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小さな映画館 第108幕

「華麗なるギャツビー」

「ダンサー・イン・ザ・ダーク」

「ノア 約束の舟」

「女優霊」

「失踪」

 

「華麗なるギャツビー」

ロバート・レッドフォード ミア・ファロー主演 ジャック・クレイトン監督

 

【あらすじ】

ニューヨークの郊外、ロングアイランドのウェストエッグにある豪邸で毎夜絢爛豪華なパーティが繰り広げられていた。隣に住むニックは豪邸の主ギャツビーと知り合いになり、親類のデイジーと引き合わせることに。ギャツビーとデイジーには愛し合った過去があった。

 

【感想】

原作が大好きで、原語でも読んだ「華麗なるギャツビー」。ただ原作への思いが強いためか、この映画は十分に楽しめない部分が多々ありました。

ロバート・レッドフォード演じるギャツビーの美男子ぶりはいいのですが、個人的にギャツビーはロマンと悲哀を包括したような人物です。何よりもデイジーを愛し、空しいパーティーを開きながら、彼女を待つ姿。原作では月夜に立つ彼の姿がとても印象的でした。しかしそうしたもの悲しさがこの映画にはありません。BGMでなんとか盛り上げようとしていますが、映画のギャツビーはどちらかといえばデイジーに執着し過ぎる感じがします。

 

この物語の対比としては上流階級の人々と、対極をなす車の修理屋などの下層階級の人々。そして物語のファクターとなるニックはどちからかといえば中流階級という立場で、つまり彼らの中間でものを観る、ある意味で平凡、ある意味で公平な登場人物なんです。だからこそ双方の価値観の差異がはっきりと描かれています。

上流階級の人々は無目的に乱痴気騒ぎをし、エゴの塊のように勝手なふるまいをする。一方の下層階級の人々はそうした上流階級の人たちから仕事をもらい、尚且つ憧れるんです。マートルはその典型ですね。なんとかトムの愛人になりますが、それでも上流階級の場では浮いていました。

ニックはというと、そうした人々の間にいるからこそ、語り部として、そしてギャツビーの親友としての立場が確保できたのです。

 

デイジーは裕福な家庭の生まれで、上流階級の人間です。それでも若い時貧乏だったギャツビーに恋をします。しかし彼が貧乏であるということ、つまり豊かな暮らしをしていたデイジーにとって、愛よりも豊かさのほうが重要だったのです。

対照的にギャツビーは愛のために豊かさを手に入れようとします。だけど最終的にはどちらも失うわけです。

この物語において、精神的な豊かさと物理的な豊かさはまったく比例しないんです。どちらかをとれば、どちらかを失います。

これはアメリカンドリームの虚無感です。

 

その中でニックとジョーダンは均衡した関係を保ちます。どちらも冷静で、エゴイズムとはまた違う人間だからです。

ギャツビーは上流階級の、物理的な欲深さの人間ではありませんでした。だからこそニックも共感できたんです。

 

愛は金で買えるか、なんて問答をたまに聞きます。実際どうでしょうか?貧困のうちに愛を貫けるでしょうか?逆にありあまる金持ちになって、本当の愛が貫けるでしょうか?

富というのは人々を狂わせる一種の夢です。

 

 

「ダンサー・イン・ザ・ダーク」

ビョーク主演 ラース・フォン・トリアー監督

 

【あらすじ】

1960年代のアメリカ。チェコからの移民のセルマは息子のジーンと暮らしていた。貧乏だったがセルマは周囲に支えられながら幸せに暮らしていた。しかしセルマは先天性の病気で視力が失われつつあった。ジーンもまたセルマの遺伝で失明をする運命にあり、セルマは必死に手術費を貯めていた。しかしある日、友人で警官のビルが自分の貯金を盗んでいたことを知り、彼ともみ合いになり、銃が誤発してしまう。

 

【感想】

やさしくて、切ない。静かな闇の中に響く叫び声。でもそこには必ず愛という光があります。

 

歌手としても名声を得ているビョークですが、演技もまた光るものがあります。

今作は「後味の悪い映画」のNo.1とよく言われるんですけど、僕自身、この作品を観た後は後味の悪さよりも、切なくてあたたかいものが残りました。

 

