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小さな映画館 第126幕

「鳥」

「バード」

「シンプル・シモン」

「SPY/スパイ」

「渇き」

 

「鳥」

ティッピ・ヘドレン ロッド・テイラー主演 アルフレッド・ヒッチコック監督

 

【あらすじ】

メアリーはペットショップで弁護士のミッチと出会う。彼は妹の誕生日に「愛の鳥」を捜していた。ミッチに興味を持ったメアリーは彼を追って、彼の住むカリフォルニア州ボデガ・ベイへ向かう。そんな時船に乗っていたメアリーに一羽の鳥が襲ってきた。しかしそれは恐怖の序章に過ぎなかった。

 

【感想】

ヒッチコックの傑作といえば真っ先に出てくるのがこの映画でしょう。

人間に対するのは「鳥」という恐怖の対象とはまったくならないような生物を、恐怖としてもたらしたこの映画。

人間がいかに集団ヒステリー陥りやすいか。いかに人間は恐怖に対して無力か。

とにかくヒッチコックは鳥を通して心理的に人間の恐怖心を煽るような撮り方をしています。

 

象徴的なのは酒場(?)での話でしょう。そこにはメアリー「鳥は人類より前に存在する!」という鳥類が好きな平和主義者の老婆、「全滅させればいい」という男、聖書を唱えるだけの酔っぱらい。

しかし実際にその光景を目にすると、皆が恐怖に囚われてしまい、果てにはメラニーが来たせいだ、と言い始める始末。

人間というのは恐怖に対する「理由」を捜します。

つまり原因があるから、そうした結果になるのだという根拠がないと落ち着かないのです。

しかしこの映画では「なぜ鳥が人間を襲うのか」という問いに対する答えはありません。

そうなんです。理由なんてない、理不尽な恐怖こそが人間にとって非常に恐ろしいんです。

「鳥が人間を襲うはずがない!」という前提が、人間の勝手でどこかにあった証拠なのです。しかしそうした前提さえも覆してしまう、つまり「〜するはずがない」というのはないんです。

 

さて劇中にはいろいろな小道具がありました。

ひとつ「ラブ・バード」ですね。

キャシーが最後まで話さなかった「愛の鳥」です。

その理由は「この子に罪はない」というものでした。

これはキャシーの純粋さ、人間の純粋な愛がるという証拠でもあります。憎しみの裏返しです。キャシーはアニーを殺した鳥に恐怖を抱いても、「愛の鳥」まで恨むことはしませんでした。

 

母親は夫を失い不安の中、メアリーの勇敢さに最後は手を添えて讃えました。

家族に依存し、しかし不安に思っていた母親がメアリーを受け入れたのです。

 

ラストは人によっては釈然としないかもしれません。

もしかしたら何かの暗示では?と裏を読む人もいるでしょう。

しかしそれはヒッチコックにしかわからないことです。

映画の楽しみは様々な見方ができることです。

 

「バード」

フォレスト・ウィテカー主演 クリント・イーストウッド監督

 

【あらすじ】

40年代活躍した伝説的なサックス奏者チャーリー・パーカー。彼は一躍時の人となりながらも麻薬に溺れる日々だった。妻チャンとの間に娘ができるが、間もなく亡くなってしまう。どんどん薬にのまれていくチャーリー。

 

【感想】

ジャズが好きだからこの映画を観よう、イーストウッドの作品だから観よう、と思って観たのなら少しがっかりするかもしれません。

だけどチャーリー・パーカーという人が好きで、ビバップの時代が好きな人には好みに合うんじゃないでしょうか。

とにかくこの映画はチャーリーとチャンの夫婦、そして同年代のディジー・ガレスピーとのやりとり、バードに憧れながらも白人ゆえに苦労していくレッド・ロドニーなど、彼の周辺の話です。

とにかくイーストウッドがジャズが好きなんだ、とヒシヒシ伝わってきますよ。この映画では愛情をもってチャーリー・パーカーが描かれています。

 

ジャズ・マンはオシャレなイメージが人によってはあるかもしれませんが、元祖ロックンローラーというべきか、とにかく薬とは切ってはなせないような関係の人も多く、夭折するミュージシャンは多かったです。

チャーリーもそのひとりで、薬物から逃れることができず、大暴れをしたりしますが、反面非常に優しく、例えばチャンを労わったり、薬物依存になったロドニーを説得したりと好人物なんです。

しかし彼は演奏の素晴らしさと引き換えに、まるで命をけずるように体がボロボロになっていきます。

 

そして残酷な描写だったのは時代がロックンロールに移り変わり、サックスはすでに御用済みになってしまったシーンです。

あの時代の変貌がジャズの衰退とともにチャーリーの衰退をも意味しました。

 

天才的なトランぺッターでもあるディジー・ガレスピーのセリフも印象的ですね。

「俺は改革者だが、おまえは殉教者だ。白人は殉教者を好む。死んでも忘れられないだろう」

と。

確かにチャーリーはジャズに身を捧げた人間です。彼の伝説は未だに語り継がれています。もちろんディジーもですよ。

 

「シンプル・シモン」

ビル・スカルスガルド主演 アンドレアス・エーマン監督

 

【あらすじ】

アスペルガー症候群のシモンは人と関わることが苦手で、唯一兄のサムにだけは心を開いていた。しかしある日シモンが原因でサムは恋人と別れてしまう。兄を元気づけるべくシモンはサムにとっての最高の恋人を探すことに。

 

【感想】

コメディとラブロマンスとハートフルと、とにかく優しさに包まれた映画です。

日本ではようやく発達障害が認知されるようになってきました。しかしそれでもまだまだ一般的に浸透したとは言い難いです。

この映画はスウェーデンですが、欧米では比較的に発達障害は認知されています。当然のことながら欧米の医学から証明されていったんですから。

だからシモンのアスペルガーを世間は受け入れています。

しかしどこにいってもそうですが、例えアスペルガーとわかっていても、付き合いたくないと思う人もいます。

 

