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小さな映画館 第103幕

「ストレイト・アウタ・コンプトン」

「ロリータ」

「ドッグヴィル」

「勝手にしやがれ」

「戦争と平和」

 

「ストレイト・アウタ・コンプトン」

ジェイソン・ミッチェル主演 F・ゲイリー・グレイ監督作品

 

【あらすじ】

1986年、治安の悪いカリフォルニア州コンプトンでドラッグの売人をしていたイージーは、ドクター・ドレーから自分たちのヒップホップに投資しないか、と持ち掛けられる。アイス・キューブたちとともにN.W.Aというグループを結成し、アルバムを発表すると瞬く間に大ヒットし、社会現象を巻き起こす。しかし「Fuck the Police」などの過激な歌詞からFBIや警察ににらまれることに。彼らは意に介せずにいたが、徐々に契約の関係でメンバーの仲がこじれていく。

 

【感想】

僕自身、ブラックミュージックを聴くまで、ラップやヒップホップの類は苦手でした。しかしこのN.W.Aはとにかくかっこいい!ひとりひとりの個性が際立っていて、例え英語がわからなかったとしても伝わる魅力があります。

そんな伝説的なグループN.W.Aは常に治安の悪い街コンプトンと、黒人を迫害しようとする警察官に対する主張を訴えています。まさかここまで警察官による横暴があったのには絶句でした。ただ彼らがそうした不当な暴力に対し、暴力で返すのではなく、ラップという表現で示したことは、やはり大きな意義があると思います。N.W.Aは多くの人々から支持されましたが、その成功は「金」という人間の欲望をつついてしまい、メンバーの関係が悪化していきました。

NWAを脱退し自らの道を歩むアイス・キューブ、プロデューサーとしての才能を開花させスヌープ・ドッグや2パックをスターに押し上げていくドクター・ドレー、そしてNWAとジェリーについていきながらも、どんどん落ちぶれていき、孤独になっていくイージー・E。

三者三様の人生がありながら、成功という大きな成果に惑わされてきました。

彼らは成功者とはいえ決して聖人ではありません。しかし彼らの人格を責めることはできないんです。

イージー・Eは本当に純粋な人なんだな、というのが感想です。金にも性にも人にも素直で、だから暴力もふるってしまうし、裏切られると人一倍傷つく。だからといってジェリーが悪人というわけではありません。彼はあくまでビジネスマンです。グループを成功させ、存続させていくためには、例え汚いことでもしなければいけないのです。難しいですね。

イージーは最後の最後、アイス・キューブ、ドクター・ドレーと和解し、再び純粋な音楽を作っていこうとした矢先の死でした。もし再結成していたら、どんな音楽が聴けたんでしょうか。アイス・キューブとドクター・ドレーはコーチェラやロックの殿堂などで共演していますが、N.W.Aの曲は披露していません。これはイージーがいてこそ、ということなんでしょうか?

 

「ロリータ」

ジェームズ・メイソン スー・リオン主演 スタンリー・キューブリック監督作品

 

【あらすじ】

キルティという男を射殺したハンバートは、少女ドローレス・ヘイズ、通称ロリータとの思い出を振り返る。

 

【感想】

今でこそ「ロリコン」なんて言いますけど、その名称の元ネタを知らない人は多いと思います。ロシア人であり、アメリカの作家ウラジミール・ナボコフの傑作「ロリータ」が元になっています。少女(原作ではニンフェット)を愛し、独占欲を満たそうとするハンバートの性的倒錯に対し、第三者たちがそうした少女に対する性愛をもつ人たちのことを「ロリータ・コンプレックス」と呼称するようになりました。もちろんナボコフ自身は原作の中で十分なハンバートの精神分析をしているわけですから、これには少し反対だったのかもしれませんが。

 

ロリータにとってハンバートに対する感情は明らかに「父性」です。母親を憎むあたりも同じですね。愛する「父」を奪われたくない、という本能からくるものです。これはフロイトが提唱したエディプス・コンプレックスですね。

「ロリータのはかない夢見るような子どもっぽさ。そしてある種の不快な卑猥さ」

原作ではもうちょっとハンバートの心理を掘り下げているんです。幼い頃に出会った少女の死が影響していて、永遠の少女性を求めるようになったりと。言ってしまえば、少女は永遠に少女でいられないわけです。誰もが平等に年老いていく。年老いていくと男女問わず醜くなっていきます。だからこそハンバートはロリータの行動を制限し、自分の手元に置いておこうとしました。

 

映画版のハンバートはジェームズ・メイソンの怪演もあって、哀愁と狂気に満ちた姿が描かれています。キューブリックはわざと深刻なシーンであっても陽気なBGMをかけることによって、彼の行動を滑稽にしていますね。

原作でのロリータは映画版よりももっと若いです。12歳くらいの、本当に無邪気な少女の姿で出てきます。まあ、これを映画でやってしまったらいろいろ苦情が来るとしてキューブリックもエロティックな面は描けなかったようですが。

でもロリータにとってハンバートの存在は恐ろしいものですよ。最初は母に反抗するかたちの「父性」だったのが、母を失ったことで、本当は保護者的な「父性」が必要だったはずなのに、ハンバートはまるで彼女を「人形(もの)」のように扱い、強引に関係を持たされてしまったわけですから(映画ではさすがに描かれてはいません)。

原作ではハンバートの日記としたかたちをとって物語が進みます。つまり、愛しいロリータの、一番輝いていた時期を「日記」という半永久的なものに閉じ込めたわけです。

 

そういえばロリータ役のスー・リオンって誰かに似てるな、と思ったら、クロエだ。

 

「ドッグヴィル」

ニコール・キッドマン主演 ラース・フォン・トリアー監督作品

 