セルマは移民としてアメリカにやってくるわけですが、アメリカはそうした移民であっても受け入れ、仕事を与えてくれる国であり、彼女自身、「アメリカはいいわね」というシーンがあります。しかしそんな彼女を待っていたのも、アメリカの洗礼でした。

友人であり恩人のビルは金の工面に困っていました。セルマの貯金を目にしたビルは魔がさしてしまいます。そうした揉み合いの末にあの悲劇が起こるわけですが、ビルにもまた悲しい側面がありますよね。妻を安心させてあげたい。それには金がいる。彼を決して擁護するわけではありませんが、運命の巡り合わせ、人間の理性の未熟さというのは誰にでもあるんです。

だからこそビルは「殺せ」と言ったんです。罪を犯した自分を。

セルマはどうしようもなく、ビルにとどめを刺してしまいます。この時点で実は冤罪とも言い切れないんです。もちろん最初の誤発射は彼女の罪ではありません。

 

今回の映画で、仮に憎らしい登場人物を挙げるのなら、それは検察でしょう。

なぜ60年代のアメリカなのか?50年代のアメリカはマッカーシズムと呼ばれる、「赤狩り」がありました。赤とは、当時敵対していたソ連などの共産主義者のことです。検察は移民であり、「共産主義を崇める」と主張して、陪審員に印象をつけようとしました。それはかなりの心象の悪さになったでしょう。この時点で彼女はアメリカという国に裏切られるんです。

 

そしてセルマは息子が失明する事実を知ってほしくないために、黙秘をします。

ここが実は賛否がわかれるところじゃないでしょうか。

キャシーが言っていました。「母親として生きていることのほうが大事だ」と。

しかしセルマは息子が孫の顔が見られるよう、失望せず、手術を受けられるほうが幸せだ、と。

どっちが大事か。そんなことはわかりません。

最後にセルマはジェシーが手術を受け、成功した喜びをかみしめて死んでいきます。たしかにセルマは納得して死んでいったのかもしれません。しかしジーンの立場ならどうでしょう?たったひとりの母親が自分のために死んでしまったわけです。たしかに息子にとっての光にはなったかもしれませんが、同時に闇を作ってしまうんじゃないでしょうか?ひとつ救いを見出すのなら、それはキャシーという心温かい女性にジーンを託すことができたことでしょう。

 

コミカルなミュージカルシーンはなんとも切なくなります。あれはセルマの願望であり、幸せなイメージなんです。それと対比する独房の静けさはあまりにも残酷。だけど同時に儚いものがありました。

 

人間はひとりの命であっても、護りたいもののためにはその命さえ投げ出す瞬間があります。

恋人でも夫婦でも親子でも、愛は光になるんです。

 

これは最後の歌じゃない…

 

「ノア 約束の舟」

ラッセル・クロウ ジェニファー・コネリー エマ・ワトソン主演 ダーレン・アロノフスキー監督

 

【あらすじ】

ノアは妻と3人の男子といっしょに暮していた。ある日ノアは洪水で人々が死ぬ夢を見て、祖父メトシェラを訪ねて旅に出る。途中、賊に襲われケガをしていた少女イラを助ける。泥の巨人オグはノアを信じ、協力する。しかしノアたちの前にはトバル・カインに率いられた軍勢が現れる。

 

【感想】

正直、日本人の僕たちからすればノアの信条というのは理解しがたいものがあります。むしろトバル・カインたちのほうに共感するはずです。

旧約聖書の「ノアの方舟」は多くの人が知ってるし、西洋人なら当然の話なのかもしれません。

まあざっくり言えば神に似せて創った人間の、あまりに欲深いことに嘆いた神様が人間を一掃してしまうというお話。ただノアというのは「義しい人」なので、彼と彼の家族、そして動物を乗せる方舟を造らせて、洪水を免れるよう指示するんです。

そこまではいいんですけど、この映画では大胆な解釈をします。それはノアは正しいのか?ということです。

聖書の中では当然のようにノアは正しい人として登場します。しかしこの映画では神に従う彼と夫や父親としての彼の煩悶がテーマになっています。

たしかに僕も監督と同じように思ったことがあります。果たして滅ぼされた人間全員「悪人だったのか」と。そうなんです。必ずしも悪人だけじゃなかったはずなんです。それなのに神はノアとその家族しか救いませんでした。これって言ってしまえば、神に対する疑問符を突き付けてるんですよね。だから熱心な信仰のある国では上映中止になっています。