シモンはアスペルガーのために他人の感情を推し量ることができません。感情を見分けるのも、表情のみです。

だから人間の複雑な心境というものを理解するのに苦労します。

しかし兄のサムはシモンを受け入れ、相手をしてくれる人物です。彼にとって必要な存在です。

そんなサムを元気づけるために恋人を探しますが、彼のその実直で純粋な言動に、イェニファーは心惹かれていきます。

彼女は最初からアスペルガーの彼ではなく、シモンという彼を受け入れていました。

健常者と障害者は何かで区切られているのかもしれませんが、それは決して交わることのないものではありません。人と人の付き合いに、健常者も障害者もないんです。

 

兄のサムにとって報われた、とは言えないにしても、「物事は変化していくんだ」という言葉がよかったですね。

これはサム自身にも言っているし、何よりもイェニファーと出会って変わったシモンのことを指して言っています。

 

「SPY/スパイ」

メリッサ・マッカーシー ジェイソン・ステイサム ローズ・バーン ジュード・ロウ主演 ポール・フェイグ監督

 

【あらすじ】

CIAの内勤分析官スーザン・クーパーは同僚のファインのサポートをしていたが、任務のターゲットのレイナに殺されてしまう。スーザンは自分は身元がバレていないことから、レイナの追跡に立候補する。

 

【感想】

普通におもしろかった。というかメリッサ・マッカーシーのちょうどいい太い体型がコミカルな演出の味を出していました。

それにジェイソン・ステイサムはアドレナリンやメカニックなんかがすべてコメディに見えてしまうような、残念なエージェントの役でおもしろかったです。

テンポもよく、悪役も魅力的で、アクションもいい。内容自体は割とべたなんですけど、その王道な感じがまたいいんです。

 

なによりスーザン、強すぎだろ(笑)

いくら興奮してるからって、相手はプロなのに。

それにちょいちょい挟んでくる下ネタも、妙に下品じゃない(もちろん上品でもないけど)から、ところどころクスクス笑えました。

日本だと誰がやってくれるかなー、なんて想像して観るのもおもしろいですよ。

 

「渇き」

ソン・ガンホ キム・オクビン主演 パク・チャヌク監督

 

【あらすじ】

病人を看取ることしかできないことに無力感をおぼえた神父のサンヒョン。彼はある日自殺するようにワクチンの開発の実験台を申し出る。彼は吐血して死んでしまうが、奇跡が起きてよみがえる。以来彼は奇跡の神父として扱われるが、彼が欲していたのは人の血だった。そんな時幼馴染のガンウとその妻のテジュと出会う。テジュはどこか暗い目をしていたが、彼はどんどん心惹かれていく。

 

【感想】

正直ヴァンパイアの要素よりも、鬱屈した人間たちが解放されながらも、どこかで孤独を感じてる官能的な部分が全面に出ていました。

よくあるヴァンパイアに恋しちゃいました、というよりも、血を欲するけど神父として人間を殺すことができない葛藤、そしてテジュのすべてを壊してしまいたい欲望が入り乱れた感じの、少し暗めの映画です。

だからセックスのシーンなんかは割と濃厚に描かれていたんですけども、それもまるで存在を証明するように、動物的なもの。

でもある日ついにサンヒョンは幼馴染を手にかけてしまいます。つまり人を殺さないという掟に背いたんです。

するとテジュもどこかで罪悪感をいだきますが、自身もヴァンパイアになることでまるで自暴自棄になっていきます。

 

でもセックスっていうのは抑圧された衝動や欲望でもあるんです。

神父というのは禁欲を護らないといけません。それがかえって彼を抑圧していたんです。

テジュも同じです。夫に対して、家族に対してつねに従順としなくてはいけないという抑圧から解き放たれたのです。

しかしその先にあるのは破滅でした。

サンヒョンは最後に自分が神父であることを否定するため、信者を犯して、聖職から抜け出しました。

テジュは家族を殺し、縛られるものから解き放たれました。

そして最後にふたりは赤い血のような太陽の光で消滅していったのです。

 

ただ少し冗長だった気がします。

もう少しテンポよくしたらよかったかもしれません。

author:トモヤムクン, category:-, 17:08
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小さな映画館 第125幕

「自転車泥棒」

「17歳のカルテ」

「スノータウン」

「トレーニングデイ」

「メカニック:ワールドミッション」

 

「自転車泥棒」

ランベルト・マジョラーニ主演 ヴィットリオ・デ・シーカ監督

 

【あらすじ】

第二次世界大戦後のイタリア。2年間職に就けなかったアントニオは、役所のポスター貼りの仕事を得る。しかし仕事の条件として、自転車を持っていることが必須だった。妻が家のベッドのシーツを質に入れて、なんとか自転車を手に入れたアントニオ。しかし仕事中に自転車を盗まれてしまう。

 

【感想】

この映画って、いったい誰が悪いんでしょうか?

悪い人間なんていないんです。

そう、みんな生きるのに必死なんです。

自分たちだけで精一杯なんです。

 

全体的なテーマを見てわかるように、この映画は戦後の不況で貧困に陥った登場人物たちによって織りなされる映画です。

自転車を盗んだ青年も同じです。

恐らく母親と二人暮らしなんじゃないでしょうか。

それでいて貧困街の人々です。

 

アントニオは追い込まれて、結局他人の自転車を盗んでしまいます。

被害者とその他の人たちに囲まれたアントニオですが、息子の涙を目にした被害者はアントニオを赦します。

誰もが一生懸命なんです。

必死なんです。

貧困が生み出すのは人間の涙です。

 

今の日本から見れば、自転車が盗まれたことで、もしかしたらここまで騒がないかもしれません。

しかしそれが生きるか死ぬか、それも家族を養わなければいけない身となったらどうでしょう?