【あらすじ】

大恐慌時代のアメリカ、ロッキー山脈の廃れた鉱山の町ドッグヴィル。医者の息子で作家を志すトム。彼は道徳を重んじるあまり、村の人々に説教をしていた。そんなとき、ギャングに追われていた女性グレイスを匿うことに美徳を感じた。町の人々は当初よそ者のグレイスに対して猜疑心を持っていたが、彼女の真摯な姿勢に態度を軟化させていく。しかし徐々に彼女に対する態度はエゴのかたまりになっていく。

 

【感想】

舞台セットを極力排除したような、斬新な設定にまず驚きました。しかし役者たちの演技を見て、まるでそこにドッグヴィルがあるように錯覚してしまいます。そしてその見えない町こそがドッグヴィルの醜悪さを顕著にしています。

ドッグヴィルという村は正直「日本」として観ることができます。日本もまた個人主義よりも協調を重んじ、民主主義でありながらも他人の顔色をうかがいます。この村も同じで、言ってしまえば変革を嫌う保守的な人たちなんです。そこは「都会」の人たちとの対比ですね。

グレースは村に変革をもたらす人物として登場します。

道徳に執着するトムにとって「他社への寛容さ」を試すいい存在となりました。他社を受け入れることで、寛容な心を示すということです。グレースも最初こそ訝し気に見られていましたが、彼女のひたむきな姿に次第に村人の心もほぐれていきました。

しかし、これがまたひとつの罠なんです。いい面を見せた反動はあまりにも大きく、つまり裏切られたと思ったときの憎しみはいい面を現したときの倍で返ってくるのです。

ドッグヴィルは貧しく、豊かではありません。だからこそ人々はほそぼそと自分たちのコミュニティ、現状を維持することだけで精一杯だったんです。だからこそ彼らは「弱さ」の反動から、暴力的な一面を見せてしまいます。

 

グレースもまた人間の「善」を信じる女性でした。ただしそれは「か弱い」といった、ある意味同情や憐れみを含みます。ドッグヴィルという人間の根源が「欲」や「弱さ」であることに失望した彼女は、「最善」のために村人を殺すという究極の選択をしました。

 

権力を持たない人間は醜悪さと罪悪感を織り交ぜながら、非道なことを行いますが、権力を持った人間は醜悪さや罪悪感とは無縁の、いってしまえばある意味で高潔な非道さを見せます。

本当に人間の「エゴ」という部分を考えさせる傑作映画です。

 

それにしてもニコール・キッドマンは美しいですね。おしりぶたられる少年の気持ちが理解できt

 

 

「勝手にしやがれ」

ジャン=ポール・ベルモンド主演 ジャン=リュック・ゴダール監督作品

 

【あらすじ】

ハンフリー・ボガートを崇めるミシェルはマルセイユで自動車を盗み、挙句警官を殺してしまう。アメリカ人の恋人パトリシアと行動を共にするが

 

【感想】

ゴダールの世界観って本当に好き嫌いがわかれると思うんです。まるでナンセンスなオシャレな会話を楽しむのもありだし、当時では斬新な映像を楽しむのもあり。絵画のように各々の楽しみ方で観ることができます。

この映画はフランス人のハンフリー・ボガートに憧れた男と、アメリカ人の女の話です。殺人を犯して起きながら、ミシェルはひたすらパトリシアと寝ることを考えます。パトリシアもそこに愛があるのか確信が持てず、彼と寝てみたりするんです。話はといえばそんな感じ。

セックスっていうのは相手がいないと成立しません。それは愛の行為でもあれば、ただひたすら欲求を追い求める行為でもあり、生と死を実感する行為でもあります。ミシェルの場合はただ欲求に従ってる感じです。一方パトリシアは肌を重ねることで愛を求めました。しかし相手を見つめても、寝ても、彼からの愛は確認できず、結局は密告という手段に出ました。

そう目を閉じればひとり。結局のところみんな孤独なんです。孤独であるが故に相手を求めますが、そこに「愛」が絡んでしまうとまた別の意味となってしまいます。パトリシアはその「愛」を求めましたが、ミシェルが拒んでしまったことで、彼は再び「殺人犯」に戻ってしまいました。

それにしてもゴダールは会話がオシャレですよね。噛み合ってないようで、まるでポエミーな会話。

「悲しむのは妥協だ。すべては無か」

「エロチシズムは愛の一形態」「フランス人は腰抜け」

「あんたを愛してるかどうか確かめたくて寝たの」

「幸福な愛はないというが、どうやら逆のようだ」

「複雑ね」

「不幸な愛すらないんだ」

 

「戦争と平和」

オードリー・ヘップバーン ヘンリー・フォンダ メル・ファーラー主演 キング・ヴィダー監督作品

 

【あらすじ】

ロシアはフランス・ナポレオンの追撃におびえていた。莫大な座員を引き継いだピエールは望まない結婚をして過ごしていた。友人のアンドレイは天真爛漫な女性ナターシャと恋に落ちる。しかし戦況は変わっていき、アンドレイは戦争へ。気弱で反戦的なピエールもまた戦地へ赴き、人生観が変わっていく。

 

【感想】

言わずと知れたトルストイの名作をハリウッドによって映画化したものです。原作はかなり重厚なのですが、この映画は簡潔に、しかし重要な個所をきちんと映像化してあります。

基本的にはピエールとナターシャ、ふたりの人生がナポレオンの脅威におびえる戦争の中で、いかに遠のき、接近したかが中心です。

19世紀の小説って本当にナポレオンが多く登場するんです。フランスの小説、例えば「赤と黒」や「モンテ・クリスト伯」などではナポレオンは英雄として出てきますが、やはり敵対していたロシアの小説では強大な敵として表現されます。それでいてトルストイはロシアの皇帝とナポレオンを比較するように描いています。もしかしたらトルストイもナポレオンの側の人間だったのかもしれません。

