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小さな映画館 第173幕

「バンディッツ」

「スノーデン」

「ヘアスプレー」

「カリフォルニア・ダウン」

「海街diary」

 

「バンディッツ」

カーチャ・リーマン ヤスミン・タバタバイ主演 カーチャ・フォン・ガルニエ監督

 

【あらすじ】

刑務所で知り合い、バンディッツというバンドを組むことになった女囚のエマ、ルナ、エンジェル、マリーは選挙対策の一環として、警察のパーティで演奏することに。しかし彼女たちは車を盗み、逃走する。レコード会社はバンディッツの音源を流したことにより、彼女たちは一躍有名になるが…。

 

【感想】

いい映画を観ました。ある種の青春映画でもありますし、ある種のヒューマンドラマやエンターテインメントでもあります。

正直全体的に暗いです。

だけどその暗さが曲調にマッチしているんですよね。

最初はパンクっぽい曲から始まるんですけど、次第に優しく、だけど感傷的な曲が多くなっていきます。

正直どこで楽器を調達したのか、PAはどうしたのか、とかそこらへんはご愛敬です。

 

メンバーは逃げながら、友情を深めていくんですけど、案外脆いところで崩れたりするんですよね。

男女関係もそうだし、誰かをなくすという経験も。

それでもそうした経験を乗り越えていったメンバーの最後の演奏。

そしてもう銃はいらないと放り出した瞬間の彼女たちの自由を味わうような表情が切なくてたまりません。どこか「明日へ向かって撃て」の余韻に似ています。

彼女たちは逃亡犯だし、悪人かもしれません。

だけど演奏は純粋なものでした。

とにかく大好きな映画のひとつになりました。

サントラも是非手に入れたいですね。

 

「スノーデン」

ジョセフ・ゴードン=レヴィット シャイリーン・ウッドリー メリッサ・レオ主演 オリバー・ストーン監督

 

【あらすじ】

元CIAでNSA(アメリカ国家安全保障局)職員のエドワード・スノーデンの内部告発により、アメリカによる国際的な監視システムの存在が明らかになった。国を愛する青年エドワードはテロリストだけでなく、一般人にまで適用されるシステムに危機感を抱いていた。

 

【感想】

スノーデンの告白は世界的に話題になりましたけど、日本ではあまり報道されませんでしよね。

というよりもまるで他人事のように感じていたのが正直なところじゃないでしょうか。

この映画は、娯楽映画というよりもスノーデンが一体何を見て、何を伝えたかっただけをそのままシンプルに、ストレートに映画にしています。

 

人一倍愛国心の強いオリバー・ストーンはこの映画を製作するにあたって、国内で資本を得ることができず、同調してくれた国の資本から映画を製作しています。

なにせアメリカの正義と悪が天秤にかけられた映画ですからね。

 

個人的には日本人こそ、本来危機感を抱かなければいけない内容になっています。

スノーデンは実際に日本で暮らし、諜報員として活動していました。

そのうえで日本人を好きでいてくれて、だからこそアメリカに協力的でなおかつ平和的な日本人がアメリカの言うことを1から100まで聞かなければいけないのか、という疑問にぶち当たるんです。

スノーデンが告白したことは、決して裏切られた、という気持ちではないはずです。

日米同盟は同等なものではなく、アメリカが圧倒的有利なもので、脅し同然でアメリカに従っているのは、どんな日本人だって感じているはずです。

だけど逆らえないんです。

この映画でも明らかになりましたけど、アメリカを裏切れば日本のライフラインはすべてストップさせられてしまいます。

つまり脅されているわけです。

そして日本人はどこかでアメリカには敵わない、という諦めがあるんだと思います。

首輪のついた犬、服従する犬。だけどそれで安全と強い主人が得られるんならいいじゃないか、という日本人のなんともいえない事なかれ主義。

 

アメリカという国は僕も大好きです。

自由があって、誰でも発言ができて、それでいてエンターテインメントにも優れている。

そしてアメリカが強くなければいけない、というのもわかります。

アメリカは建前上「民主主義国家」です。

建前上とあえてつけたのは、冷戦があったからです。

「共産主義」に対抗するための「民主主義」で「資本主義」国家。

だけどもアメリカの強さというのは、時に平和をもたらし、時に戦争をもたらします。

彼らが悪と決めたものは果たして本当に悪なのか?

現在とイスラエルとイランの関係を見てもわかります。

イスラエルにはいいところもありますが、イスラエルのやっていることは非人道的です。

それでもアメリカはイスラエルを非難することなく、むしろ同調しています。

 

そしてこの映画で皮肉なところはスノーデンがオバマに期待しながらも裏切られた部分です。

オバマ大統領の時代は、ブッシュ政権後、つまりイラク戦争真っただ中から現れた黒人初の大統領でしたから、自由と民主主義と多様性の象徴のように迎えられました。

しかし現実はアメリカは「Change」しなかったわけです。

オバマ政権のもとでこのスノーデンの告発はなされました。

オバマはスノーデンを匿うのではなく、国家機密を持ち出した罪人として追跡させました。

 

アメリカという国には正義があります。

だけどそれは一貫した正義ではありません。

時にはアメリカのための正義を追求することで、犠牲になる国があるかもしれません。

今はトランプ大統領の時代です。

アメリカ第一主義というのは聞こえによっては他国に干渉しないようですが、実際はわかりません。

アメリカの利益となるのなら、他国にどんどん介入していくかもしれません。

日本は常にアメリカとは一定の距離を保つべきです。

ただアメリカは悪ではありません。

アメリカにもスノーデンのような愛国者が多くいるはずだからです。

 

この映画はそういう啓発という意味では意義のあるものです。

しかしエンターテインメント映画としては、イマイチな部分も否めません。

何を感じ取るかは人それぞれです。

 

「ヘアスプレー」

ニッキー・ブロンスキー ジョン・トラヴォルタ ミシェル・ファイファー クリストファー・ウォーケン主演 アダム・シャンクマン監督

 