生きるということは簡単じゃないということです。

 

「17歳のカルテ」

ウィノナ・ライダー アンジェリーナ・ジョリー主演 ジェームズ・マンゴールド監督

 

【あらすじ】

ある日スザンナは大量薬物を服用し、自殺未遂をする。彼女は精神病棟に入院させらるが、自分がパーソナリティ障害という認識がなかった。そこで病棟のボス的な存在リサと出会い、そこが精神病棟が自分の存在場所だと思いだす。

 

【感想】

17歳という微妙な時期です。

”パーソナリティ障害”とは簡単に説明できませんが、性格の上である感情が一部が偏っていいます。

スザンナは自分と他者たの違いに戸惑っていました。

だからこそ自分という支柱を失い、自殺未遂をしてしまいます。

その後同じような人々と出会い、自分の居場所を見つけます。

それは自分が他者から「狂ってる」と言われた人たちの世界です。

精神病院というのはある意味で「正常」と「異常」の堺になります。

いわゆる「正常の世界」で適応できなかった彼女たちは「異常な世界」こそ共存できる場としたのです。

 

だけど彼女たちはどこかで孤独を抱えていました。

それは誰にも愛されていないという孤独です。

そんな中でリサはデイジーが父親と近親相姦をしているとなじると、翌日彼女は自殺をしてしまいました。

自殺したデイジーを見たスザンナは、初めて「死」に直面したのです。

それは自殺未遂ではわからなかった、本物の死です。

ここで初めて初めて自分の無力さを感じるんです。

 

ウーピー・ゴールドバーグ演じるヴァレリーの助言もあり、スザンナは自分を認めて、生きようと励みます。

途中に出てきた「オズの魔法使い」もよかったですね。

「夢見てばかりじゃいられない」っていうセリフが間接的にきいています。

しかしそれを妬んだのがリサです。

リサにとってはその異常な世界こそすべてでした。

だからそこから出ていく人たちが許せなかったんです。

だけどスザンナはリサの「あんたはすでに死んでいる」と言いました。

リサは慟哭で崩れ落ちます。

 

スザンナは最終的に社会復帰をして、戻ります。

何人かの友人とも会ったと言っていますけど、何人かは会えなかったとも。

そこにリサはいたのでしょうか?

そう、リサは正常であろうと、異常であろうと”生きる”ということを放棄していたのです。

 

「スノータウン」

ジャスティン・カーゼル監督

 

【あらすじ】

オーストラリアの南部に住むジェイミーはシングルマザーの母と障害をもつ弟たちと暮らしていた。ある日ジェイミーは隣人から性的暴行を受ける。苦難に満ちていたジェイミーだったが、母の新しい彼氏ジョンと出会い、彼の人生が一変する。

 

【感想】

人の道を踏み外す時って、影響を与える誰かがいるんです。

学生のジェイミーの環境は劣悪でした。

貧乏な家庭で、母の元カレには性的ないたずらをうけ、隣人からも性的暴行をくわえられます。

そんな絶望の中であらわれたのが、カリスマ性をもったジョンという存在。

ジェイミーは彼に救ってほしいと頼りますが、彼は極度の変態嫌いのシリアルキラー。

彼は正常ではありません。

大義名分は変態を殺すことが目的ですが、自分の弱みを握った人間を殺したり、いたぶって殺したり、とサイコパスな一面を見せています。

そう痛みのわからない人間なんです。

そうした精神病質者である彼を恐れながらも、従わずにはいられないジェイミーですが、彼とジョンの違いは「涙」です。ジョンは人間の温かい涙は流しません。罪悪感がないからです。しかしジェイミーは自責の念、罪悪感に苛まれ涙を流します。

 

この事件は事実を基にしていますが、何より許せないのが「社会的弱者も含まれていた」という事実です。

当然人を殺すことは許されません。ジョンは罪のない人間まで殺していたのです。

 

この映画は本当に静けさを利用した怖さが演出されていました。

静かな環境だからこそ、殺人鬼の呼吸やいかれた精神が浮き彫りになります。

特に個人的にゾクッとしたのは、ヘビがネズミを捕食するシーンですね。

彼は美しいと言っていましたが、思わず納得しそうになってしまいました。

 

「トレーニングデイ」

デンゼル・ワシントン イーサン・ホーク主演 アントワーン・フークア監督

 

【あらすじ】

ロス市警の麻薬取締課に配属された新人刑事ジェイクは、ベテラン捜査官アロンゾと組むことになったが、「狼を倒せるのは狼だけ」と言うように、悪を倒すには悪になれとジェイクに言う。しかし正義漢の強いジェイクは次第に不信感を募らせていく。

 

【感想】

意外性はないといえばない映画でしたけど、結構いい映画でした。

麻薬捜査官はかなり危険な任務を伴うのは日本も同じですけど、銃社会で尚且つ売人の数が桁違いのアメリカだとまた違うのでしょう。

ジェイクは本当に模範的な刑事であり、アメリカの正義の一面です。

一方でアロンゾはアメリカの欲にまみれた闇の一面です。

ジェイクがそうした闇の世界を垣間見ることで、次第にアロンゾの陥った闇の世界を切り裂いていきます。

 

確かに麻薬の売人やその取引をしている人たちは悪人でしょう。

アロンゾのように悪人を倒すために悪にならないといけないという意見も頷けます。

しかし間違ってはいけないのは、ジェイクのように悪人になるのではなく、悪人を演じつつ正義を貫くことが一番大切なのです。

アロンゾは結局自分が支配していると思い込んでいた人々に打ち殺されました。

因果応報というやつです。

 

ただ今後のジェイクの行方が気になりますね。

 

「メカニック:ワールドミッション」

ジェイソン・ステイサム ジェシカ・アルバ トミー・リー・ジョーンズ主演 デニス・ガンゼル監督

 

【あらすじ】

「メカニック」と呼ばれていた凄腕の殺し屋アーサー・ビショップは裏社会から足を洗い、リオデジャネイロで平穏な日々を過ごしていた。ある日ビショップのもとに殺しの依頼が舞い込んでくる。依頼主はビショップの幼少期からともに育ったクレインだった。しかしビショップはこれを断るが…。

 

【感想】

わたくし、大きな過ちを犯しました…。

 

続編と知らずに、こっちから観てしまったー!!!!!