さて映画のほうですが、ナターシャは完璧です。ただもうちょっと儚げな印象が個人的にはありました。そしてもうひとりの主役ピエール。僕の中ではこんなにイケメンではなかったです(笑)アンドレはイメージ通りです。

 

さて登場人物ですがピエールは本来は戦争に向かないタイプの人間です。人間の弱さを知っていて、それでいて悩んでいます。父に愛されていないと思っていたら、莫大な遺産を遺され、したくもない結婚をし、挙句妻には不貞を働かれ、決闘を申し込み、相手に重症を負わしてしまい、自分の弱さに苦悩するほどです。

対照的にナターシャは恋に人生に自由に生きていこうとする魅力をもった女性です。

そしてアンドレイ。「堕落した女でも許す」と考えていたアンドレイですが、ナターシャの不貞を知り、争いの嫌いなピエールが駆け付けた時、人が変わっていました。それもすべて「戦争」が彼を変えてしまったのです。

 

やはりというべき、原作のあの重厚さには敵いませんでした。ピエールやナターシャの苦悩は原作のほうが素晴らしいです。何よりピエールがナターシャに対する告白したシーンは個人的に好きだったんですけどね。ちょっと陳腐なメロドラマになってしまったのが残念でした。

author:トモヤムクン, category:-, 11:20
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小さな映画館 第102幕

「レジェンド 狂気の美学」

「ダーク・プレイス」

「グランド・イリュージョン」

「グランド・イリュージョン 見破られたトリック」

「デッドプール」

 

「レジェンド 狂気の美学」

トム・ハーディ エミリー・ブラウニング主演 ブライアン・ヘルゲランド監督作品

 

【あらすじ】

60年代のロンドン、イーストエンド。一卵性双生児のレジナルドとロナルド・クレイ兄弟はギャングのリーダーとして頭角を現していた。レジーは部下の妹と恋に落ち、彼女との生活を優先するため、ギャングの世界から身をひこうとするが…。

 

【感想】

凄い。前半はテンポの良い、コミカルでスタイリッシュな映画だと思ったら、ラブロマンスに!と思ったら事態はどんどん悪い方向へ転んでいき、と何とも騒々しい。メインはストーリーテラーのフランシスとレジー、ロン兄弟です。この映画を盛り上げている要素は2つ。1つはトム・ハーディが二役演じていることと、この物語が事実を基にしていること。

ギャングと聞くと、アメリカのイメージが強いかもしれませんが、日本にヤクザが存在するようにイギリスにもいます。このクレイ兄弟の魅力、と言ってしまったら語弊があるかもしれませんが、彼らが映画になり得たのはやはり双子であるということと、性格が異なることです。2人は謂わば、一心同体であったわけですが、それがある日レジーがフランシスに恋をしたことから、亀裂が入ります。とにかく「We(俺たち)」を強調していたロンにとって、フランシスは面白い存在ではありません。

レジーはフランシスのためにギャングを辞めようとしますが、やはり骨の随までギャングに染まってしまった彼は、その世界から手を引くことができず、結局愛する人を失ってしまいました。

この映画に関して、スコセッシやタランティーノのギャング映画のようなバイオレンス性を求めると、肩透かしを食らうかもしれません。正直この映画の主題は「繋がり」です。レジーとロンという、一卵性双生児の繋がり、そしてレジーとフランシスの繋がり。その繋がりは自分で選択したものとはいえ、どう転がっていくはわからないのが人生です。

余談ですけど、チラッとクレイ兄弟と刑事は同じ労働者階級の出身でありながら、まったく違った人生を送ったことが描かれていましたよね。これも話の肝なんです。彼らを作るのは性格だけではなく、社会的環境というものあります。しかしクレイ兄弟のように道を踏み外す者がいれば、刑事のように正義を重んじる人間にもなれます。やはりそこは神に押しつけられた人生における、自分の重要な選択なのです。

 

「ダーク・プレイス」

シャーリーズ・セロン ニコラス・ホルト主演 ジル・パケ=ブランネール監督作品

 

【あらすじ】

28年前家族を惨殺されたリビーは、兄が殺人犯だと信じ、トラウマを背負って生きてきた。そんな彼女のもとに事件を再調査するボランティア団体「殺人クラブ」から連絡が入る。彼女は28年前の事件と向き合うことに。

 

【感想】

確かに殺人事件が肝でもあるんですけど、この映画のテーマは「家族」です。母がどれだけ自分たちを愛していたか。兄がどれだけ孤独のうちで悲しんだか。そしてリビー自身、どれだけ自分を見失っていたか。

例えばクロエが演じるディオンドラもまた「家族」によってつくられた存在でもあります。両親に甘やかされ、自意識は強くなり、抑制がきかない少女になっていました。そしてその成長は娘に引き継がれていきます。

両親というのは子どもにとって愛であり、道徳であり、時にアイデンティティとなります。リビーはそれらを失い苦しんでいました。真実に面と向かわず、ただただ自分を殺すような毎日を過ごしていました。誰かを犯人としてしまえば、もう過去を振り返ることもありませんし、傷に触れなくて済みます。しかしそれでは必ずしも幸福は訪れません。

「殺人クラブ」は若干特異なキャラクターたちですが(苦笑)、それでも彼らがあまり出しゃばらずに、あくまで情報提供者にだけ徹していたのは良かったです。恋が生まれるかと思ったら、生まれませんでしたね(笑)

28年経って明らかになった真相は様々な要素が絡み合った複雑なものでした。子どもを愛した母の意志と、甘ったれのお嬢様の怒り。そして極悪人。

ベンはこれから娘を捜し、もしかしたらいっしょに住むのかもしれませんが、なかなか難しいでしょうね。それでも彼らの人生は再び始まるのです。

 

