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小さな映画館 第99幕

「AMY」

「ハドソン川の奇跡」

「マンデラ 自由への長い道」

「ボーダーライン」

「ブリッジ・オブ・スパイ」

 

「AMY」

エイミー・ワインハウス 

 

【あらすじ】

27歳でこの世を去ったシンガー・エイミー・ワインハウス。その若き才能は世間からも認められいくが、思わぬ成功とドラッグ、そして父親に対する想いが交差してしまった彼女の痛々しい姿を追ったドキュメンタリー。

 

【感想】

27歳のジンクスってミュージシャンにはあるんです。ただ、それは死を美化したもに過ぎず、本人たちにしたらどうでもいいことでしょう。

エイミー・ワインハウスはリアルタイムで訃報を知った歌手です。何よりも「Back To Black」を買って、家で爆音で聴き、「こんな凄い歌手がいたのか!」と驚いた記憶があります。だからこそ彼女の夭折には驚きました。

この映画はエイミーが駆け出し以前の映像から始まっていきます。ただただ音楽が好きで、歌手になりたい、というよりも歌を歌いたいという少女エイミーの姿がありました。レコード会社も彼女の才能を認め、世間を賑わしていきますが、エイミーにとってただただ歌いたいという純粋な心に、ビジネスという側面がついてきます。映像の中でもエイミーは語ってましたが、自分でやりたいようにやる、というのが本来の彼女の姿勢です。しかしそれをメディアであったり、マネージメントは許しません。彼らにとってそれはビジネスだからです。

エイミーは素直な女性で、飾らない言葉を使ってきました。しかし却ってメディアはそれを過剰に煽ります。

この映画を観ていて何よりも虚しさを憶えたのはやはり、ミュージックというビジネスとメディアというビジネスの関係ですね。いかにビジネスというのは人格を崩壊させていくか、ミュージシャンが図らずもドラッグやアルコール、そしてセックスに溺れる理由が垣間見えます。

そして何と言っても、この映画のキーワードは「父」でしょう。幼い頃に離婚した「父」の不在によってエイミーは非行に走っていきます。全編で語られていましたが、父親がしろと言うならする、という本当に幼い父親想いの心をずっと持っていたんです。しかし非情にも実の父親は休養が必要な娘にツアーの続行を決定させようとします。

あとひとり、ブレイクの存在です。彼もまた過去の経験からリストカットをしたり、とにかく精神的に弱い人間でした。そんな彼といて、ある意味で共犯的なシンパシーに惹き付けられ、エイミーはドラッグに溺れていきます。

唯一彼女がプロになって、成功して良かったな、と思った瞬間は授賞式でトニー・ベネットに出会えた瞬間の表情ですね。あれは本当にこちらも感動しました。しかしその後の「ドラッグなしじゃ退屈」という言葉には確かに悲しいものがありました。

 

ピュアで希有な天才シンガー、エイミー・ワインハウス。今生きていたとしたら、どんな曲を作っていたのか。

この映画を観てから彼女の作品を聴いてみてください。オリジナルアルバムは2枚しか出ていませんが、どちらも彼女の魅力を堪能できます。

 

「ハドソン川の奇跡」

トム・ハンクス主演 クリント・イーストウッド監督作品

 

【あらすじ】

2009年、鳥の群れと衝突したことにより、両翼のエンジンが壊れた飛行機をハドソン川に着水させたサリー機長。国民に英雄と讃えられながらも、NTSB(国家運輸安全委員会)により調査が行われ、左エンジンが動いていたという報告が入る。これによりサリーは果たして自分の決断が正しかったのか苦悩する。

 

【感想】

これね、宣伝の仕方が悪い。日本での宣伝は「英雄だった機長が疑惑の人に!」みたいな感じで、ヒューマンというよりミステリーを強調したような色だった。でも実際鑑賞してみれば、ミステリーとかの要素はなく、サリー機長の苦悩です。

今回の映画で特徴的だったのはいくつか乗客の様子を描いていることです。それによって飛行機というのは乗客の人生を運んでいる、ということが意味されます。だからこそサリー機長とジェフ副操縦士には人命という大きな重みと責任があると強調されているのです。

そしてNTSBは調査をコンピューターで行いました。しかしこの映画の主題でもあるように、飛行機を動かすのは人間です。人的要因。確かにコンピューターがはじき出す計算の中にはベストなものがいくつも出てくるのかもしれません。しかし使命を持った、血の通った人間だからこそ、サリー機長の判断は正しく、その結果が155名の生還です。彼にも家族があります。愛する家族が。だから人間というのは機械に負けない部分もあるんです。

何より90分程度でまとめたのは良かったですね。無駄に冗長になってしまったら、映画の主題もぼやけてきます。

 

「マンデラ 自由への長い道」

イドリス・エルバ ナオミ・ハリス主演 ジャスティン・チャドウィック監督作品

 

【あらすじ】

テンブ人の王族の子として生まれたマンデラ。ヨハネスブルグで黒人として初の弁護士となり、人権を訴える。しかし活動に熱が入るあまり家族をおざなりにしてしまったマンデラは妻と別れることに。ある日マンデラは自分に共感してくれる最愛の女性ウィニーと出会い、家庭を築いていく。しかしマンデラはアフリカ民族会議(NAC)の一員としてテロ活動を行ったことに政府は危機感を募らせ、彼を捕まえ、死刑にしようとする。そうしてマンデラたちの闘いは始まった。

 