 

もっといえば忠誠心・信仰心vs虚無主義者(ニヒリスト)もしくはヒューマニズムの闘いなんです。

日本人からすれば、明らかに後者の立場で観てしまいます。

神に従うよりも、例え誤りだとしても、家族愛のほうを選ぶのが僕たち日本人の価値観じゃないでしょうか。この映画も結局はそういうところに落ち着いてるんです。

ただ納得いかないのは、これは結局神がノアの選択を試したんだよ、というオチ。もちろん、その後もノアの子孫たちの系譜で続いていくわけですから、どうしようもないけど、これはどうにかならなかったのか。個人的には沈黙を貫く神に対する疑問を呈するような終わり方でもよかったと思う。

まあ、「家族」だろうと「友人」だろうと「愛」は根本的なテーマだったね。

 

「女優霊」

柳ユーレイ 白鳥靖代主演 中田秀夫監督作品

 

【あらすじ】

映画監督の村井はデビュー作を製作中、撮影していたフィルムに別の映像が紛れ込んでいることに気づく。村井はその映像に何故か見覚えがあった。撮影は順調にいっていたと思った矢先、奇怪な出来事が次々と起こる。

 

【感想】

久しぶりに女の子のように叫んだね(真顔)

 

ジャパニーズ・ホラーの代表的な監督といえば中田秀夫と脚本家の高橋洋。このふたりはのちに「リング」を世に送り出し、一躍日本のホラー映画の代表格になっていきます。

この作品はその先駆けともいえるもので、76分程度と短いものの、十分にホラーな要素が盛り込まれています。ただやはり「リング」などに比べると、その恐怖度は少し劣ります。終盤の女性の幽霊が堂々と出てきた瞬間に、若干ですが興ざめした自分がいました。それでも恐怖を覚えたのはやはりあの高笑いでしょう。それは優越なのか、憤怒なのか、虚無なのかわからないような高笑いは耳に残ります。

個人的にはもうちょっと長尺でもよかった気がします。あまりにも冗長すぎるのも難ですけど、短すぎるのも考え物です。

それにしても女優の白鳥さんは綺麗な人ですね。監督じゃなくても、彼女に惚れ惚れする気持ちがわかります。

 

「失踪」

ジェフ・ブリッジス キーファー・サザーランド主演 ジョルジュ・シュルイツァー監督

 

【あらすじ】

恋人であるダイアンがサービスエリアで失踪して以降、ジェフは彼女を探し続けた。新しい恋人リタも彼に呆れるが、ある日彼のもとに犯人を名乗る男が近づく。

 

【感想】

 

これは幾度もテロ事件を解決してきた男の、髪がふさふさで美男子だったころの話だ。クソォッ!

 

さてさて、ジェフ・ブリッジス、キーファー・サザーランド、名優が揃ったサスペンスですが、正直サスペンスとしても、ミステリーとしても、ドラマとしても微妙な出来なのが残念。

最初のわくわく感はあるんです。ふたつのストーリーが交差する感じが。バーニーのサイコパス的な面を押し出した序盤はまだよかったんですけど、そこからジェフの未練たらたらというより、彼女よりも失踪の謎が解きたい!なぜなら、小説家だから!みたいな設定が少々雑。

そしてダイアンの失踪の謎!これが一番しょぼ過ぎる。すごい期待をもたせるんですよ、バーニーは。生死さえ曖昧にしてるんですよ。なのに結局薬で眠らせて、棺の中にいれて、埋めるて!!安直すぎるわ!

あといくら15分で目覚める睡眠薬とはいえ、飲まされたら若干のふらつきや弱りはあるでしょ。あと、結局バーニーの娘はどうしたー!!

あと恋愛部分もイマイチ!リタは魅力的な女性だけど、ジェフに惚れる理由がイマイチないのが残念。

と結構文句を言ってしまいましたが、役者よりも脚本家と監督に難のある映画です。

author:トモヤムクン, category:-, 17:19
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