【あらすじ】

1962年、まだ黒人差別が色濃く残っていたボルティモア。そこに住むトレイシーはぽっちゃりとした体型ながら、そんなことは気にせず天真爛漫な女の子だった。トレイシーはティーンに人気のテレビ番組の大ファンで、いつか人気ダンサー、リンクと踊ることを夢見ていた。ある日トレイシーは番組に出演することになり、評判を博す。トレイシーの効果でヘアスプレーの売り上げも上がるが、トレイシーは”ブラック・デー”がなくなると聞き、デモに参加することに。

 

【感想】

この映画ってまずジョン・トラヴォルタの女装が話題を先行し過ぎて、そっちばかり目がいっちゃうんですよね(笑)

でもそんな話題性を抜きにしても、この映画は万人が楽しめるミュージカル映画です。

黒人差別の歴史、それを悲痛な面持ちで伝えるんじゃなくて、トレイシーたちが幸せそうな表情で伝えてくれるから、とても心にしみるんです。

 

トレイシーは体型を気にすることがない明るい女の子です。

日本ではどうも痩せた女性が好まれるのかわかりませんけど、女性自身も一生懸命ダイエットに励む子っていますよね。全然太ってないのにも関わらず。だから日本人は病的だと言われることもあります。

だけどトレイシー見ていたら、女の子ってやっぱり愛嬌だよな、と。

もちろんそれがすべてではないですけどね。

トレイシーを見ていたら楽しくなるし、ハッピーになります。

 

友達もいいですよねー。宗教的に保守的な家系で育った子が、最後には反発するように黒人の少年に恋をしたり、ずっとトレイシーの味方になってくれたり。

そしてリンク。そりゃもてますわ。女の子は外見じゃないんだ!なんて言ってくれたら。

トレイシーの両親もいいですよね。トラヴォルタ演じるお母さんは内気で、引っ込み思案。だけど娘を大切に思ってる。そしてクリストファー・ウォーケン演じるこれまたあくの強いお父さんも優しくて。

 

そして今回の嫌味な役を演じてくれたのはミシェル・ファイファーです。なんでしょう、なんであんなに憎たらしい役が似合うんでしょうね(笑)

彼女の発言からどんな非道な手を使ってでものし上がってきたタイプの人間です。

だからこそ天然でピュアなトレイシーの存在は目の敵でしょう。

 

昨日は過去になり、歴史になります。

明日という未来は明るいんだ、と思わせてくれるハッピーな映画です。

 

「カリフォルニア・ダウン」

ドウェイン・ジョンソン カーラ・グギノ主演 ブラッド・ペイトン監督

 

【あらすじ】

ロサンゼルス消防局のレスキュー隊員レイは、かつて娘をひとり失ったことで心を閉ざしており、妻とも離婚手続きをしていた。そんな時カリフォルニア州を大規模な地震が襲い、妻のエマと娘のブレイクが巻き込まれてしまう。

 

【感想】

日本人にとって地震や津波というのは常にそばにある自然の脅威です。

こないだも大阪で震度6弱の地震があり、死者を出しました。

この映画は若干の大袈裟なアクションはあっても、決して笑いごとではないんです。

 

ただあくまでエンターテインメント作品ですから、ご都合主義はいくつもあります。

それをふまえて結構ハラハラしておもしろいんですよね。

娘のブレイクは異様に父親に知識を吹き込まれていたり、大手建設会社に面接にきた無駄にマッチョで弟連れのベンとつり橋効果で恋仲になったり、まあ映画の醍醐味をいろいろと詰め込んでますね。

そして義父になるはずだった男はエゴイズムのかたまりで、最終的には死んでしまいました。だけど彼を責められないところもあります。誰もが自分のために生きようとしてしまうのは、極限状態ではありえなくないですから。

 

個人的にはあの優しい老夫婦が、タイタニックのあの老夫婦のように抱き合って亡くなったシーンが何よりも辛かったです。

 

地震はある程度予知できるようにはなってきましたけど、まだまだそれは未熟な状態です。

今でも首都直下型地震や、南海トラフ、東海地震が予測されています。

だけどそれがいつ起こるのかわかりません。

例えばわかったところで、それを忠告したら大勢の人がパニックになって余計にことが大事になることもあるんです。

非常時というのは人間の冷静さが求められます。

 

「海街diary」

綾瀬はるか 広瀬すず 長澤まさみ 夏帆主演 是枝裕和監督

 

【あらすじ】

鎌倉市で暮らす三姉妹は、家を出て行った父親の訃報を聞き、葬儀へ出かけた。そこで彼女たちは父親の異母妹のすずと出会う。すでに母を亡くしていたすずは、父の再婚相手と暮らしていた。長女の幸はいっしょに暮さないか、とすずを誘う。

 

【感想】

こんな美人姉妹ばかりが産まれるって、父ちゃんどんだけイケメンなんだよ…。

 

「万引き家族」がパルム・ドール賞を受賞したことで話題になりましたね。

是枝監督というのは、派手な演出ではなく、控えめながら人間の静かな心情を描くのがうまいな、と思う監督です。

海街diaryでは性格の異なる4姉妹が各々を支え合いながら生きている姿を描いています。

父は出ていき、母もまた娘たちを捨てて出ていきます。

家族というかたちは両親がいて、そして子どもたちがいて初めて成り立つものだと思います。

だけどそうしたかたちを両親たちが放棄してしまったのです。

 

家族のために犠牲となろうとする長女の幸。

対照的に自由奔放に生きたい佳乃。

つかみどころのない三女の千佳。

そして両親を亡くして、居場所をなくしてしまった異母妹のすず。

 

三姉妹にとって家族はすでにこの三人だけでした。三人が身を寄せ合ってなんとか家族を保っているという状態です。

そんな中にすずがやってきたのです。

ずっといっしょに暮してきた三姉妹と違って、例え同じ血が流れてるとはいえ初対面の姉妹と暮らすことって簡単じゃありませんよね。

だけど姉妹たちは徐々にすずを受け入れるようになっていって、本音をぶつけたりしていきます。

すずにとってもそこは「家」になり、家族となることができました。

 