「グランド・イリュージョン」

ジェシー・アイゼンバーグ主演 ルイ・レテリエ監督作品

 

【あらすじ】

謎の男に集められた4人のマジシャン。彼らは遠く離れたパリの銀行から金を盗み出すことに成功する。FBIは彼らを拘束するが、マジックの種を明かすことができず、泣く泣く彼らを釈放した。FBIの捜査官は彼らを追い詰めようとするが…。

 

【感想】

まあ、どんでん返しといえばどんでん返し。言っちゃえば種明かしを専門とする男に対する復讐のために仕掛けられた、壮大なマジックということです。だからぶっちゃけ、フォー・ホースメンは利用されたわけです。まあ彼らも尊敬するアイの一員になれたから、良かったのかもしれないけど。ただ、銀行のお金を奪う意味があったのかなー。目的はモーガン・フリ……、じゃなくてあの種明かしの男を追い詰めるのが目的だったわけでしょ?まあ義賊的な人気を集めようとしたのか、それともFBIごと動かすためにしたことなのか…。

悪くはない映画です。ワクワクもするし。どっちかっていうと金曜ロードショーむきの映画。

 

「グランド・イリュージョン 見破られたトリック」

ジェシー・アイゼンバーグ マーク・ラファロ主演 ジョン・M・チュウ監督作品

 

【あらすじ】

1年以上潜伏していたフォー・ホースメンが再び始動する。しかしホースメンの目の前に現れたのは強大な敵だった。ホースメンはなぜか中国・マカオにたどり着いてしまう。

 

【感想】

今回の敵はマカオの魔法よりも科学を信じるハリー・ポッター。

 

上ではちょっと否定的なことを書いたけど、案外肩の力を抜けば楽しい映画。大がかりなマジックショー。確かになんとか現実でできそうなマジックもありつつ、ネタが明かされないものもあって、じゃっかんそこらへんはご愛敬な感じです。ただ今回良かったのは、新ヒロインですね。とにかく言動がかわいらしい。これだけで観る価値がありますよ。最後にまとまったとはいえ、逆に主人公のアトラスは微妙でしたね。確かに最初の映画からエゴはあったけど、ここまでじゃなかったのに。なんだか映画のために無理やり強調されたような気はします。

この映画、一番の謎は結局「アイ」の存在なんですよね。結局誰がどんな目的で組織したものなのか。それはマジックと同じで、明かされることのないことなのかも。

 

「デッドプール」

ライアン・レイノルズ主演 ティム・ミラー監督作品

 

【あらすじ】

トラブルシューターのウェイドは娼婦のヴァネッサと恋に落ちる。しかしウェイドは末期がんだと宣告される。そんな時ウェイドはある男にがん治療の代わりに人体実験をすることに。ウェイドの細胞は突然変異し、不死身の体を手に入れるが、顔は醜く変形してしまった。復讐のためにウェイドはデッドプールとしてフランシスを探す。

 

【感想】

X-MENシリーズ、として観ると肩透かしくらうかも(苦笑)おもしろいか、おもしろくないか、と言われれば個人差があると思います。ただ個人的には全体的に滑り気味のギャグを延々と見せられてる感じでした。

キックアスほどのアクションでもなければ、コミカルさもないんですけど、ただ頭を空っぽにして観るのならいい映画。

主人公のウェイドはとにかくしゃべる。かっこいいか、かっこ悪いか、と言われればどっちでもない。ただ不死身の男。けどなんかアクションまで強くなっちゃった男。

ただ個人的におもしろかったのは、他の役者のいじりですね。あれはあれでよくやったもんだと(笑)

 

author:トモヤムクン, category:-, 12:42
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小さな映画館 第101幕

「ザ・ウォール」

「ドライヴ」

「フィフス・ウェイブ」

「悪魔を見た」

「ディパーテッド」

 

 

「ザ・ウォール」

ボブ・ゲルドフ主演 アラン・パーカー監督

 

【あらすじ】

少年ピンクは父親を戦場で亡くし、過保護な母のもとで育てられた。学校の教師は抑圧的で、ピンクは成長していくごとに、アイデンティティに悩み出す。

 

【感想】

ご存知、ピンク・フロイドの大傑作「The Wall」を映画化したものです。基本的にロジャー・ウォーターズの経験がもとになってはいますが、誰しもが感じる「壁」を題材にしています。では「壁」とは一体何なのか?これはメタファーでもあり、直接的な壁でもあります。人間は生まれて、「社会」というシステムの中に組み込まれ、「国家」の「一員」として教育を受けます。この時点から自己というのは、大きな壁に阻まれるのです。

主人公ピンクは成長する過程で必要な父親という「壁」を失います。それを埋めるように母親が擬似的な「壁」で彼を囲ってしまうのです。そして母のもとから離れると、今度は妻となる女性との関係を築きますが、ロック・スターとなって混乱してしまったピンクは自分自身の壁に阻まれます。そうこうしているうちに妻は別の男と浮気していまい、男は失意の中に落ちてしまいます。薬に手を出し、人生から逃れようとしますが、結局は壁の中からは抜け出せません。脳裏にあるのは「イノセント(純粋)」。頭の中にしか逃げ道がありませんでした。しかしロック・スターとなって再びショーを始めると、今度は観衆がまるでナチスの党員のように、熱狂していく姿を見ます。心や頭でさえ、支配されてしまったのです。

壁というのは人間を閉じ込め、狂気へと導くものです。壁は高く、固い。だからこその虚無感と無力感を味わい、壁の一部になろうとします。しかし時にはそれを破戒する力が必要なのです。

ロジャーはそうした手段を音楽に托しました。

それにしてもボブ・ゲルドフの演技は良かったですね。どんどん病んでいくさまは惹き付けられました。

 

「ドライヴ」

ライアン・コズリング キャリー・マリガン主演 ニコラス・ウィンディング・レフン監督作品

 