しかし!!そんなこと関係ないくらい面白かったです。

というか別に前作知ってなくても楽しめました。

とにかく凄腕の暗殺者、宿敵、美女、アクション、銃撃戦とセオリーに沿った素晴らしい映画。

ジェイソン・ステイサムって吹替で観ても、字幕で見てもとにかく声が渋いんですよね。あんなに髪は薄いのに(失礼)

3つのミッションをなんなくこなしていくビショップはすごいんですけど、クレインがそんなに強くなかったのが残念でした。

author:トモヤムクン, category:-, 15:27
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小さな映画館 第124幕

「ガンジー」

「J.エドガー」

「エル・スール」

「300」

「GIジョー」

 

「ガンジー」

ベン・キングズレー主演 リチャード・アッテンボロー監督

 

【あらすじ】

「インド独立の父」と呼ばれたガンジー。彼は青年時代、人種差別を受けていた。彼はイギリスの人種政策に対抗すべく、非暴力を掲げた運動を行う。次第に規模も増えていき、イギリスも警戒感をあらわし、ガンジーを何度も逮捕する。

 

【感想】

今の教科書だと、ガンジーではなくガンディーですね。

日本人としてもガンディーの名前は知らない人はいないと思います。恐らくマザー・テレサやキング牧師と同じようにカテゴライズしておぼえているかたもいるかもしれません。

有名ですけど彼が説いたのは非暴力・非服従の精神です。

「武器を持たないなんて、馬鹿じゃないか!」と思う人もいるでしょう。そうなんです、だから物凄く非暴力というのは勇気のいる行動なんです。

人間がなぜ武器を持つか。それは自分を守るため。ひいては自分の弱さを補うためです。

しかしガンディーはあくまで心の中の強さで抵抗しました。

だから時には殴られ、血みどろになることもあります。

しかしそれでも彼は何度も立ち上がるのです。

すると無抵抗の相手に対して暴力をふるっている者の中には、罪悪感が芽生えてくる人たちもいます。ガンディーはそうした人間の心の中にある善意の芽を咲かせようとしていたのです。

 

この映画は3時間という長さですが、非常に丁寧に描かれています。

家庭人としてのガンディーではなく、インド人としてのガンディーが中心に描かれています。

ガンディーの思想、行動、言葉、それに共感していく人々が徐々に増えていく過程はまさに彼が民衆の心を動かしていました。

もしも民衆が暴走したなら、ガンディーは自己犠牲の精神でそれを止めようとします。

それこそ断食です。

人々は痩せ細っていくガンディーを見ていき、己を顧みるのです。

非暴力・非服従という精神は常に生命と死の駆け引きなんです。

ガンディーはそれができる人です。

 

特に回教(イスラム教徒)に子どもを殺された父親は、イスラム教の子どもを殺したと告白したシーンは印象的でしたね。

ガンディーはこう答えました。

「地獄から抜け出すには、回教の子を愛をもって育てなさい」

と。

憎しみから解かれるには愛を持つしかない。

憎しみの芽を摘むのは愛だと。

そうすれば地獄から抜け出せる。

 

そしてガンディーはメディアをうまく使った(?)、もしくは使われたと思います。

そうした献身的で自己犠牲的なガンディーの姿と対比してしまえば、イギリスのやっていることはまさに残虐にうつるからです。

 

インドはイギリスから独立することができましたが、ガンディーが言うようにまだまだ終わったわけではありません。

日本人からしたら、あまり馴染みがないかもしれませんが、インドはヒンドゥー教と回教(イスラム教)が分裂し、インドとパキスタンという国になりました。

そして未だにインドとパキスタンは争いを続けているのです。

 

ガンディーがまだ生きていたなら、再び断食を行ったでしょう。例え命が消えてしまったとしても。

平和を掲げる人は多いです。

ただどれだけの人が命をかけられるか。

これがガンディーとその他の人たちとの違いです。

 

「J.エドガー」

レオナルド・ディカプリオ ナオミ・ワッツ アーミー・ハマー主演 クリント・イーストウッド監督

 

【あらすじ】

1919年アメリカ合衆国では、ソ連の建国を受けて、共産主義者や運動家によるテロが横行していた。ついにはパーマー司法長官自宅が爆破され、司法省は過激派を捕まえ、国外追放させる捜査チームを立ち上げる。当時24歳のフーバーはその責任者となり、全国民の指紋の登録など科学調査に力を入れるように。彼の正義審と愛国心は次第に権力へと結びついていく。

 

【感想】

FBIのフーバーと言えば、アメリカ映画、特に大統領を主題にした映画ではよく聞く名前だと思います。

国に忠誠を誓い、国を守るためにFBIに全血を注いだ男です。

しかしそうした側面もありながら、彼なりの葛藤、そして正義とエゴの境界線などが描かれています。

 

時代は1919年、ソ連が建国されるとアメリカだけでなく、日本も同じように共産主義者の活動に危機感を抱きました。

アメリカは独自にFBIを創設し、フーバーを責任者として発展していきました。

若きフーバーは共産主義者やテロリストから母国を護るため、愛国心を燃やしました。

時代とともにFBIと、そしてフーバーの名声が上がっていくと同時に、フーバーは政府や議員に対する盗聴を行い、国を影で操る存在となってしまいました。

フーバーのそうした愛国心は徐々に権力のエゴイストとなりはじめました。

 