この映画の(原作は漫画ですけど)おもしろいところは、姉妹、つまり女性だけの家族なんですよね。

姉妹だけで生きていく感じは谷崎潤一郎の「細雪」を思い起こします。

家族というのは血だけではありません。

信頼というかたちがあって初めて成り立つんです。

 

author:トモヤムクン, category:-, 12:44
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小さな映画館 第172幕

「野獣死すべし」

「チャイルド・プレイ」

「メイズ・ランナー2 砂漠の迷宮」

「ブラインド」

「トレマーズ」

 

「野獣死すべし」

松田優作 鹿賀丈史主演 村川透監督

 

【あらすじ】

ある大雨の夜、警視庁捜査一課の警部補が刺殺され、拳銃が奪われる事件が起きた。さらにその拳銃を使った何者かがカジノ強盗を起こし、世間は騒然とする。

数々の戦場で地獄を見てきた通信社の外部記者伊達は社会と隔絶した生活を送っていた。

 

【感想】

名作中の名作であり、松田優作の演技が映えるんですよ。

特に瞬きせずに「リップ・バン・ウィンクル」の寓話を話すシーンは名シーンです。

 

戦場カメラマンの伊達はベトナムなどの地で、地獄のような沙汰を見てきました。

元々頭脳明晰な彼だからこそ、狂気が一層増したのでしょう。

寓話の中に出てくる「狩りをできる自由」というのは、戦場での人殺しのことを言っています。

それをそのまま伊達は日常に持ち込んできたんです。

 

しかし平和な日本の、それも高度経済成長期の日本人にとって戦争は遠い話です。

伊達の戦争の悲惨さをリアルに切り取った写真はどこにもうけません。

だからこそ伊達は日常とのギャップを感じ、孤独を感じていました。

そして彼は日常に非日常を持ち込むように、ひとりの兵士となって事件を次々に起こします。

彼にとっては戦場ですから人を殺すことに躊躇いはありません。

 

野獣というのは死をためらわない存在です。それは自己に対しても、他者に対しても。

それをつくりあげるのは社会の孤独や戦争といった環境なんです。

 

そして最後の解釈は難しいですね。

クラシックを聴きながら、気が付くとひとりになっていて、最後はあの刑事に撃たれる。

満席の会場で聴いていたと思っていたら、自分はひとりだった。

常に孤独だったわけです。

そして最後には報復と代償を受ける。

 

「チャイルド・プレイ」

キャサリン・ヒックス クリス・サランドン主演 トム・ホランド監督

 

【あらすじ】

殺人鬼チャールズ・リー・レイは逃亡中に刑事のマイクに撃たれ、致命傷を負う。死の直前におもちゃ屋にあった人形に対してブードゥー教の魔術を唱え、人形に魂を移す。

幼いアンディはグッドガイという人形が欲しかった。母親のカレンはアンディのために、格安で人形を手に入れる。しかしその人形は幼いアンディの体を手に入れようとしていた。

 

【感想】

人形が怖いと思うのは、人をかたどっているからでしょうね。

日本人形も持ち主の霊が宿るとか言われて、人形は処分というよりも供養されることが多いです。

 

チャッキーはその中でもアメリカ人形ならではの怖さがあります。

というか、なんであんな人形が売れるんだろう(苦笑)

とにかくチャッキーが刃物を振り回す姿は怖いですよ。

焼け焦げても心臓を撃ちぬかない限り死なないんですから。

ただこの事件って、人形が殺人鬼だとわかると、罪状ってどうなるんだろうか?

 

「メイズ・ランナー2 砂漠の迷宮」

ディラン・オブライエン カヤ・スコデラリオ主演 ウェス・ポール監督

 

【あらすじ】

迷宮から出ることができたトーマスたちは、WCKDという組織と対峙する。彼らは施設から抜け出し、砂漠を歩き続ける。

 

【感想】

前作が理不尽な迷路もので、今回はゾンビもの。

決して面白くない作品ではないはずなのに、素材を生かしきれない味の悪さがあります。

話が唐突だったりすることが多々あるのが難点です。

 

新しく出てきたブレンダという存在やRA。

彼らと行動をするのはいいんですけど、結局あの一作目の迷路はなんだったのか。

そこらへんがよくわからない結果に。

だけどまあお金はかかってるから、それなりに楽しめるんですよね。

ただ個人的にはトーマスの独断があまり好きじゃないんだよなぁ…。

 

「ブラインド」

キム・ハヌル ユ・スンホ主演 アン・サンフン監督 


【あらすじ】

警察学校に通うスアは、同じ施設で育った弟のような存在男をダンスクラブから連れ出し、帰ろうとした途中交通事故に遭う。彼は亡くなり、スアは視力を失ってしまった。3年後、スアは乗っていたタクシーの異変に気付く。運転手は失踪事件の犯人だった。

 

【感想】

キム・ハヌルは美人ですねー。

そしてサイコパスの犯人。本当に表情もそれっぽくて、結構その狂気に震えました。

 

孤児院で育ち、正義感の強いスアは弟(のような存在)を亡くして以降、罪の意識にとらわれています。

自分が殺してしまったという後悔。

そしてそんな弟のようにやんちゃギソプに気をかけるようになります。

なにせ命を救ってくれた恩人ですからね。

ギソプも口ではなんだかんだ言いながら、正義感の強い青年です。

そして刑事さんは悲しかったですね。

少しお人よしだけど、この人もまた正義感が強い。だからこそあのフェードアウトは少し可哀想な気がしました。

 

そして犯人はサイコパスですから、あまり動機という動機がありません。

強いて挙げるのなら、他人を見下しているということですね。

支配欲というか。

もうちょっとこの犯人の掘り下げも欲しかったかな、というのが正直なところです。

サイコパスでも殺人に至るにはある程度経緯があったりしますからね。

 