【あらすじ】

自動車修理工場で働き、時にスタントマンをこなす男。彼は犯罪の逃走の手助けをする仕事を請け負う、裏の顔をもっていた。ある日男はアパートの隣人の女性アイリーンに恋をする。しかし彼女は服役している夫を待っていた。そんな夫があるトラブルに巻き込まれ、男は力を貸すが、夫は死んでしまう。アイリーンたち家族を守るために、男は自ら仕事を始める。

 

【感想】

ひっさしぶりに痺れた!本当に乾いた空気感の大人な映画です。

主演はあの「ラ・ラ・ランド」で有名なライアン・コズリング。とにかく渋くて、クールでいいですねー。男の背景は殆ど語られないんですけど、どんなあくどいことをやっていても、仁義を守るようなタイプの、結構日本人が好きな主人公ですね。しかしそれでいて冷徹。相手の頭をかちわる様子は、さすがに一般人のアイリーンはどん引きで、これが彼と彼女の境界線を表していました。

あと何よりBGMがいいです。全体的には静かなんですけど、ここぞ、という時に盛大にかかります。それが映画の雰囲気をより良くしてるんです。

この映画にアクションを求めるのなら、ちょっとがっかりするかもしれません。孤独な男の命を懸けた仕事の話だと思えば違いますよ。彼が言った言葉、「一番に幸せだった」、これがあったからこそ、最後に男は生きる、もしくは死ぬ理由を見つけることができたんです。でも、最後はどうなったか、わからないまま「ドライヴ」して終わりましたよね?これもまた憎い演出です。

 

「フィフス・ウェイブ」

クロエ・グレース・モレッツ ニック・ロビンソン主演 J・ブレイクソン監督作品

 

【あらすじ】

異星人による4度にわたる攻撃により、地球は壊滅状態になる。キャシーは生き別れになってしまった弟サムを助けるべく、ひとり闘いを続けるが…。

 

【感想】

 

まあ、そりゃクロエと出会ったら、攻撃やめて、恋に落ちるよね…

 

異星人に勝てるのは「愛」だ!っていうか、ぶっちゃけSFというより恋愛映画だ!!三角関係の映画だ!

いや、まあ映像が綺麗なんで面白いっちゃ面白いけど、パート1のためか、説明不足で一体何と闘ってるのかが漠然としてる。もうちょっと謎や伏線みたいなものを残してくれてたらいいのに、と。

簡単に人類を滅ぼせそうな異星人がなぜに子どもを訓練するのか。ちょいと中途半端な設定。

以上!

 

 

「悪魔を見た」

イ・ビョンホン チェ・ミンシク主演 キム・ジウン監督作品

 

【あらすじ】

パンクしたためレッカー車を待っていた婚約者が何者かに無残に殺された。捜査官のスヒョンは男に復讐するため、残酷な方法で彼をいたぶる。

 

【感想】

孔子曰く「復讐の旅に出る前に墓穴を二つ掘れ」

バイオレンスとエロ。とにかくここら辺の映像は凄い。徹底的に猟奇的な映像で撮られています。

猟奇的殺人犯に対する憎悪が生み出した新たなるモンスターになってしまったスヒョン。とにかく犯人を追い詰め、とことんいたぶりつけますが、犯人もまた恐怖を知らない快楽殺人犯。快楽と憎悪の怪物の闘いです。

これを見て思ったのですが、やはり憎しみや復讐というのに綺麗な結末もないということです。今法的に死刑制度が、ある意味で復讐の代替的な役割を果たしています。しかしスヒョンは非合法的な復讐に燃えます。なぜなら自分の手で葬らなければ、気が済まないからです。そう、もはや恋人が云々ではなく、復讐という魔物に取り憑かれてしまった状態なんです。

最後は一番残酷な殺し方で復讐を遂げました。しかしスヒョンの慟哭でわかるように、単に相手を殺してしまえば、そこからはもはや「無」の世界なのです。何も返ってこない復讐の果ての世界。

イ・ビョンホンの演技も良かったですが、チェ・ミンシクの狂気的な演技が素晴らしかったです。

 

「ディパーテッド」

レオナルド・ディカプリオ マット・デイモン ジャック・ニコルソン主演 マーティン・スコセッシ監督作品

 

【あらすじ】

マサチューセッツ州ボストン南部。警察はこの街に蔓延る犯罪を一掃しようと、犯罪組織の大物コステロを何とか捕まえようとする。そのために警察はビリーを潜入させるが、コステロもまた警察にコリンを潜入させていた。

 

【感想】

オリジナルの「インファナルアフェア」のほうが哀愁があって格好良かったのですが、これはこれでなかなか良かった。ディカプリオ、マット・デイモンの演技はもちろん冴え渡っていたのですが、何よりも存在感を示していたのはジャック・ニコルソンでしたね。彼は何と言うか狂気ある悪役がピッタリで、コステロのあの狂ったような恐ろしさはさすがニコルソンと言った感想です。

 

author:トモヤムクン, category:-, 19:05
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小さな映画館 第100幕

「わたしに会うまでの1600キロ」

「グッド・ライ いちばん優しい嘘」

「Dearダニー 君へのうた」

「キラー・エリート」

「ピエロがお前を嘲笑う」

 

「わたしに会うまでの1600キロ」

リース・ウィザースプーン ローラ・ダーン主演 ジャン=マルク・ヴァレ監督作品

 

【あらすじ】

95年、シェリルは母の死、離婚を経験し、自暴自棄になった心の傷を癒すために数千マイルにもわたって、パシフィック・クレスト・トレイルをひとりで歩き通すことに。

 