そしてプライベートの面では母を愛する、いわゆるマザコンであったり、ホモセクシャルの面もピックアップされています。

そういえばあの赤狩りの筆頭マッカーシーも母親好きでしたね。もしかしたらそうした母親への依存度の強い男性はある意味でエゴイストになってしまうのかもしれません。

国家を守るため、共産主義者から国民を守るため、しかし国も国民も時代の流れによって変わっていきます。

かつて人権のなかった黒人には公民権運動の末、黒人の人権が認められたりとフーバーの思い描いていた理想とかけ離れていきました。

だから彼は最後までキング牧師を脅したんです。

 

最後に彼の愛人に伝記の誇張を指摘されますね。

自分は愛国者で英雄である。

そう思いたいフーバー。

だけどそれは決して真実ではなく、真実を見失ってしまった男の末路だったわけです。

つまりこの映画自体も、終盤まではフーバーのこうであったんだ、というプライドによってつくられた物語でもあります。

最後はニクソンが表では彼を追悼しながら、秘密文書を捜索させますね。

しかしフーバーは事前に個人秘書のガンディーに処分させています。

フーバーの物語でありながら彼を支えた人たちの物語でもありました。

 

「エル・スール」

オメロ・アントヌッティ主演 ビクトル・エリセ監督

 

【あらすじ】

スペイン北部で暮らす幼かったエストレーニャにとって愛する父親に何も疑問を抱いていなかった。しかし大人になって、父には愛する女性がいるとわかる。

 

【感想】

あの頃はそんなに深い意味があるとは思えなかったことも、思い返すと重大な意味が隠されていたことに気づくことってありますよね。

父が「イレーネ・リオス」という言葉を何度も書いていたということから、エストレーニャにとって初めて父親が謎の人物となるのです。

そして彼女が実在すると知り、父が彼女を愛すると知ります。

だけど子どもにとって、親のそうした秘密って知りたくないですよね。

目をつむってなかったことにしたいし、耳をふさいで聞かなかったことにしたい。

子ども心ながらにそういう拒絶反応があるはずです。

だけど大人になって理解できることがあります。

 

父は自殺したような描写がありましたね。

あれもまたエストレーニャの回想なのか、真実なのかはわかりません。

エストレーニャは父親を思い返すことで、大人の女性になったのです。

 

「300」

ジェラルド・バトラー レナ・ヘディ主演 ザック・スナイダー監督

 

【あらすじ】

紀元前480年、スパルタ王レオニダスのもとにペルシア帝国からの使者が訪れ、スパルタに服従を求めた。しかしレオニダスはこれを拒否し、使者を殺害した。

デルポイの神託により非戦を促されるが、レオニダスは300人の兵を連れ、ペルシア王クセルクセス率いるペルシア軍100万人に立ち向かう。

 

【感想】

”テルモピュライの戦い”、として語り継がれる有名な戦いがモデルとなった映画です。

レオニダスは未だに英雄として語り継がれる偉人です。

 

ギリシアには大きなポリス(都市)がふたつありました。

そのひとつがアテネ、そしてスパルタです。

今でもスパルタ教育っていういい方しますよね?

スパルタは軍人になることこそ男の使命のような部分があり、とにかく軍人になるために幼い頃から鍛えられるんです。

レオニダスもそうやって育てられた男のひとりです。

生きるか死ぬかの環境で育てられたレオニダスは死を恐れず、スパルタのために命を捧げる男です。

彼はカッコいいんですけど、ただ危険なのは彼にとってそれは精神論が強いんです。

もちろん肉体を鍛え上げているものだから、精神力と体力はあるでしょう。

ただ正直無謀と言えば無謀なんです。

戦争せず、穏健な方法もあるだろう、といってしまえるんですよね。まああくまでこれは現在の価値観ですけども。

 

ただとにかくスパルタの王として、誰よりも率先していくレオニダスの姿は男なら惚れるものがあります。

レオニダスは確かに強気な男ですが、きちんと作戦がある、策士な一面があります。

これが重要です。ただの筋肉バカが王なら、正直300人はあっさり全滅したでしょう。

しかしレオニダスには人を見る目があり、戦術においても天才的でありました。

 

まあこの映画はレオニダスの生きざまを楽しむ映画です。

アクションとか期待するとちょっと肩透かし食らうかもしれません。

 


「GIジョー」

チャニング・テイタム レイチェル・ニコルズ マーロン・ウェイアンズ主演 スティーヴン・ソマーズ監督

 

【あらすじ】

世界征服をたくらむ組織コブラ。彼らの手に脅威の破壊兵器が渡ってしまう。そんなコブラを食い止めようとアメリカ政府が送り込んだのは、世界各国から集められたエキスパートチーム、G.I.ジョーであった。

 

【感想】

普通に面白いというか、ド直球。

自分の中の子ども心をくすぐられる映画です。

まあ単純な話ではあるんです。

GIジョーっていうのはまさにアメリカンヒーロー、アメリカン・アーミー、つまりアメリカ人の夢の具現化した感じです。

うん…以上。

author:トモヤムクン, category:-, 16:58
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小さな映画館 第123幕

「キングダム・オブ・ヘブン」

「小人の饗宴」

「シュリ」

「イーグル・アイ」

「ブラック&ホワイト」

 

「キングダム・オブ・ヘブン」

オーランド・ブルーム エヴァ・グリーン エドワード・ノートン主演 リドリー・スコット監督

 

【あらすじ】

フランスで鍛冶屋を営んでいたバリアンは妻と死別した直後、イベリンの領主ゴッドフリーから、バリアンの父親だと告げられる。十字軍として参加するよう要請されバリアンは妻の罪を償うために参加。エルサレムへの道中父は殺されてしまうが、バリアンは自力でたどり着く。王ボードゥアン4世とサラディンは和平を結んでいたが、ギーやルノーといったイスラムへの強硬派が台頭し、再び戦火を巻き起こすこととなった。そんな中バリアンはボードゥアン4世の姉であり、ギーの妻シビラに恋をする。