ただスアが視覚障害ということがあり、緊張感がありました。

これが普通に目が見えていたのなら、恐らく平凡なストーリーになっていたんだと思います。

見えないからこそ、見えるものがあるというものです。

人の心がそれかもしれませんね。

スアは誰よりも敏感ですから。

 

「トレマーズ」

ケヴィン・ベーコン フレッド・ウォード主演 ロン・アンダーウッド監督

 

【あらすじ】

ネバダの砂漠地帯にある小さな村で、地震のような揺れを観測する。しかしその正体は謎の怪物だった。

 

【感想】

B級っぽさがありつつ、なかなか面白いです。

とにかく怪物の説明がありません。一体どうやって生まれたのか。なぜこの地帯に何頭もいるのか。なぜ今頃になってあらわれたのか。

だけど砂漠のジョーズのように、地下からどんどん人間を追い詰めていきます。

単に音に反応するだけかと思ったら、実は落とし穴も作れるという利口さ。

 

この作品からどんどんシリーズ化していくわけですけど、1作目にして強烈なインパクトを残しています。

 

 

author:トモヤムクン, category:-, 09:33
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小さな映画館 第171幕

「PK」

「ミッション;インポッシブル/ローグ・ネイション」

「南極料理人」

「紳士は金髪がお好き」

「荒野のガンマン」

 

「PK」

アーミル・カーン アヌーシュカ・シャルマ主演 ラージクマール・ヒラーニ監督

 

【あらすじ】

人間の見た目をした裸の宇宙人は、調査としてインドに降り立った。しかし母星へ帰るためのコントローラーを奪われてしまったために、彼は様々な場所を転々とする。そこで人間たちと触れ合い、言語や文化を学んでいく。

一方ベルギーでジャグーという女性とサルファラーズという男性は恋に落ちる。しかしサルファラーズがパキスタン人だとわかると、ジャグーの父親は反対する。猛反対を振り切って結婚しようとしたが、彼は現れず、代わりに結婚できないという手紙だけわたされた。それから数か月後ジャグーはテレビ局に勤め、様々なネタを探すことに。ある日黄色のヘルメットをかぶった妙な男と出会う。

 

【感想】

ボリウッドがなぜこんなに人の心を動かすのか。それは映画としてすごく純粋だからだと思います。

「きっとうまくいく」の監督&主演のタッグということで観ました。

結論からいえば最高です!

コミカルな部分もありながら、それでいて社会情勢なんかを背景に盛り込んでいる部分もあって、非常にバランスがいい。

 

まず宇宙人がやってくるというの陳腐な設定であっても、ピュアな宇宙人だからこそ宗教や人種の問題につっこんでいく姿は面白かったですね。

みんな神様、神様っていうけど、神様ってなにをやってくれるんだ?と。

 

少しだけインドの歴史的背景を語ると、インドとパキスタンは元々同じ国でした。

しかしヒンドゥー教と回教(イスラム教)の対立により、現在に至るまで印パの睨み合いは続いています。

ジャグーはほぼカルト的なヒンドゥー教の両親のもとで育ち、サルファラーズはパキスタン人です。

彼らが出会ったのがベルギーというのもまたいいですよね。

ここではふたりの人種も宗教も関係ないんですから。

 

そして様々な宗教の考えをインプットしたPK(ヨッパライ)は宗教の本質と真理にぶち当たりました。

これがまったく真っ白な考えだったからこそうまれたものですよね。

宗教っていうのは外見で決まるんでしょうか?肌の色で決まるんでしょうか?違いますよね?そんな印はどこにもないんですから。勝手にそういう印をつくっているだけなんです。

そうした人間の恐怖心を巧みに利用して金を儲けようとするのが、カルト宗教の教祖です。

彼らのやっていることを、最もピュアなPKがどんどん暴露していくさまは見ものです。

 

ただ最後は切ない気持ちになりましたね。

PKは人間に近づくことで、恋という感情が芽生えてきます。

だけどジャグーには愛する人がいて、それでも誤解がもとで離れ離れになっている。

PKは嘘をついたんです。初めて、優しい嘘を。

彼女のことを好きなのに、それを隠しました。

流れる涙が優しく、そして切なかったですね。

 

でも結局他の宇宙人を連れて地球へ戻ってくるという(笑)

いや、戻ってくるんかい!!と思わずツッコんでしまいました。

 

割とコミカルなんですけど、テロによって最初に助けてくれた兄貴分をなくしたりする展開があったり、やるせない思いがありましたね。

いくらだって宗教の過激派はいるわけです。

でもPKの「神は二人いる。創造主と、あんたがつくった神様。宇宙をつくった神様は自分で自分のことを護れる」はいいですね。

 

本当にインドでよくこういう映画を撮れたと思います。

パキスタンの問題や、宗教の問題。

それくらいインドでも自由主義的な考えが広まっているんでしょうね。

 

「ミッション;インポッシブル/ローグ・ネイション」

トム・クルーズ ジェレミー・レナー サイモン・ペッグ レバッカ・ファーガソン主演 クリストファー・マッカリー監督

 

【あらすじ】

IMFのエージェント、イーサン・ハントは謎の組織「シンジゲート」を追っていた。

一方違法捜査やミサイルの件でIMFは問題視され、CIA長官はIMFの解体を求めていた。問題のイーサンを国際指名手配をして捕らえるように命令が下る。

罠にはまり、拷問を受けていたイーサンはシンジゲートの構成員である女性イルサによって救われるが…。

 

【感想】

ようやくIMFのメンバーが固定された感じで、メンバーの結束力が見られました。

前回は前線にいたブラントも背広を着て、長官と渡り歩いたり、逆にベンジーは現場に乗りこんだりとチームの安定感。

そしてイルサというイギリス諜報員の登場。今回のヒロインです。

 

今回は裏で活躍する諜報員たちというのは、存在が知られないからこそ、使い捨てにされてしまうという惨状をあらわしていましたね。

それはどこの国だろうと変わりません。

当人たちは国のために命を張っているのに、使い捨てる側は言葉ひとつで終わる。

 