【感想】

最近、リース・ウィザースプーンの作品を観る機会が多いですね。今作を観て、彼女の体を張った演技は素晴らしいものでした。

自分を見つめる道というのは孤独で過酷なものです。確かに周囲のサポートは大事です。しかし最後には自分自身の足で立ち上がらなければいけないのです。シェリルは暴力的だった父を恐れ、自分を護ってくれていた母親とそして弟と暮らしていました。確かに生活は豊かではなくても、母の陽気さで明るい家庭で育っていました。しかしそんな母にも死の影が忍び寄ります。受け入れたくない現実から目をそらすために、シェリルは自分の生を投げ出してしまいます。

見つめ直すための道程は決して易しいものではありません。時に若い女性のひとり旅は動物だけでなく、人間でさえ害敵となってしまいます。その中でシェリルは自分の生を自覚していくんです。痛み、悲しみ、優しさ、冷たさ、温かさ、すべてを含めて生きるということなんです。

この旅の後、シェリルはひとりの命ではなくなりました。母がそうしたように、新しい命を守るという、生きる意味を見出したのです。

それにしてもローラ・ダーンの演技も良かったですよー。回想で出てくる彼女の陰と陽の対比された演技はシェリーの悲しみを理解するのに十分でした。

 

「グッド・ライ いちばん優しい嘘」

リース・ウィザースプーン主演 フィリップ・ファラルドー監督作品

 

【あらすじ】

スーダンで内戦が起き、大量の難民が発生する。アメリカが難民の支援を受け入れ、カンザスシティーの職業案内所で働くキャリーは両親を亡くした”ロストボーイ”たちを迎えに行く。ロストボーイのマメールたちは移民の受け入れの状況から、妹と離ればなれになってしまう。

 

【感想】

過剰な演出があるわけではありません。現実を描き、それでいてきちんと映画にしている素晴らしい作品です。

ロストボーイズの生い立ちから、戦争が始まる過程が前半を占めていましたから、どれだけ彼らが辛い思いをしたか、それと同時にどれだけ家族や兄弟を大事にしていたか描かれていたのが良かったです。だからこそ後半のアメリカでの生活や彼らの苦悩に共感できるわけです。

それにしてもタイトルにもなった「Good Lie」は最後に出てくるわけですが、もうここで涙ですよ。救われた命のため、そして愛する兄のためについた嘘。マメールはアメリカでの生活ではなく、故郷の人々のために働く、つまり夢だった医者となる覚悟を決めるわけです。人生の選択というのは時に難しいものですが、それが愛する人のためなら、誰しもが最善の選択をするでしょう。それはきっと嘘をついてでも。

 

「Dearダニー 君へのうた」

アル・パチーノ ボビー・カナヴェイル主演 ダン・フォーゲルマン監督作品

 

【あらすじ】

ベテラン人気ロック歌手のダニーは老いても活動を続けていた。そんな時マネージャー兼親友のフランクから、40年前のジョン・レノンからのダニーへの手紙を渡される。それを読んだダニーは第2の人生を歩むため、大人になって息子家族に会いに行く。

 

【感想】

話としてはわりと普通なドラマなんですけど、それでも面白かったですよ。特にアル・パチーノがおじいちゃんやってるところが(笑)

ダニーの苦悩は一般人の僕でもわかるような気がします。確かに人気も名声もあるけど、ずっと他人の曲を歌い続けるというのは、まるで会社の人形のようです。だからこそロックスターではなく、自分らしく生きようとしますが、ダニーもなかなかうまくいきません。それでも息子夫婦と再会し、息子が血液のガンであることを知り、寄り添うわけですが、もうちょっとここら辺の関係を掘り下げてほしかった。息子も恨むよりも、愛おしい気持ちが出て来たのはわかるんですけど、少し唐突。というかほとんど金で解決してるのが何とも言えない(苦笑)

あとジョンの曲が歌詞に合わせて各所に流れます。ただ、これが若干くどい。もうちょっと控えめなほうがよかった。

でも、なんだかんだ良い映画です。

 

「キラー・エリート」

ジェイソン・ステイサム クライヴ・オーウェン ロバート・デ・ニーロ主演 ゲイリー・マッケンドリー監督作品

 

【あらすじ】

1981年殺し屋のダニーはその職業に嫌気が差し、足を洗う。しかし師匠であるハンターが人質となってしまい、ある組織から元SASの隊員3人を事故に見せかけて殺せという指令が下る。

一方で元SASを守るため元隊員のスパイクが投入される。

 

【感想】

役者でもった映画、というのが感想です。薄毛の激渋おじさんことジェイソン・ステイサムのハードボイルドな演技とクライヴ・オーウェンの正義感溢れる男の演技が良かった。デ・ニーロはうーん、良いキャラだったけど、あんまり魅力的ではなかった。

話も結構ありきたりで、ダニーが恋人のことを回想していたからてっきりどこかの組織に殺されて、それがトラウマとなって、あの少女を殺せなかった、みたいな展開になるかと思いきや、恋人めっちゃ元気でビックリした(笑)しかも最後まで特別事件と関わってこないし。

うーんアクションとしても、まあまあ。何か特筆すべき点があるわけではない。

 

「ピエロがお前を嘲笑う」

トム・シリング主演 バラン・ボー・オダー監督作品

 

【あらすじ】

ハッカー集団のCLAYのメンバー、ベンヤミンが警察に出頭し、ある事件の顛末について語り始める。最強のハッカーMRXについての情報を提供しようと持ちかける。

 

【感想】

良い映画なんだけども、何と言うか映画どころか娯楽作品っていうのは殆どネタを出し尽くしているのだな、と。だからこそもっと視聴者を欺さないといけない!っていう意識が先行し過ぎて、トリックに重点を置いてしまったがために、話自体が若干おざなりでした。

ぶっちゃけ前半は面白かったです。気弱な主人公が自分を主張していくためにハッカーとして腕を見せつつ、失敗を重ねていく姿は良く、彼がなぜ自主したのか、という回想とともに語れていたために引き込まれました。しかしメンバーが全員殺された、っていう当たりから胡散臭いんです。あとMRX。こいつ凄い影響力ある割りには、滅茶苦茶あっさり捕まったのは残念。

最強のネットワークの弱点。それは人であるというテーマは良かったです。もうちょっと、もうちょっとなんだ!この映画はもっとひねれば面白くなる!