 

【感想】

この映画は本当に面白かったです。日本ではあまり興行成績が奮わなかったようですが、それも十分理解できるんです。なぜなら日本人からすれば十字軍、つまりキリスト教とイスラム教の対立っていうのは、歴史的にもあまり関心がないからです。

今回の映画は決して英雄ものではありません。もちろんバリアンはそういう風に描かれているといえば、そうですが、この映画では本来敵であるはずのサラディンの正当性やカッコよさも描かれているんです。

つまりこの映画の重要ポイントはキリスト教、イスラム教の正当性ではなく、双方の理解と和平にあるのです。

 

バリアンは実在する人物をモデルにしていますが、決してあのようなドラマチックな人生を送ってきた人ではありません。

その他の人物は大体史実通りです。

だからこそキリスト教以前にギーやルノーの強欲さや残虐さが目立ちましたよね?これで本当に正義と言えるのか、という。

一方でボードゥアン4世は病弱ながらも、サラディンと和平を結ぶほど、賢者な王様でした。

サラディンも同じです。基本的には争うよりも、和平の道を選ぼうとしていました。

しかしいつの日も過激派が輪を乱すんです。

 

バリアンは領主を護る時に言いました。

「エルサレムを護るためではなく、国民や家族を護るために戦おう」と訴えかけます。

そうなんです。

エルサレムが誰のものか。一体全体それを望んだのは誰か。神ではないですよね。そう人です。それも強欲な。

そんなもののために愛する人の血を流す意味があるでしょうか?

だからこそ家族を護るために、騎士ではない庶民に武器を持たせ、戦わせるのではなく、護ることに専念させました。

 

そして結局エルサレムは交渉の末サラディンにわたります。

この場面が秀逸なんです。

バリアンが「あなたにとってエルサレムとは?」

と訊くと、

サラディン「無だ。だがすべてだ!」

と答えます。

やはりサラディンは英雄です。

エルサレムというのは場所なんです。信仰の自由が保障された場所。それだけなんです。

もしそんな場所がギーやルノーにわたったらどうなるか?

信仰の自由どころか、イスラム教の同胞さえも虐殺されてしまいます。だからこそサラディンは戦闘を選択しました。

でも最後にはバリアンという理解者に巡り合え、再び和平が結ばれたのです。

 

世の中は賢者ばかりではありません。むしろ愚者のほうが多いかもしれません。

今の時代も同じです。

いつまでも十字軍の傷跡というのは、深くなっていくばかりです。

しかしどこかで必ず手をつなぐ賢者が現れるはずです。

この映画は本当に素晴らしい映画でした。

 

「小人の饗宴」

ヘルムート・ドーリンク主演 ヴェルナー・ヘルツォーク監督

 

【あらすじ】

舞台は小人の教育施設。その日は署長とその他の職員が外出を出ていた。それを機に日ごろの鬱憤を爆発させた13人の小人たち。体制側の校長はぺぺを人質にとっていたが、小人たちの狂乱はさらに過激化する。

 

【感想】

小人症、と聞いて首をひねる日本人は多いんじゃないでしょうか。それくらい海外に比べれば、日本の小人症のかたは少ないんです。もちろんいなわけではありませんよ。

これはそんな小人症の人たちだけで撮られた異質の映画です。

 

今だったら人権の尊重で差別的に捉えかねない映画ですが、これはそれすらも皮肉を込めた映画になっています。

小人たちはずっと支配されていたわけです。この時点では可哀想で、同情できますよね。

しかし署長たちがいなくなると、つまり強い圧力がなくなると、暴動に勢いが増していきます。

日ごろの憎しみ、怒りが一気に噴出されたんです。

動物や盲人への虐待、放火、器物破損。

しまいには秩序や宗教さえなくなる、それこそ野蛮な状態に陥ります。

そう、人間というのは小人であろうが、すべてに共通する暴力性が潜んでいるんです。

誰が特別というわけではありません。しかしそうした潜在的な怒りを暴発させるものは何か。それもまた人間なんです。

人間は小人たちを蔑み、小人たちはさらになにもできない盲人や動物を虐待していきました。

どんなに綺麗なことを言おうが、人間というのは大小問わずそういう生物なんだ、という皮肉を感じます。

 

ラストのラクダを見て笑うシーンは不気味ですが、人間の本質をあらわしたものです。

この映画の内容は殆どないと言っても過言ではありません。ただない中に感じる不快感や嫌悪感こそが、この映画の狙いでしょう。

 

「シュリ」

ハン・ソッキュ キム・ユンジン主演 カン・ジェギュ監督

 

【あらすじ】

秘密情報機関OPのユ・ジュンウォンは相次ぐ要人の暗殺事件を調査していた。武器密売商人の死をきっかけに北朝鮮の特殊第8団が絡んでいることがわかった。彼らは新素材液体爆弾のCTXが狙いだとわかる。

ジュンウォンは情報がどこからか漏れていると疑い捜査すると、意外な人物につきあたった。

 

【感想】

北朝鮮という国は日本にとっても脅威なのは明白な事実でしょう。

彼らは体制を維持するために、ありとあらゆる手段を使ってきます。

しかし元をたどれば、どこにたどり着くか。

それは冷戦です。

ソ連とアメリカという大国の思惑によって、意図せず朝鮮は分裂してしまったのです。彼らの意思もあったかもしれません。しかし大きな原因をつくったのは彼らというわけではありません。

 