シンジゲートの正体はイギリスの長官が考えた計画を元諜報員のレーンに横取りされたものでした。

ただこのレーンがイマイチ魅力がないのと、個人的に声があんまり好きじゃない(偏見)

だけどイーサンがやられた方法で捕らえたのには少し笑っちゃいました。

そしてIMFの功績を認めさせられたCIA長官がIMF長官となり、新たな仲間(?)になって終わったわけですけど、あのおっちゃん、新作ではどういう言動をとるのか。

 

そしてヒロインのイルサですけど、正直ジェーンのほうがエロティックで好きでした(ボソッ)

 

「南極料理人」

堺雅人 生瀬勝久 きたろう主演 沖田修一監督

 

【あらすじ】

事故でけがをした隊員の代わりに、南極観測隊員の調理人として派遣された西村。閉ざされた空間の中で隊員8人のために、西村はあらゆる工夫をして料理を振る舞う。

 

【感想】

1年間とはいえ、南極に行ってこいなんて言われたら、どうです?いくら他の隊員がいるとはいえ、家族にも会えない、周りは真っ白な雪景色。それが365日続くんです。

代り映えの無い日が続くというのは、案外苦痛なんですよね。

だからこそ毎日の料理が変わるということはある意味で刺激になるんです。

 

この映画にはこれといってドラマがあるわけじゃありません。淡々とした日々が過ぎていく様子が描かれています。

だからこそ単調な日々にストレスが溜まっていく隊員の姿が生々しいんですよね。

西村の作るご馳走はどれもおいしそうで、いいなー、と思いながら観ていたんですけど、これってぬくぬくとした家で観ているからのんきにそう思えるんですよね。

彼らはもっと閉塞的な場所でそれを味わっているわけですから。

だってオーロラよりもラーメンのほうが大事になるんですよ。それくらい極限状態なんですから。

日常の大切さがよくわかります。

 

そして観測隊から帰ってきた後の対比もいいですね。

あんなに日本に帰って家族といっしょにいたかったのに、なんだか刺激のない毎日。

それでいて手軽に食べられるハンバーガーを食べて、うまっ!と言うんですから。

 

当たり前の日常の大切さ、食べるのことの大切さ。

それができるっていうことは恵まれてるんですよね。

 

「紳士は金髪がお好き」

マリリン・モンロー ジェーン・ラッセル主演 ハワード・ホークス監督

 

【あらすじ】

ショー・ガールのローレライはお金持ちに目がなく、富豪の御曹司ガスと婚約をしていた。パリで挙式をあげるために豪華客船を予約したが、ガスの父親が反対したことで彼は乗船しないことに。そこで彼女は親友のドロシーといっしょに乗船する。ドロシーはマローンという男性と出会い、惹かれ合うが…。

 

【感想】

マリリン・モンローに目がいきがちですが、この映画は間違いなくジェーン・ラッセルが目玉の映画です。

とにかくお金持ちが大好きなローレライって、普通同性から嫌われそうな感じですけど、なんというか嫌味がないんですよね。そこをドロシーはわかっているのかもしれません。

一方のドロシーはお金よりも、人としての性質を大事にしていました。

 

映画の話はシンプルで、とにかくジェーン・ラッセルとマリリン・モンローのやりとりを楽しむ映画です。

ミュージカル映画のわりにはミュージカルも少なく、だけども印象に残る明るい歌ばかりです。

ただ、歌ってる内容は…(笑)

 

そして見どころはいろいろあります。

ローレライが窓から出ようとして引っ掛かり、男の子に助けてもらうシーンや、マッチョマンの軍団、それに法廷侮辱罪、偽証罪確定のドロシーによるローレライの変装と愛の告白。

そして茶番劇と化した法廷(笑)

とにかく明るくて、いい映画ですよ。

 

「荒野のガンマン」

モーリン・オハラ ブライアン・キース主演 サム・ペキンパー監督

 

【あらすじ】

南北戦争が終わって数年後、元北軍兵のイエローレッグは、復讐を果たすために元南軍兵の男を捜していた。男タークを見つけると殺されかけていた。自分で後で殺すために彼を助けると、彼の相棒ビリーとともに素性を隠して銀行強盗の計画に加担する。

目的の銀行に着いた3人はダンスホールで働くキットという女性と出会う。別の無法者が銀行強盗をして逃げ出した時、イエローレッグは発砲すると、運悪くキットの息子に当たって殺してしまう。

 

【感想】

荒野の7人、荒野の用心棒、夕陽のガンマン…いろいろややこしい。

 

復讐からはなにも生まれない。いや、憎しみだけが生まれる。

ただ、事故とはいえ息子が殺されたのにも関わらずキットはあんまり悲しんでる様子がないのがなんとも。

イエローレッグも、なんであんなタークみたいな男にやられたんだろう。もっと強敵かと思ったらそうでもないし。

じゃあ銃撃戦があるかといえば、終盤くらいしかないんです。

まあ南北戦争の傷跡という歴史的背景があったり、奴隷のことがあったりと、そういう部分もわかるんですけど、全体的にテーマが薄い。

author:トモヤムクン, category:-, 14:09
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小さな映画館 第170幕

「イエスタデイ」

「レジェンド・オブ・ゾロ」

「アイアンクラッド」

「ゼロの未来」

「レッド・ダイヤモンド」

 

「イエスタデイ」

ルイス・ウィリアムズ主演 ペーテル・フリント監督

 

【あらすじ】

ビートルズが世界中を席捲していた1960年代。オスロに住む高校生4人組はスネイファスというバンドを組んで、自分たちもビートルズのようになりたいと夢を見ていた。ポールに心酔していたキムは、ある日映画館で出会ったニーナという少女にキスをされる。それ以来彼女のことが気になるが、転校生としてやってきたセシリアの危機を救ったことでふたりの距離が近づく。

 

