症候群のシモンは人と関わることが苦手で、唯一兄のサムにだけは心を開いていた。しかしある日シモンが原因でサムは恋人と別れてしまう。兄を元気づけるべくシモンはサムにとっての最高の恋人を探すことに。

 

【感想】

コメディとラブロマンスとハートフルと、とにかく優しさに包まれた映画です。

日本ではようやく発達障害が認知されるようになってきました。しかしそれでもまだまだ一般的に浸透したとは言い難いです。

この映画はスウェーデンですが、欧米では比較的に発達障害は認知されています。当然のことながら欧米の医学から証明されていったんですから。

だからシモンのアスペルガーを世間は受け入れています。

しかしどこにいってもそうですが、例えアスペルガーとわかっていても、付き合いたくないと思う人もいます。

 

シモンはアスペルガーのために他人の感情を推し量ることができません。感情を見分けるのも、表情のみです。

だから人間の複雑な心境というものを理解するのに苦労します。

しかし兄のサムはシモンを受け入れ、相手をしてくれる人物です。彼にとって必要な存在です。

そんなサムを元気づけるために恋人を探しますが、彼のその実直で純粋な言動に、イェニファーは心惹かれていきます。

彼女は最初からアスペルガーの彼ではなく、シモンという彼を受け入れていました。

健常者と障害者は何かで区切られているのかもしれませんが、それは決して交わることのないものではありません。人と人の付き合いに、健常者も障害者もないんです。

 

兄のサムにとって報われた、とは言えないにしても、「物事は変化していくんだ」という言葉がよかったですね。

これはサム自身にも言っているし、何よりもイェニファーと出会って変わったシモンのことを指して言っています。

 

「SPY/スパイ」

メリッサ・マッカーシー ジェイソン・ステイサム ローズ・バーン ジュード・ロウ主演 ポール・フェイグ監督

 

【あらすじ】

CIAの内勤分析官スーザン・クーパーは同僚のファインのサポートをしていたが、任務のターゲットのレイナに殺されてしまう。スーザンは自分は身元がバレていないことから、レイナの追跡に立候補する。

 

【感想】

普通におもしろかった。というかメリッサ・マッカーシーのちょうどいい太い体型がコミカルな演出の味を出していました。

それにジェイソン・ステイサムはアドレナリンやメカニックなんかがすべてコメディに見えてしまうような、残念なエージェントの役でおもしろかったです。

テンポもよく、悪役も魅力的で、アクションもいい。内容自体は割とべたなんですけど、その王道な感じがまたいいんです。

 

なによりスーザン、強すぎだろ(笑)

いくら興奮してるからって、相手はプロなのに。

それにちょいちょい挟んでくる下ネタも、妙に下品じゃない(もちろん上品でもないけど)から、ところどころクスクス笑えました。

日本だと誰がやってくれるかなー、なんて想像して観るのもおもしろいですよ。

 

「渇き」

ソン・ガンホ キム・オクビン主演 パク・チャヌク監督

 

【あらすじ】

病人を看取ることしかできないことに無力感をおぼえた神父のサンヒョン。彼はある日自殺するようにワクチンの開発の実験台を申し出る。彼は吐血して死んでしまうが、奇跡が起きてよみがえる。以来彼は奇跡の神父として扱われるが、彼が欲していたのは人の血だった。そんな時幼馴染のガンウとその妻のテジュと出会う。テジュはどこか暗い目をしていたが、彼はどんどん心惹かれていく。

 

【感想】

正直ヴァンパイアの要素よりも、鬱屈した人間たちが解放されながらも、どこかで孤独を感じてる官能的な部分が全面に出ていました。

よくあるヴァンパイアに恋しちゃいました、というよりも、血を欲するけど神父として人間を殺すことができない葛藤、そしてテジュのすべてを壊してしまいたい欲望が入り乱れた感じの、少し暗めの映画です。

だからセックスのシーンなんかは割と濃厚に描かれていたんですけども、それもまるで存在を証明するように、動物的なもの。

でもある日ついにサンヒョンは幼馴染を手にかけてしまいます。つまり人を殺さないという掟に背いたんです。

するとテジュもどこかで罪悪感をいだきますが、自身もヴァンパイアになることでまるで自暴自棄になっていきます。

 

でもセックスっていうのは抑圧された衝動や欲望でもあるんです。

神父というのは禁欲を護らないといけません。それがかえって彼を抑圧していたんです。

テジュも同じです。夫に対して、家族に対してつねに従順としなくてはいけないという抑圧から解き放たれたのです。

しかしその先にあるのは破滅でした。

サンヒョンは最後に自分が神父であることを否定するため、信者を犯して、聖職から抜け出しました。

テジュは家族を殺し、縛られるものから解き放たれました。

そして最後にふたりは赤い血のような太陽の光で消滅していったのです。

 

ただ少し冗長だった気がします。

もう少しテンポよくしたらよかったかもしれません。

author:トモヤムクン, category:-, 17:08
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