 

 

【感想】

author:トモヤムクン, category:-, 16:55
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小さな映画館 第99幕

「AMY」

「ハドソン川の奇跡」

「マンデラ 自由への長い道」

「ボーダーライン」

「ブリッジ・オブ・スパイ」

 

「AMY」

エイミー・ワインハウス 

 

【あらすじ】

27歳でこの世を去ったシンガー・エイミー・ワインハウス。その若き才能は世間からも認められいくが、思わぬ成功とドラッグ、そして父親に対する想いが交差してしまった彼女の痛々しい姿を追ったドキュメンタリー。

 

【感想】

27歳のジンクスってミュージシャンにはあるんです。ただ、それは死を美化したもに過ぎず、本人たちにしたらどうでもいいことでしょう。

エイミー・ワインハウスはリアルタイムで訃報を知った歌手です。何よりも「Back To Black」を買って、家で爆音で聴き、「こんな凄い歌手がいたのか!」と驚いた記憶があります。だからこそ彼女の夭折には驚きました。

この映画はエイミーが駆け出し以前の映像から始まっていきます。ただただ音楽が好きで、歌手になりたい、というよりも歌を歌いたいという少女エイミーの姿がありました。レコード会社も彼女の才能を認め、世間を賑わしていきますが、エイミーにとってただただ歌いたいという純粋な心に、ビジネスという側面がついてきます。映像の中でもエイミーは語ってましたが、自分でやりたいようにやる、というのが本来の彼女の姿勢です。しかしそれをメディアであったり、マネージメントは許しません。彼らにとってそれはビジネスだからです。

エイミーは素直な女性で、飾らない言葉を使ってきました。しかし却ってメディアはそれを過剰に煽ります。

この映画を観ていて何よりも虚しさを憶えたのはやはり、ミュージックというビジネスとメディアというビジネスの関係ですね。いかにビジネスというのは人格を崩壊させていくか、ミュージシャンが図らずもドラッグやアルコール、そしてセックスに溺れる理由が垣間見えます。

そして何と言っても、この映画のキーワードは「父」でしょう。幼い頃に離婚した「父」の不在によってエイミーは非行に走っていきます。全編で語られていましたが、父親がしろと言うならする、という本当に幼い父親想いの心をずっと持っていたんです。しかし非情にも実の父親は休養が必要な娘にツアーの続行を決定させようとします。

あとひとり、ブレイクの存在です。彼もまた過去の経験からリストカットをしたり、とにかく精神的に弱い人間でした。そんな彼といて、ある意味で共犯的なシンパシーに惹き付けられ、エイミーはドラッグに溺れていきます。

唯一彼女がプロになって、成功して良かったな、と思った瞬間は授賞式でトニー・ベネットに出会えた瞬間の表情ですね。あれは本当にこちらも感動しました。しかしその後の「ドラッグなしじゃ退屈」という言葉には確かに悲しいものがありました。

 

ピュアで希有な天才シンガー、エイミー・ワインハウス。今生きていたとしたら、どんな曲を作っていたのか。

この映画を観てから彼女の作品を聴いてみてください。オリジナルアルバムは2枚しか出ていませんが、どちらも彼女の魅力を堪能できます。

 

「ハドソン川の奇跡」

トム・ハンクス主演 クリント・イーストウッド監督作品

 

【あらすじ】

2009年、鳥の群れと衝突したことにより、両翼のエンジンが壊れた飛行機をハドソン川に着水させたサリー機長。国民に英雄と讃えられながらも、NTSB(国家運輸安全委員会)により調査が行われ、左エンジンが動いていたという報告が入る。これによりサリーは果たして自分の決断が正しかったのか苦悩する。

 

【感想】

これね、宣伝の仕方が悪い。日本での宣伝は「英雄だった機長が疑惑の人に!」みたいな感じで、ヒューマンというよりミステリーを強調したような色だった。でも実際鑑賞してみれば、ミステリーとかの要素はなく、サリー機長の苦悩です。

今回の映画で特徴的だったのはいくつか乗客の様子を描いていることです。それによって飛行機というのは乗客の人生を運んでいる、ということが意味されます。だからこそサリー機長とジェフ副操縦士には人命という大きな重みと責任があると強調されているのです。

そしてNTSBは調査をコンピューターで行いました。しかしこの映画の主題でもあるように、飛行機を動かすのは人間です。人的要因。確かにコンピューターがはじき出す計算の中にはベストなものがいくつも出てくるのかもしれません。しかし使命を持った、血の通った人間だからこそ、サリー機長の判断は正しく、その結果が155名の生還です。彼にも家族があります。愛する家族が。だから人間というのは機械に負けない部分もあるんです。

何より90分程度でまとめたのは良かったですね。無駄に冗長になってしまったら、映画の主題もぼやけてきます。

 

「マンデラ 自由への長い道」

イドリス・エルバ ナオミ・ハリス主演 ジャスティン・チャドウィック監督作品

 

【あらすじ】

テンブ人の王族の子として生まれたマンデラ。ヨハネスブルグで黒人として初の弁護士となり、人権を訴える。しかし活動に熱が入るあまり家族をおざなりにしてしまったマンデラは妻と別れることに。ある日マンデラは自分に共感してくれる最愛の女性ウィニーと出会い、家庭を築いていく。しかしマンデラはアフリカ民族会議(NAC)の一員としてテロ活動を行ったことに政府は危機感を募らせ、彼を捕まえ、死刑にしようとする。そうしてマンデラたちの闘いは始まった。