【感想】

青春。青春。ひたすら青春。

どんな時代でもやっぱり十代のころって、すごくいろんなことが新鮮なんですよね。

今も昔もビートルズはアイドルです。

いつの時代だって若者を熱狂させるんです。

 

キムは飛び込み台から飛ぶことができなかった、という恥ずかしい記憶がありました。

こういう自意識ってありますよね。

そして女の子たちの関心をひく目的もありつつ、バンドを始めました。

 

ニーナというなんだか不思議な女の子と出会い、あまりにも唐突な出会いと、唐突なキスのためにキムは考える時間を与えられずに彼女のことを考えてしまいます。

だけど転校してきたセシリアのことも気になり始め…。

でも最終的には近くにいて、お互いケンカしたりしたセシリアとよりを戻しました。

ああ、甘酸っぱい。

歌で彼女に想いを伝えるシーンも良かったですね。

 

そしてノルウェーの一部の社会的背景も描かれていましたね。

反アメリカの共産主義系のデモ。

だけどキムたちはそんなのお構いなし、というか、無関心でしたけど。

 

好きな人は好きな映画だと思います。

ただあんまりビートルズ色は強くないんですよね。思った以上に。

そこだけは残念でした。

 

「レジェンド・オブ・ゾロ」

アントニオ・バンデラス キャサリン・ゼタ=ジョーンズ主演 マーティン・キャンベル監督

 

【あらすじ】

カリフォルニア州がアメリカ合衆国31州目になるための投票をするときに、ジェイコブはそれを妨害しようとしていた。しかしそこに現れたの英雄ゾロだった。ゾロであるデ・ラ・ベガは妻のエレナからゾロとしての活動をやめて、息子のホアキンといてほしいと願う。ある日呆れあエレナは離婚を申し立て、アルマン伯爵と付き合うように…。

 

【感想】

前作が復讐ものだったのに対し、今回は家族ものです。

息子のホアキンがまたいい味してるんですよね。

 

デ・ラ・ベガはゾロという英雄であり、今回は父親面を見せてくれますし、エレナは相変わらず強気な奥さん。

そしてホアキンはさすがの血筋というべきか、勇気があり、そして危険に自ら突っ込むから、親は心配でしょうね(苦笑)

だけども彼が3代目のゾロになるんだろうな、というの容易に想像できます。

 

さて今回はニトロでアメリカを分断させ、ある組織がアメリカを牛耳ろうとするわけです。

アルマン伯爵はなんというか、色男だけど、どこか間抜け。

ジェイコブは見た目からわかる悪人面。

 

だけど全体的にコメディ色が強くなり、よりエンターテインメントになっていますね。これが賛否の原因ですかね。

でもワクワクさせてくれる要素はたっぷりなんですよ。

アクションの醍醐味をわかってる感じで。

 

ただやっぱり全体的に王道過ぎて、安っぽいところもあります。

 

「アイアンクラッド」

ジェームズ・ピュアフォイ ブライアン・コックス主演 ジョナサン・イングリッシュ監督

 

【あらすじ】

1215年ジョン王の権力を制限するマグナカルタの署名。意に反して署名させられたジョン王は反旗を翻し、全権力を奪回するために国中を暴れまわる。ロチェスター城にまで迫ったジョン王率いる軍団。そこに立ちはだかるのはたった20人の男たちだった。、

 

【感想】

どこか日本だと楠木正成を思い起こしますね。

 

ジョン王はイギリス王の中でも「失地王」や「欠地王」などと呼ばれ、評判は良くないんです。

というのもフランスにイギリスの領土を奪われた原因になった人物ですからね。

だからこそジョン王の後に、ジョン○○世という王は出てきません。

 

そんなジョン王が対峙するのは籠城する20人の男たちです。

第1次バロン戦争の中、史実に基づく映画になっています。

実際の数はもう少し多かったようですが、20人にしたのはわかりやすいからかな?

 

主人公のマーシャルは元十字軍の騎士です。神の名の元とはいえ、彼はそれがトラウマになっているようで、その後悔が随所にみられます。

そんなマーシャルが恋をしたのが、城主の嫁。

ちょっとしたラブロマンスを交えつつ、映画は進行するんですけども、やはり史実がもとになっているだけあって、英雄的な、ドラマチックな展開が続くわけではありません。

男爵が手足を切られて殺されたり、兵糧攻めにあって苦しんだりと、決して爽快なアクション映画ではありません。

しかし当時のイギリスを知るには興味深い映画です。

 

救援といいますか、最後にフランス軍がやってきてジョン王が撤退をします。

ちなみにこの時のフランス王フィリップ2世です。

フィリップ2世はジョン王からイギリスの領土を奪い、フランスというひとつの国家になったことから、フランスでも有名な王様です。

 

アクションを期待すると、肩透かしするかもしれませんけど、歴史映画としては素晴らしい映画でした。

 

「ゼロの未来」

クリストフ・ヴァルツ メラニー・ディエリー主演 テリー・ギリアム監督

 

【あらすじ】

世界はマンコム社によって支配されていた。自分のことを「我々」と呼ぶ変人のプログラマー・コーエンは「人生の意味を教えてくれる電話」が再びかかってくるのを待っていた。

 

【感想】

テリー・ギリアムは難解なんですけど、とにかく世界観が奇抜で引き寄せられるんですよね。

 

コーエンは人生に意味を見出せない現代人です。要求されたことを淡々とこなし、仕事をする。

彼が待ち望むのは「人生の意味を教えてくれる電話」だけです。

しかしそれは受け身なことで、かかってくるかどうかもわからないものを、追うのではなく、待つのです。

 

15歳のボブもまた多感な時期であるはずなのに退屈な人生を送っていました。彼もまた孤独でした。

ペイズリーも同じです。

コーエンはバーチャルの世界でペイズリーと接触し、徐々に彼女に対する好意が増大し、孤独から抜け出そうとしました。

しかしそれは許されませんでした。

 

ゼロは常に100%でなければいけない。

ゼロとは無なのでしょうか?