ミョンヒョンは祖国に忠誠を誓い、任務のために心を殺していました。

しかしジュンウォンとの暮らしで、初めて人間らしい感情を取り戻したのです。

それは持っていた愛という感情です。

悲しいですよね。

だってどちらも考えはいっしょなんですもん。

祖国の統一。

だけどそのやり方がまったく異なる。

朝鮮の分断がなければ、ふたりはまた別の生き方があって、もっと幸せだったのかもしれない。

お腹の中の子どもといっしょに、明るい未来があったかもしれない。

ミョンヒョンというのは架空の人物ではありません。ジュンウォンはイ・ミョンホンという女性を愛したのです。

 

この映画はアクションが見どころなんですけども、どちらかといえば、そうしたふたりの切ない関係に目がいってしまいました。

 

「イーグル・アイ」

シャイア・ラブーフ ミシェル・モナハン主演 D・J・カルーソー監督

 

【あらすじ】

政府の仕事をしていた双子の兄イーサンを亡くし、平凡な毎日を送っていたジェリー。ある日知らない女から電話がかかってきて、「今すぐ逃げろ」と指示される。部屋には大量の武器が送り付けられており、ジェリーはFBIに拘束されてしまった。

無実を訴えるジェリーに再び女からの指令が出る。ジェリーは逃走中に息子を人質にとられたレイチェルという女性に遭遇する。

 

【感想】

面白かった。

結構あるあるネタかもしれないけど、AIの暴走と国家の危機。

これって笑いごとじゃないんですよ。

善悪ってどうやって決まると思います?これってすごくさじ加減が難しいんです。

結局のところ人間の中の善悪って明確な境界線がないんです。

でも一方でAIは違います。きっちりとしたルールがあり、そして善悪があります。

 

AIのアリアはテロ組織の人間ではない、と判断したにも関わらず、大統領は結果的にGOサインを出してしまいました。

するとアリアにとって、誤った判断を下した大統領および国会議員こそ、国民の敵だと判断したんです。

人間だったらなかなかこうは思いませんよね?

確かに大統領に非があったかもしれませんが、抹殺しようとまでは考えません。

しかしアリアはそれが「善」だと決断したんです。

 

ジェリーは兄に対するコンプレックスを抱きながらも、兄のまっすぐな性格に憧れていました。

兄もまたジェリーを愛していた。

ジェリーは最終的に兄に託された使命を果たしたのです。

最後に大統領の隣に立つというのは、ある意味で皮肉な終わり方でしたね。

 

あとFBIのおじさん、めっちゃかっこよかった。

 

「ブラック&ホワイト」

トム・ハーディ クリス・パイン リース・ウィザースプーン主演 マックG監督

 

【あらすじ】

CIAのエージェント、FDRとタックは同じ女性に恋をし、作戦と偽ってチームを組み、互いに妨害しあう。

 

【感想】

トム・ハーディとクリス・パインというイケメンふたりが迫ってきたらそりゃ…。

コメディ系アクション映画でしたが、なかなか面白かったです。

なんというか王道なんですよね。

あ、やっぱりこういう展開なるよね、って。

でもわかってても楽しめる映画なんです。

 

そしてリース・ウィザースプーンも魅力的な女性ですよね。

男運が悪いとは思えないくらい、美人。

本当、美男美女のバカバカしい作戦の中で、なんやかんや犯罪者の大物捕まえちゃったっていうオチ。

そして最後のオチにも笑いました。

寝てねえのかよ!

と。

 

 

 

author:トモヤムクン, category:-, 15:44
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小さな映画館 第121幕

「道」

「オール・ユー・ニード・イズ・キル」

「世界にひとつのプレイブック」

「デンジャラス・ラン」

「渇き。」

 

「道」

アンソニー・クイン ジュリエッタ・マシーナ主演 フェデリコ・フェリーニ監督

 

【あらすじ】

旅芸人のザンパノは助手女性が死んでしまったので、代わりにジェルソミーナを連れていく。道化の恰好をする彼女は、最初こそ初めての旅を楽しんでいたが、ザンパノの態度に嫌気がさし、ひとりで街へ出る。その時陽気な旅芸人のマット率いるサーカス団に魅了され、誘われるが…。

 

【感想】

陽気な音楽とは対照的になんとも切ない話でした。

粗暴で感情的な性格のザンパノと、あまり賢くはないけど純粋で真っすぐなジェルソミーナという、言ってしまえば正反対の性格のふたりなんです。

いつも怒られてばかりいたジェルソミーナは自分の存在について考えます。そりゃそうです、母親にでさえ殆ど厄介払いされたようなもんですから。しかしマットはどんなもの、例えばそこら辺の石でも、存在する理由があり、何かの役に立つと語ったことで、彼女は初めて自分が存在していいと肯定されたんです。

ここまでは良かったんです。

ザンパノは素直な性格ではありません。例えジェルソミーナに惚れていたとしても、言葉は荒っぽくなってしまいます。

そしてマットと再会したことで話は急展開。彼に対して怒りを抱いていたザンパノが彼を殺してしまうのです。

ジェルソミーナは現実を受け入れられず、徐々に精神が崩壊していきました。

ザンパノはそんな彼女を見捨ててしまいますが、数年後彼女が孤独な最期を遂げたことを知り、後悔の涙に暮れます。

 

そうなんです、誰もが不幸になって終わるというアンハッピー・エンドなんです。

ジェルソミーナはザンパノにこそ、自分の存在を肯定してほしかったんです。ザンパノも同じかもしれません。ジェルソミーナの存在が必要だったんです。だけど素直になれず、粗野な態度にしか出ることができません。

この映画は戦後間もない時代です。

みなが懸命に生きていた時代。それぞれの道でそれぞれの人と出会います。そんな時、一体だれが一緒に歩いてくれるのか。それは孤独な道なのか、それとも…。

 

「オール・ユー・ニード・イズ・キル」

トム・クルーズ エミリー・ブラント主演 ダグ・リーマン監督

 