【感想】

駆け足ではありましたが、マンデラの人生を描こうと思ったら、何時間あっても足りないですからね。だからこそ重要なことだけをピックアップされた良い映画です。アフリカの歴史やアパレルヘイトに対するメッセージというよりも、この映画はあくまでネルソン・マンデラと妻ウィニーとの関係をメインに、マンデラの苦悩にスポットライトが当てられています。

さてさてアパルトヘイト、という言葉は現代でなかなか聞く機会がないのかもしれませんが、これは歴史ではなく、ちょっと前の話なんです。アフリカではアパルトヘイトができてから白人とそれ以外にわけられてしまいました。様々な制約が設けられ、黒人は制限された範囲で、あまり自由のない生活を強いられました。そんな時、黒人の人権を訴えたのがネルソン・マンデラです。もちろん他にも熱心な活動家はいましたが、彼らは治安を乱す者として捕まってしまいます。

フレデリック・ウィレム・デクラーク大統領はプロテスタントのカルヴァン派の敬虔な信者として、マンデラの釈放を命じました。

マンデラは解放されますが、アパルトヘイトが崩壊の兆しを見せると、今度は混乱が起きました。黒人を恐れる白人、白人と組むことに抗う黒人。そしてそれはマンデラとウィニーの決別でもありました。ウィニーは屈辱的な拷問から、白人たちに対する恐れをなくし、闘うことを選びました。しかしマンデラはあくまで話し合いによる和平を提案します。彼らがなぜここまで気持ちが離れてしまったのか。それは「孤独」です。孤独が人を変えました。

彼らは離別しましたが、問題はそれだけではありません。マンデラ率いるNACに反発する武力勢力が黒人の中から出て来て、今度は黒人同士が殺し合う惨劇となってしまいます。「平和よりも武器をくれ」。長年虐げられてきた人々の感情というのは、当然常人では考えられない憎悪に取り憑かれているものです。

アフリカは人類の歴史を語る上でもっとも長い歴史を持ちます。人類の始まりはアフリカと言われているくらいです。文明も発達していきましたが、いつしか西欧諸国により奴隷として連れられ、つい最近まで黒人の地位は人間ですらなかったのです。人種間、民族間における課題はこれからです。

 

「ボーダーライン」

エミリー・ブラント ベニチオ・デル・トロ主演 ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作品

 

【あらすじ】

アリゾナ州で誘拐事件の奇襲攻撃を行ったFBI。捜査官のケイトは犯人のアジトで無数の死体を発見する。裏庭に仕掛けられた爆弾により捜査官2名が死んでしまう。ケイトは上司の推薦で麻薬カルテルの親玉、ディアスの捜査に参加する。エル・パソに移動したケイトはそこでアレハンドロという謎のコロンビア人と出会う。

 

【感想】

ビックリした。エミリー・ブラントが主演だから、ケイトが主人公だと思ったら、アレハンドロが主人公だった。というか後半ケイトの役割があまりない。まあ視聴者の視点ではあるんですけどね。

本当に強いのは失うものがない者です。アレハンドロは妻と娘を無残な殺され方をされ、復讐の鬼となりました。そうなればどんな相手でも容赦なく殺していきます。元々コロンビアの検事という、謂わば法の下の正義を司る役職だった人間が、非情な暗殺者へと変貌してしまうのですから、人間というのは恐ろしく、それでいて悲しいものです。ケイトは正義を信じ、正義を執行しようとしましたが、場合によっては正義だけでは語れないこともあります。そうした悪という側面の、二元論では語れない部分を感じました。

さてこの映画の良かった点は派手なアクションに走らなかったことです。国境を越えた、麻薬がらみの犯罪ということで、全体的に薄汚れ、乾いた映像で良かったです。

個人的にはベニチオ・デル・トロがいたからこそ、面白味が増した映画でもあります。

 

「ブリッジ・オブ・スパイ」

トム・ハンクス マーク・ライランス主演 スティーヴン・スピルバーグ監督作品

 

【あらすじ】

冷戦中の1957年、ソ連の諜報員アベルはFBIによって捕まった。アメリカは国の司法の公平性をアピールするために、アベルに保険担当弁護士のドノヴァンに弁護をさせることに。しかしドノヴァンは例え国のためであっても法に従うとして、アベルに人道的な処置を求めた。

そんな時ソ連を偵察していたU-2偵察機が墜落してしまう。パイロットのパワーズはアメリカの機密情報を教えるよう拷問されてしまう。

 

【感想】

おもしろかったです。それは事実に基づいているということを加味しても。

何と言うかスピルバーグっぽいなー、って感想です。「人道的」、冷戦下、敵であろうとなかろうと、人と人の交流に国境はないというメッセージは確実にあります。それと司法のあり方。ここら辺は強調され過ぎてかえって、過剰かな、と思ったりもしています。

ただこの映画は冷戦を描きながらも、戦闘シーンは比較的出て来ません。寧ろ戦闘の悲惨さは背後にあるからこそ、独特の緊張感が生み出され良い効果になっていると思います。

確かに国は巨大かもしれませんが、個人と個人ではまた別の話です。とにかくこの映画における登場人物、特にアベルは諜報員といえども感情移入できるほどうまく描かれています。彼にも祖国があって、家族がいる。本当はいたって普通の父親なのです。絵を書くことが好きで、最後にドノヴァンに絵を渡していましたが、あれはアベルが作戦がうまくいこうがいかまいが、彼に感謝していたという証です。

昨今またきな臭い世界情勢になりつつありますが、何とか人種や国境を越えた繋がりというものを再確認するべき時ではないでしょうか。

author:トモヤムクン, category:-, 15:21
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