0と1ではまったく違いますよね。

1という個体も0になってしまえば、何者でもなくなってしまいます。

そうした0という虚無にむかってひたすら仕事をするコーエン。

それでも彼は電話という希望を持っていました。

ボブは体を壊し、ペイズリーは逃げてしまい、仕事からも外されてしまう。

すると一体コーエンには何が残るのか?

コーエンは一体何で構成されているのか。

彼らが奪われたことで、コーエンという存在は無になってしまうのでしょうか?

 

バーチャルという世界に逃げ込み、幸せを感じながら生きることもひとつの人生ですけど、現実の世界で生きる幸せって何でしょうね?

 

「レッド・ダイヤモンド」

マーク=ポール・ゴスラー クレア・フォーラニ ブルース・ウィリス主演 マックス・アダムス監督

 

【あらすじ】

やり手の泥棒で有名なジャックの自宅に、音沙汰がなかった元仲間のカレンが現われる。ボスだったエディに頼れた仕事をしくじり、追い詰められていた。ジャックは昔の仲間を呼び戻し、彼女の手助けをすることに。

 

【感想】

うん、普通。

普通ってか、あんまり見どころのない映画。

ブルース・ウィリスは悪役として出てくるんだけど、いつものようにド派手なアクションするわけでもなく、ただ突っ立てる印象。

主人公もイマイチ存在感がない。

だからこそEDのNG集が寒い。

 

author:トモヤムクン, category:-, 11:22
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小さな映画館 第169幕

「サリヴァンの旅」

「Ghost in the Shell/攻殻機動隊」

「日本で一番悪い奴ら」

「ベテラン」

「ペインレス」

 

「サリヴァンの旅」

ジョエル・マクリー ヴェロニカ・レイク主演 プレストン・スタージェス監督

 

【あらすじ】

ジョン・サリヴァンはコメディ映画の監督として成功を収めていたが、ある日から社会派の映画を撮りたいと熱望する。サリヴァンは現実を知るためにホームレスの恰好で旅をする。ある日サリヴァンはハリウッドのカフェでブロンドの美女と出会い…。

 

【感想】

これは名作です。ユーモアの本質を描いた映画です。

映画監督って結構社会派の監督は多いですよね。社会問題を啓発するような映画もいくつもあります。

もちろんそれはいいことではあるんです。

だけど、例えば社会問題を取り上げたい、というだけのエゴで映画を撮ろうとしたのなら、それは欺瞞の映画でしかありません。

 

サリヴァンが社会派映画を撮ろうと思ったのも、懐に余裕があり、地位と名声があるからです。これがもし映画でのし上がってやろう、社会問題を提起してやろう!という情熱を持っているのなら、安易な理由では立案しません。

召使のひとりも忠告しましたよね。知識人や富裕層は貧乏人を勝手に弱者に仕立て上げてるって。そうなんです。当然救われるべき人はいます。だけどそればかりじゃないんです。

弱者と位置付けることで、すでに優越性を保とうとするエゴがあります。

それはホームレスに対しても、黒人に対しても同じなんです。だから彼らの描写が多かったんです。

 

サリヴァンは美女(名前なし)と出会い、いっしょに旅をします。だけどお金がなければ何も食べられない。そういう時にドーナツを無料でくれる店主がいるんです。以前まではサリヴァンはドーナツの味に関して無関心だったのに。

そしてサリヴァンは貧困者に金をばらまくという方法に出ます。

これが最善だと考えましたが、当然のことながら、そんなに金を持っている人間だとわかれば襲われますよね。

これも貧困者を弱者として扱うことでの油断でしかないんです。

 

結局サリヴァンは囚人となり、黒人たちといっしょにコメディ映画を観ます。

みんな笑うんです。

黒人も囚人も、平等に。

そこでサリヴァンは人を幸せにすることの本質を知りました。

 

この映画は1941年公開です。世界は戦争に走り、アメリカでは多くの失業者を出していた時代です。

そういう時代だからこそ、みんなが笑うことのできる娯楽というものが必要なんです。

笑うことは、泣くことよりも幸せなことなんです。

 

「Ghost in the Shell/攻殻機動隊」

田中敦子 大塚明夫主演 押井守監督

 

【あらすじ】

公安9課の草薙素子は認定プログラマーの国外逃亡を斡旋する外交官暗殺の任務を遂行する。後日外務大臣の通訳が電脳をハッキングされる事件が起き、他人の電脳をゴーストハックして人形のように操る国際手配中の凄腕ハッカー、通称「人形使い」の犯行であることが浮上した。

 

【感想】

アニメシリーズも大好きで、レンタルしては観てましたね。とにかく押井守の世界観は哲学的で難解ではあります。だからこの映画も初見では理解できない部分が多かったです。

 

結局のところ「人形使い」とは自我に目覚めたAIです。

これって95年の時点での映画ですから、すごいですよね。

多くの人がAIって言葉すら曖昧だったのに。

AIが自我を持ち、子孫を残すという手段を試みます。

 

AIは多大なネット空間から生まれ、自分が何者であるのかを学習していったのです。

個体を持たない生命体。

だけど自我はある。

 

そして同じ悩みを抱えていたのが素子でした。

素子も脳以外の体は義体であり、ある意味でサイボーグです。

しかしだからこそ自分は人間なのだろうか?生命体なのだろうか?というアイデンティティの疑問にぶち当たります。

海に体を沈めてみたり、死を考えてみたり。

 

ふたりは同じ苦悩を持つ者同士として、融合します。

肉体(Shell)と魂(ゴースト)はかけ離れたものなのか、それとも一体なのか。

 

人間にとって記憶とは幻なのかもしれません。

体験したことはすべて記憶がつくりあげているのかもしれません。

自分という存在も虚構かもしれない。

魂という存在の有無。

実在の有無。

 

本当に難解なんですけど、一見の価値はあります。

 