【あらすじ】

地球外生命体「ギタイ」と呼ばれる生物が地球を襲ってきた。人類の統合防衛軍の報道官であったウィリアム・ケイジ少佐は、危険地域の現地取材を拒否し、軍隊へと招集されてしまう。彼はチームとともに作戦を実行したが、敵の襲撃によって死んでしまう。しかし目覚めると、再び見た光景が広がっていた。

 

【感想】

タイム・ループものの映画ってよくありますよね。これも結構そのセオリーに沿った内容で、意外性があるかといえば、正直あまりありません。ただ映像は凝っていて、見ごたえはあります。

元々日本の漫画が原作なんですけども、日本の原作が海外で実写化されることって結構ありますよね。

こんなこと言うと悪いのですが、もしもこの作品を日本で作ってたら、あんまりいいクオリティにはならなかったんじゃないかな、と(苦笑)

やはりそこは市場の大きいアメリカですから、映像はド派手です。

ただですね、原作未読で申し訳ないんですけど、「ギタイ」という生物が一体なんなのか(そりゃ地球外生命体っていうのはわかりますけど)、ループの説明とか、もう少し掘り下げてみてもいいんじゃないか、とは思いましたね。

正直な話、闘いよりもループして、どうやってヒロインといるか、みたいなものが主軸になってるのが気になりました。

まあ最後のハッピーエンドは良くも悪くもハリウッドって感じでした。

ただ映像としては楽しめます。

 

「世界にひとつのプレイブック」

ブラッドリー・クーパー ジェニファー・ローレンス主演 デヴィッド・O・ラッセル監督

 

【あらすじ】

躁うつ病のパットは精神病院から退院した。彼は妻の浮気現場を目撃し、浮気相手に暴行したことで入院を命じられ、妻ニッキーへの接近禁止命令が出ていた。そんな時友人夫婦の妹ティファニーと知り合う。彼女は夫を亡くして依頼、性依存症となっていた。

 

【感想】

コミカルであり、ちょっとおかしなラブロマンス映画でもあります。

精神病って日本でも多く患者のかたがいるんですけど、まだまだ偏見はあるんです。その点アメリカは寛容というより、認められてるんですよね。

一方はADDや躁うつ病の男、もう一方は失意から性依存症に陥った女の恋愛です。なかなか普通というわけにはいきません(笑)だからお互いにいろいろ言い合うことが、そこら辺の痴話げんかと質が違う。

そして周囲の環境もまたおかしい。パットの父なんかは息子とどう向き合っていいかわからず、苦悩しながらも、なんかかけ事に夢中(笑)デ・ニーロって結構こういうコメディに出演するんですよね。

そんな環境でありながら、主人公ふたりを含め、確かにみんなおかしいところはあるけども、みんな優しい部分を持ち合わせているんです。

人間の中には確かに狂ったような部分はあるかもしれません。でもそれ以上に優しい部分もあるはずなんです。

とてつもない失笑を買うようなダンスをみせたふたりですが、彼らにとってはこれ以上にないダンス。

ふたりで築き上げた未来なんです。

過去を吹っ切り、互いが前を向いていく、なんだか不思議な多幸感を得られる映画です。

 

「デンジャラス・ラン」

デンゼル・ワシントン ライアン・レイノルズ主演 ダニエル・エスピノーサ監督

 

【あらすじ】

元CIAのトビン・フロストは組織を裏切ったため、世界各国で指名手配されていた。10年後南アフリカで捕まったフロストは収容施設に収監される。しかし直後に収容施設が襲撃され、フロストは新人工作員マットとともに逃亡する。

 

【感想】

テーマ自体はありがちですが、逃走劇はなかなかのものでした。

ただ本当にありがちな内容なんです。

CIAから逃走し、彼らがフロストを追う理由なんて簡単にわかるじゃないですか。当然フロストのほうが正義であり、CIAのほうが悪であると。これでもし、実はフロストの誘導に惑わされ、彼は実は正義の側ではなく本当の悪だった、というならこの映画の評価は変わったと思います。

ただこの映画はストレート過ぎたんです。それが悪いわけではないんですけどね。

まあ冷静なデンゼル・ワシントンと成長していくライアン・レイノルズの演技は良かったです。

 

「渇き。」

役所広司 小松菜奈主演 中島哲也監督

 

【あらすじ】

元刑事の藤島は、別れた妻からの連絡で娘の加奈子が失踪したことが知らされる。藤島は娘の手がかりを捜していく過程で、加奈子のとんでもない秘密を知っていく。

 

【感想】

完全に狂ってる。登場人物みんな狂ってる。正常な人間なんてどこにもいない。

そんなバイオレンスでスリリングな映画でした。

 

藤島は妻の浮気現場を目撃し、車ごと突っ込んだ件以来、荒れた生活を過ごしていました。劇中でもセリフのほとんどが「クソが!」でしたからね。

ある日妻からの依頼で加奈子を捜索することになりますが、加奈子のとんでもない悪事が暴かれると、藤島は絶望するどころか、渇きを覚えるように加奈子を執拗に追いかけました。そして言動はどんどん暴力的になっていきます。

なぜ藤島は加奈子に執着したのか。それは加奈子に揺さぶられていた時のように、肉親としてではなく、異性として加奈子を求めていたからでしょう。それもまた渇きです。

 

一方の加奈子はといえば、なんという凶悪というより、純粋悪な少女です。

結局加奈子は好きだった緒方の復讐のために、あらゆる手段を使い、人々を狂わせていきました。

彼女もまた愛というものに対して渇きをおぼえていたのかもしれません。

しかしそれは満たされることはなく、人々を狂わせていくことで、自身の精神も崩壊していきました。

しかし結局彼女は母親としての愛を持っていた女性に殺されてしまいます。

 

真相にたどり着いた藤島は大雪の中、死体を捜せと命令します。

もはや藤島の中にあるものはなんでしょうか?永遠に潤うことのない渇きなのです。

author:トモヤムクン, category:-, 19:15
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