 

【感想】

駆け足ではありましたが、マンデラの人生を描こうと思ったら、何時間あっても足りないですからね。だからこそ重要なことだけをピックアップされた良い映画です。アフリカの歴史やアパレルヘイトに対するメッセージというよりも、この映画はあくまでネルソン・マンデラと妻ウィニーとの関係をメインに、マンデラの苦悩にスポットライトが当てられています。

さてさてアパルトヘイト、という言葉は現代でなかなか聞く機会がないのかもしれませんが、これは歴史ではなく、ちょっと前の話なんです。アフリカではアパルトヘイトができてから白人とそれ以外にわけられてしまいました。様々な制約が設けられ、黒人は制限された範囲で、あまり自由のない生活を強いられました。そんな時、黒人の人権を訴えたのがネルソン・マンデラです。もちろん他にも熱心な活動家はいましたが、彼らは治安を乱す者として捕まってしまいます。

フレデリック・ウィレム・デクラーク大統領はプロテスタントのカルヴァン派の敬虔な信者として、マンデラの釈放を命じました。

マンデラは解放されますが、アパルトヘイトが崩壊の兆しを見せると、今度は混乱が起きました。黒人を恐れる白人、白人と組むことに抗う黒人。そしてそれはマンデラとウィニーの決別でもありました。ウィニーは屈辱的な拷問から、白人たちに対する恐れをなくし、闘うことを選びました。しかしマンデラはあくまで話し合いによる和平を提案します。彼らがなぜここまで気持ちが離れてしまったのか。それは「孤独」です。孤独が人を変えました。

彼らは離別しましたが、問題はそれだけではありません。マンデラ率いるNACに反発する武力勢力が黒人の中から出て来て、今度は黒人同士が殺し合う惨劇となってしまいます。「平和よりも武器をくれ」。長年虐げられてきた人々の感情というのは、当然常人では考えられない憎悪に取り憑かれているものです。

アフリカは人類の歴史を語る上でもっとも長い歴史を持ちます。人類の始まりはアフリカと言われているくらいです。文明も発達していきましたが、いつしか西欧諸国により奴隷として連れられ、つい最近まで黒人の地位は人間ですらなかったのです。人種間、民族間における課題はこれからです。

 

「ボーダーライン」

エミリー・ブラント ベニチオ・デル・トロ主演 ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作品

 

【あらすじ】

アリゾナ州で誘拐事件の奇襲攻撃を行ったFBI。捜査官のケイトは犯人のアジトで無数の死体を発見する。裏庭に仕掛けられた爆弾により捜査官2名が死んでしまう。ケイトは上司の推薦で麻薬カルテルの親玉、ディアスの捜査に参加する。エル・パソに移動したケイトはそこでアレハンドロという謎のコロンビア人と出会う。

 

【感想】

ビックリした。エミリー・ブラントが主演だから、ケイトが主人公だと思ったら、アレハンドロが主人公だった。というか後半ケイトの役割があまりない。まあ視聴者の視点ではあるんですけどね。

本当に強いのは失うものがない者です。アレハンドロは妻と娘を無残な殺され方をされ、復讐の鬼となりました。そうなればどんな相手でも容赦なく殺していきます。元々コロンビアの検事という、謂わば法の下の正義を司る役職だった人間が、非情な暗殺者へと変貌してしまうのですから、人間というのは恐ろしく、それでいて悲しいものです。ケイトは正義を信じ、正義を執行しようとしましたが、場合によっては正義だけでは語れないこともあります。そうした悪という側面の、二元論では語れない部分を感じました。

さてこの映画の良かった点は派手なアクションに走らなかったことです。国境を越えた、麻薬がらみの犯罪ということで、全体的に薄汚れ、乾いた映像で良かったです。

個人的にはベニチオ・デル・トロがいたからこそ、面白味が増した映画でもあります。

 

「ブリッジ・オブ・スパイ」

トム・ハンクス マーク・ライランス主演 スティーヴン・スピルバーグ監督作品

 

【あらすじ】

冷戦中の1957年、ソ連の諜報員アベルはFBIによって捕まった。アメリカは国の司法の公平性をアピールするために、アベルに保険担当弁護士のドノヴァンに弁護をさせることに。しかしドノヴァンは例え国のためであっても法に従うとして、アベルに人道的な処置を求めた。

そんな時ソ連を偵察していたU-2偵察機が墜落してしまう。パイロットのパワーズはアメリカの機密情報を教えるよう拷問されてしまう。

 

【感想】

おもしろかったです。それは事実に基づいているということを加味しても。

何と言うかスピルバーグっぽいなー、って感想です。「人道的」、冷戦下、敵であろうとなかろうと、人と人の交流に国境はないというメッセージは確実にあります。それと司法のあり方。ここら辺は強調され過ぎてかえって、過剰かな、と思ったりもしています。

ただこの映画は冷戦を描きながらも、戦闘シーンは比較的出て来ません。寧ろ戦闘の悲惨さは背後にあるからこそ、独特の緊張感が生み出され良い効果になっていると思います。

確かに国は巨大かもしれませんが、個人と個人ではまた別の話です。とにかくこの映画における登場人物、特にアベルは諜報員といえども感情移入できるほどうまく描かれています。彼にも祖国があって、家族がいる。本当はいたって普通の父親なのです。絵を書くことが好きで、最後にドノヴァンに絵を渡していましたが、あれはアベルが作戦がうまくいこうがいかまいが、彼に感謝していたという証です。

昨今またきな臭い世界情勢になりつつありますが、何とか人種や国境を越えた繋がりというものを再確認するべき時ではないでしょうか。

author:トモヤムクン, category:-, 15:21
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