「日本で一番悪い奴ら」

綾野剛 YOUNG DAIS 中村獅童主演 白石和彌監督


【あらすじ】

諸星要一は大学時代の鍛えた柔道の腕を買われ、北海道警の刑事となる。諸星は正義感を持っているが、なかなかうだつが上がらない。そんな中先輩刑事の村井からのアドバイスで、暴力団の中に「S(スパイ)」をつくれとアドバイスをする。暴力団と協力して署内でもエースとなるが…。

 

【感想】

おもしろい!こういう邦画を待ってた。

とにかく組織の腐敗と、真っすぐで正義感があるゆえに黒く染められてしまっていく諸星の過程が見ていてハラハラします。

柔道馬鹿で、正直頭もよくない諸星ですが、実直で正義と思えばそれを遂行する。

だからこそ悪に染まりやすいんです。

 

実際の事件を基にしているんですけど、組織がなぜ腐敗していくかってよくわかります。

部署ごとの競争、ノルマ。これが達成できないとなると人間って追い込まれるんですよね。

だからこそ違法的な行為に走るわけです。

 

毒を以て毒を制すっていうのは個人的にもありだと思うんです。

だけどそこで善悪の判断ができるかどうか。

 

最後で判明するんですけど諸星はとにかく違法だろうと拳銃の押収することで、道警に恩返しをしてるんですよね。

組織に忠誠を誓ってるんです。

自分を拾ってくれたからって。

それに麻薬を取り締まる側の人間でもあることから、自身も麻薬を嫌い、恋人が麻薬に溺れると「薬は人間じゃなくなる」と言って怒鳴るんですよね。ここら辺は正義と悪の境にいることがよくわかります。

そういう人間は組織にとってうってつけなんです。

 

諸星も自信がついてくると、セックスに暴力にと言動も大胆になっていきます。だけど拳銃で脅されたりすると増えるあたりは、まだまだ肝は座ってないんですよね(苦笑)

しかし時代もどんどん変化していき、うまくいっていたこともそうでなくなりました。

 

兄弟分の黒岩は麻薬を持ち逃げし、諸星は夕張署へ左遷。太郎も妻と離婚し、獄中で自殺。

みんな悲劇的な結末を迎えてるんですよね。

「日本」を護るはずの警察が、日本一悪い奴らになっていく。

正義こそ腐敗が速いのかもしれません。

 

 

「ベテラン」

ファン・ジョンミン ユ・アイン オ・ダルス主演 リュ・スンワン監督

 

【あらすじ】

ソ・ドチョル刑事は広域警察のベテラン刑事。待遇の改善を訴えていた運転手が、財閥の御曹司との交渉の末、自殺未遂となったことから、御曹司のテオの周辺を調査することに。

 

【感想】

韓国人の鬱憤や不満がここにつまっています。

とにかく財閥社会である韓国は、資本主義の悪しき部分の見本かもしれません。

 

このテオっていう男がまた憎らしいくらい、嫌味な御曹司なんですよ。絵にかいたような、まあ映画ですけど、クソおぼっちゃん。

甘やかされて育つとこうなるんだな、と。

 

そしてもう一つの社会問題の背景として、労働者の賃金の問題ですね。これは日本も変わりません。

富の独占、労働者に対する悪待遇というのは資本主義社会に蔓延る膿です。

運転手の男性は当初自殺だと思われていましたが、それが殺人(死んだと思っていた)の隠蔽だと判明した時は不快感が増しましたね。

 

一方ドチョル刑事たちは腐敗を正す、正義の味方として描かれていました。権力に屈せず、悪を暴く。これが本当に望む警察の姿ですよね。

個人的にはあの女刑事が良かったですね。あの飛び蹴り。

 

最後はSNSや防犯カメラという手段を使って、御曹司の悪行を世間の目に晒して終わりました。

シリアス過ぎず、コミカルな部分もあって非常に見やすいところが、万人に受けた理由かもしれません。

 

「ペインレス」

アレックス・ブレンデミュール トーマス・レマルキス主演 フアン・カルロス・メディナ監督

 

【あらすじ】

1931年、スペインのある村で痛覚を持たない子どもたちの存在が明らかとなり、彼らは施設で隔離されるようになっていた。看護師の依頼でやってきたドイツ人医師は彼らに注目し、様々な実験を施す。しかしスペイン内戦、第二次世界大戦を経て施設を維持できなくなり、子どもたちを安楽死させることに。しかしひとり生き残ったベニグノは、激しい憎悪から怪物となり、ナチツ・ドイツの拷問士となる。

2000年医師のダビッドは事故に遭い、そこでリンパ腫がみつかる。両親に骨髄移植を頼むが、なぜか断られてしまう。それは両親が本当の両親ではなかったからだった。

 

【感想】

もうちょっと頑張れば、結構な傑作映画になった気がします。

痛覚のない子どもたちという設定は独特でよかったんですけど、現在の息子が弱い。

例えば無痛の遺伝子のひとつでもあれば。

まあお母さんに似たのかもしれないけども。

 

ベニグノは痛覚がないですけど、人を愛する気持ちは持っているんです。

だからこそ愛情と憎悪が表裏一体のように存在している。

痛覚を持たない、って羨ましいと思うことありますよね。

だって何されても痛くないんですから。あんな病気に苦しまなくても済むし、熱さだって感じない。刺されてもいたくない。

人間って痛い思いをするのが嫌だからこそ、いろんなリスクを考えたりするわけです。

だけど痛みがなかったら?

相手の痛みなんてわかりませんから、人並み以上のことができてしまいます。

憎悪に燃えたベニグノですが、あの後どうやってひとりで生きてたんでしょう?

何食って生きてたんだろう?

 

あとダビッドよ、自分の息子をひとりにしてどうするよ。

ダビッドこそいてあげないと。

 

そして育ての両親もなんだか不憫ですね。

元ナチスで非人道的な行いをしていたとはいえ。

でもなんでダビッドを愛せたのかは少し疑問です。

あんなにも愛情を抱ける理由があまりなかったのが残念でした。

 

author:トモヤムクン, category:-, 17:18
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